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映画『オンリーラヴァーズ・レフト・アライヴ』ネタバレ感想と結末までのあらすじ【ジム・ジャームッシュ作品】

  • Writer :
  • もりのちこ

生き残ったのは恋人達だけ。
朽ちて行くこの世で唯一美しいものとは。

2020年6月、ようやく日本公開となったゾンビ映画『デッド・ドント・ダイ』のジム・ジャームッシュ監督の、2013年の作品『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』を紹介します。

『デッド・ドント・ダイ』では、豪華なポップゾンビが話題となっていますが、『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』では、憂いを帯びた気高い吸血鬼たちが主人公です。

何世紀も生きて来た吸血鬼のアダムは、傲慢な人間たちの繰り返す愚行に嘆き、そんな人間たちを「ゾンビ」と呼んでいます。人間もモンスターもさほど変わりはないのかもしれません。

『デッド・ドント・ダイ』では、サムライマスターとしてゾンビをばったばた切っていくティルダ・スウィントン。今作での、人間を超越した神々しいヴァンパイア姿も必見です。

『デッド・ドント・ダイ』と『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』、両方見比べてみると面白い発見が増えるのではないでしょうか。

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映画『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』の作品情報


【日本公開】
2013年(アメリカ・イギリス・ドイツ合作)

【監督】
ジム・ジャームッシュ

【キャスト】
トム・ヒドルストン、ティルダ・スウィントン、ミア・ワシコウスカ、ジョン・ハート、アントン・イェルチン、ジェフリー・ライト

【作品概要】
孤独な宿命を背負った吸血鬼たちの人生を描いた映画『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』。

吸血鬼のカップル・アダムとイヴには、トム・ヒドルストンとティルダ・スウィントンが登場。カリスマ溢れる気高き吸血鬼を美しく妖艶に演じます。

監督は、映画『ブロークン・フラワーズ』『パターソン』『デッド・ドント・ダイ』と、米インディペンデント界を代表する鬼才ジム・ジャームッシュ監督。

音楽はもちろん、ジム・ジャームッシュ監督自身のバンド「Squrl」が担当しています。オルタナティブロックが、アンニュイな吸血鬼の世界をより盛り上げます。

映画『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』のあらすじとネタバレ


まわるレコードにあわせてグルグルまわる視界の中、現れた男と女。男は、アダム。女は、イヴ。何世紀も生きてきた吸血鬼です。

アダムとイヴは、今は離れて暮らしていても唯一無二の存在であり、心から愛し合っていました。

デトロイトのアダムの家に、人間の男・イアンがやってきます。イアンは頼まれていたものだとヴィンテージのギターを渡します。

アダムは、17世紀前半のイングランドの悲劇の作曲家の名をとり「ウィリアム・ローズ」と名付けました。その他にも次々運び込まれるヴィンテージギターの数々。アダムは愛おしそうに触れていきます。

彼は、ライブもメディアの顔出しもしない覆面アーティストとして音楽活動をしていました。

「グレッチのダブルカッタウェイ、エディ・コクランが弾くのを見たよ」。「えっ?50年代に?」。「YouTubeでだよ・・・・」。現代を生きる吸血鬼は、スマホを持ち、インターネットも見ます。

その頃イヴは、モロッコ・タンジールにある自宅から路地を歩き、行きつけのカフェ「千夜一夜」を目指していました。

カフェで迎えてくれたのは、老人吸血鬼マーロウ。近頃、体調を崩しているマーロウは、今日も顔色が悪く辛そうです。

いつものように、マーロウから鮮血を受け取り、家路につくイヴ。グラスに注いだ血を大事そうに飲み干します。

同じくマーロウ、アダムも食事の時間です。アダムはドクターに変装し病院へ。わいろを払い輸血用の血を分けてもらっていました。

現代社会は人間の死体を処理するのもやっかいな時代です。野蛮な人間たちの首を噛むのも抵抗があります。気高くインテリな吸血鬼アダム、イヴ、マーロウは、いまや人間を襲うことはしません。

鮮血は、それぞれの体内に吸収され、体を熱く興奮させます。恍惚の表情を浮かべる3人。不老不死にして孤独な生き物ヴァンパイア。

イヴはアダムに電話をかけました。スマホに写るアダムは気を落としているようです。「ゾンビたちのせいだよ」。

自滅的でロマンチストなアダムは、芸術を蔑ろにしてきた愚かな人間たちをゾンビと呼び、忌み嫌っていました。最近は、自分が死んでしまいたいほど滅入っています。

寂しそうなアダムのもとに、イヴは会いに行くことにします。タンジールからデトロイトへ。文学好きなイヴは旅行鞄にびっしり本を詰めました。太陽をさけ夜行便で向かいます。

久しぶりの再会に愛しさを募らせるアダムとイヴ。アダムはイヴに大事そうに触れます。2人で過ごす時間は、心が満たされ穏やかな時が永遠に続くかのように見えました。

その夜2人は夜のドライブに出かけていました。デトロイトの町をめぐるドライブは、イヴも気に入ったようです。

ドライブを終え自宅にもどると、灯りがつき、誰もいないはずの家の中から音楽が聞こえてきます。

そこには、イヴの妹エヴァの姿がありました。「久ぶりに会えてうれしいわ」。アダムは露骨に迷惑そうな態度です。恐れていたトラブルメーカーの君臨です。

以下、『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』ネタバレ・結末の記載がございます。『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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エヴァは、LAに住み夜遊びを楽しむ、言わばイケイケなヴァンパイアです。天真爛漫でわがまま、常に空腹で血に飢えていました。

遊びにいきたいと言い出すエヴァに、アダムとイヴは仕方なく、人間のイアンを誘い4人で町のロックバーへと連れていきます。

サングラスと皮手袋、ワイルドな髪型の吸血鬼たち。美しい風貌は、人間界では目立つ存在です。

バーではアダムの曲が演奏されていました。気分をよくするアダム。エヴァはイアンを誘惑していました。

事件は次の日に起きました。酔っ払い帰宅したエヴァは、イアンを連れ込み血を吸い殺してしまったのです。

激怒したアダムは、エヴァを追い出します。「面倒を起こしてくれたな、死体処理も大変なのに」。

昨夜のバーでイアンと一緒なのを目撃されているアダムとイヴは、死体を処理した後、イヴの家タンジールへと向かいます。

一連の後処理と長旅に疲れた2人は、ふらふらの状態で家にたどり着きます。鮮血が欲しい。イヴはマーロウに連絡を入れます。

しかし、マーロウからの返事はありませんでした。意識が朦朧とする中、カフェ「千夜一夜」を尋ねると、マーロウは床にふせ最後の時を迎えようとしていました。

作家として数多くの物語を残してきたマーロウ。彼の正体は、16世紀の有名な詩人であり謎多き劇作家クリストファー・マーロウでした。可愛がっていた弟子が懸命に寄り添います。

マーロウは駆け付けたイヴとアダムへ、最後の鮮血を分け与えます。「この町の血も汚染されている」。そして静かに息を引き取りました。

タンジールの路地をさまよい歩くアダムとイヴ。貰った鮮血も飲み尽くしました。これからどうしていけばいいのか。気力もありません。

イヴは「あなたに贈り物を買うわ」と、アダムを残し立ち去ります。ひとり残されたアダムの耳に、近くのバーから歌声が聞こえてきます。

世界にはまだ新しく生まれる本物の音があった。惹きつけられるように聞き入るアダムの元に、イヴが戻ってきます。イヴからの贈り物はモロッコの楽器ウードでした。

アダムにとって音楽への探究心は、何世紀生きて来ても止まることはありません。素敵な贈り物を抱え、愛するイヴと静かな時間を過ごします。夜明けの時間がせまっていました。

そんなアダムとイヴの前に現れた愛し合う男女のカップル。抱き合いキスを交わしています。愛に満ちた幸せそうな姿にイヴは思わずつぶやきます。

「いけないわ、アダム。15世紀じゃないのよ。でも、美味しそう・・・・」。ゆっくりとカップルに向かっていくアダムとイヴ。

目は赤く光り、獲物を捕らえようと開けられてた口からは牙が覗いていました。

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映画『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』の感想と評価


詩的で甘美な吸血鬼映画『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』。アダムとイヴの美しい吸血鬼カップルが、気だるくも情熱的にこの世を楽しむ姿が実にカッコイイ映画です。

吸血鬼の住処タンジールとデトロイトの夜の町並みがとても物語に合っていて、リアルにその場所にアダムとイヴがいるような、いてくれたら素敵だなと思わせてくれます。

アダムとイヴを演じた、トム・ヒドルストンとティルダ・スウィントンの人間離れした美しさが、ノスタルジックな風景に溶け込み、よりいっそう幻想的な世界へと惹き込まれていくようです。

一般的に吸血鬼と言えば、人間の血を吸う、鏡に映らない、十字架やにんにくが苦手、太陽の光で灰になるといった特徴を思い浮かべますが、『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』では、ジム・ジャームッシュ監督より「吸血鬼は外出時、皮の手袋を着用する」というオリジナルの特徴が付け足されています。

狼を思わせるワイルドなロングヘアに、皮の手袋、サングラス、色白でスタイル抜群、美男美女の吸血鬼。圧倒的ビジュアルはため息ものです。

そして、この映画で欠かせないものとして音楽があります。蓄音機から流れてくるワンダ・ジャクソン「Funnel of Love」。レコードの歪で懐かしい響きは、心を落ち着かせてくれます。

スクリーミン・ジェイ・ホーキンス「I Put A Spell On You」、エルヴィス・プレスリーの「Blue Moon」。

中でも印象深いシーンは、デニス・ラサールの「Trapped By A Thing Called Love」に合わせてアダムとイヴが、監督作品『ダウン・バイ・ロー』の主人公を真似て踊るというロマンチックなシーンがとても素敵です。

また、物語の終盤に登場するヤスミン・ハムダンの歌声を忘れてはなりません。この世に疲れ果てたアダムが、小さいライブハウスで歌う彼女の歌を聞き「彼女は本物だ、きっと成功する」と嬉しそうに話します。

音楽の言及の他にも、今作には映画、音楽、文学と過去の偉大な芸術文化がふんだんに盛り込まれています。古い楽器や、本、ポスター、家具、骨董品の小道具から、2人の会話の中にも詩や偉人の名前がちりばめられています。

ム・ジャームッシュ監督自身の趣味や、敬愛する過去の優れた作品へのオマージュが止まりません。

吸血鬼で芸術オタクのアダムは、これら歴史上の高貴な創造の価値を分からず、酷い仕打ちをしてきた愚鈍な人間たちのことを「ゾンビ」と呼びます。

ジム・ジャームッシュ監督は、奇しくも今作から7年後、アンサー映画のようなゾンビ映画『デッド・ドント・ダイ』を作り出します。

「コーヒー・ゾンビ」「Wi-Fiゾンビ」「シャルドネゾンビ」と、死んでもなお俗物に捕らわれた空っぽのゾンビは、まさにアダムが嘆いていた人間の姿のようでした。

何世紀生きても変わらない人間の愚行に諦めかけたアダムとイヴでしたが、最後はまだこの世に留まる意味を見つけます。

アダムは、イヴに彼女のお気に入りの話をします。「量子学的絡み合い」。それは、量子学的に絡み合った2つの粒子を離した場合、たとえ宇宙の反対側にあろうと、もう一方に影響を与えれば、もう一方にも影響が出るというものです。

愛し合う者同士は美しい。この世にたったひとつでも美しいもの「愛」がある限り、アダムとイヴは生き続けるのかもしれません。

まとめ

2020年公開映画『デッド・ドント・ダイ』のジム・ジャームッシュ監督の2013年製作映画『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』を紹介しました。

「ゾンビ映画は好きじゃない。ヴァンパイア映画の方がずっと好きだ」と宣言しているジム・ジャームッシュ監督。

ヴァンパイアは、洗練され博学、ミステリアスでセクシュアルな面、繊細な面もあり、優雅でエレガントなのだそう。反してゾンビは、愚かで空虚な抜け殻、道をさまようだけ。

『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』『デッド・ドント・ダイ』の両作品から、物欲にまみれ愚行を繰り返す人間への警告が聞こえてきます。

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