Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ホラー映画

Entry 2019/10/20
Update

映画『マーダー・ミー・モンスター』あらすじと感想レビュー。ホラーを愛するアレハンドロ・ファデルがアンデス山脈で描いたモンスターとは

  • Writer :
  • 増田健

映画『マーダー・ミー・モンスター』は2019年11月15日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷にて、【WEC2019ワールド・エクストリーム・シネマ2019】作品としてロードショー!

ヒューマントラストシネマ渋谷で開催される、【WCC ワンダーナイト・シネマカーニバル2019】

その中でも選りすぐりの、ガツンとくる映画を集めた特集が、【WEC2019ワールド・エクストリーム・シネマ2019】です。

その中の1本として登場するのが、アルゼンチンを舞台にしたモンスター映画、『マーダー・ミー・モンスター』です。

殺人事件から始まった物語は、謎が謎を呼ぶ展開が繰り広げられ、見る者を予測不能の恐怖へと突入していく…。

スポンサーリンク

映画『マーダー・ミー・モンスター』の作品情報


©Copyright 2018 CRUACHAN S.R.L / ROUGE INTERNATIONAL / UPRODUCTION / CINESTACION

【公開】
2019年11月15日(金)(アルゼンチン・フランス・チリ合作映画)

【原題】
Muere, monstruo, muere / MURDER ME, MONSTER

【監督・脚本】
アレハンドロ・ファデル

【出演】
ビクトル・ロペス、エステバン・ビリャルディ、タニア・カスチアーニ

【作品概要】
カンヌ国際映画祭の“ある視点部門”に正式出品された、異色のモンスター・パニック映画。スペイン・ポルトガルとその旧植民地の南米諸国の映画を集めた、テンビート映画祭で上映された『獣たち』を監督した、アレハンドロ・ファデルの最新作です。

残虐なシーンやモンスターの登場する映画が大好きだった監督が、様々なメッセージを込めて描いた、様々な仕掛けを持つホラー映画です。

映画『マーダー・ミー・モンスター』のあらすじ

©Copyright 2018 CRUACHAN S.R.L / ROUGE INTERNATIONAL / UPRODUCTION / CINESTACION

アンデスの山中で、首を切断された女性の遺体が発見されます。

地元警察の刑事クルス(ビクトル・ロペス)は、殺害現場付近にいた言動の怪しい男、ダビド(エステバン・ビリャルディ)を容疑者として捕えます。

遺体の切断部には謎の粘液は付着しており、また犯人がどうやって首を切断したのかは、クルスには謎でした。

夫ダビドの身を案じる妻、フランシスカ(タニア・カスチアーニ)とクルスは関係を持っていました。しかしダビドは釈放される事になります。

ところが次は、フランシスカが首を切断され殺害されます。状況から連続殺人の犯人として逮捕されるダビド。

今回も遺体からは粘液が、そして動物のものとも思えない巨大な牙が採取されます。クルスは署長に真犯人は別にいる可能性を指摘しますが、署長は耳を貸しません。

精神的に不安定な状態であると判断されたダビドは、病院に入院させられます。そこを訪ねたクルスは、診察した女医とダビドとの面談を記録した、音声データを手に入れます。

そこには、幻聴に苦しめられ、それに心を支配されると訴えるダビドの声が記録されていました。

3つの単語が、繰り返し聞こえていると語るダビド。その単語の頭文字にヒントを得たクルスは、真犯人がパターンに従って犯行を行っていると推理します。

クルスの考えも捜査方法も現実離れしたものでしたが、彼の予想通りに、またしても女性が殺害されます。

その事実を前にした署長はダビドを連れ、クルスや部下と共にアンデス山中の、荒野の中にある殺害現場へと向かいます。

そこに現れた真犯人の正体とは。クルスの目の前に、想像を越えた光景が現れますが…。

スポンサーリンク

映画『マーダー・ミー・モンスター』の感想と評価


©Copyright 2018 CRUACHAN S.R.L / ROUGE INTERNATIONAL / UPRODUCTION / CINESTACION

ホラー映画を愛するアレハンドロ・ファデル監督

幼い頃からホラー映画が好きだった、と語っているアレハンドロ・ファデル監督

ホラー映画好きの少年がそうであるように、彼は登場する怪物や、残虐シーンにまず興味を持ちましたが、徐々に恐怖映画の持つ様々な要素に気付かされます。

ホラー映画を彩る“恐怖”は、それを通じて社会や政治に潜む問題を露わにする力がある、と気付かされたと彼は答えています。そんな力のある作品を生んだ人物として、ジョン・カーペンター、デビット・クローネンバーク監督の名を挙げています

『マーダー・ミー・モンスター』に登場する被害者は女性。ホラー映画にありがちな、男性優位な視点を秘めた描写ですが、ファデル監督は意図して本作に取り入れています。

『エイリアン』のクリーチャーデザインで有名な、H・R・ギーガーの例をあげるまでもなく、映画に登場するモンスターのデザインには、時に性的な側面が強調される事があります

それを本作の脚本の構想段階から意識していたファデル監督。登場するモンスターのデザインが、“アレ”や“ソレ”を思わせるのは、意図して行われたのでしょう。

アンデスの山中を舞台に深まる謎

参考映像:『獣たち』予告編(2012年・第9回ラテンビート映画祭上映作品)

『マーダー・ミー・モンスター』はアンデス山中の寒村を舞台に、そこで暮らす人々と地方の警察官を舞台に、物語が展開されます。

広大かつ荒涼とした自然を背景に、劇的な人間のドラマを扱うのはファデル監督の前作、『獣たち』と同じ構造です。

少年院から脱走した若者たちが凶行を繰り返す、ホラーとは異なる惨劇と恐怖を描いた、ジャンル映画的な作品である『獣たち』。彼らが逃げ込み根城とする場所が山中、というところに監督の描く恐怖の根源を見る事ができます

広大かつ過酷な自然に包まれ、そこに住む人々には閉鎖的・孤立的な環境であるアンデスの山中。都会から離れたその地の住民の生活や行動は、古くからの価値感に縛られている。

『マーダー・ミー・モンスター』は、日本や他の国々の、遠隔地を舞台にしたホラー・スリラー映画と同じ構造を持っています

そして怪事件を追求する主人公は、様々な謎に気付きます。それが物語の中で露わになってくると、映画のオープニングでは大きな意味を持ち始めるます。

『ツイン・ピークス』?それとも『X-ファイル』?

©Copyright 2018 CRUACHAN S.R.L / ROUGE INTERNATIONAL / UPRODUCTION / CINESTACION

容疑者を逮捕し猟奇事件は解決したかに見えましたが、主人公は事件の現場にある証拠、そして容疑者が医師に語った証言から、他に犯人が存在する可能性に気付きます。

やがて彼の考えは常識を越え、その捜査手法も常軌を逸したものになります。タイトルとなった3つの言葉の意味が露わとなり、ストーリーは急転し謎を秘めた展開になります。

なんとも奇妙な捜査に没頭する主人公の姿は、『ツイン・ピークス』のクーパー捜査官、『X-ファイル』のモルダー捜査じみてきたと感じたのは、私だけでしょうか?

そして映画はモヤっとしたラストを迎えます。この展開には海外の評価も賛否両論の模様。『X-ファイル』の奇妙なエピソードの様な作品が、『マーダー・ミー・モンスター』だと紹介しておきましょう…。

まとめ


©Copyright 2018 CRUACHAN S.R.L / ROUGE INTERNATIONAL / UPRODUCTION / CINESTACION

アレハンドロ・ファデル監督が、アンデス山中の寒村という閉鎖的環境で、男性優位の古い価値観に縛られた社会を描きながら、深い謎を仕掛けた映画が『マーダー・ミー・モンスター』。

社会風刺的側面と同時に、モンスターの出現・正体に関する謎を映画に盛り込んだ結果、奇妙な余韻を残す映画になっています。

ひとつ紹介すると劇中に3台のバイクが登場しますが、その解釈を巡って見た者の意見は割れ、3つの言葉と同じ意味で使われたと解釈しますが、説明的な描写は一切ないので、そこは観客の解釈に委ねられるのでしょう。

この奇妙な雰囲気を産んだのは、監督自ら描いた脚本の成果だけではありません。

アンデスの山中のロケで撮影された広大な自然の描写だけでなく、高地という空気が薄く寒い環境で、その中で夜間や雨の中、時には裸に近い姿の悪条件で、俳優に演じさせた結果であるとも、監督は認めています。

映画からにじみ出る荒涼とした世界は、このような撮影環境で生まれたのです。

その世界に登場するモンスターの姿には、スーツ系モンスターのファンは、思わずニヤリとさせられるでしょう。

映画『マーダー・ミー・モンスター』は2019年11月15日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷にて、【WEC2019ワールド・エクストリーム・シネマ2019】作品としてロードショー!

関連記事

ホラー映画

映画『パージ:エクスペリメント』ネタバレあらすじと感想。【The First Purge】をアメリカ独立記念日に公開させた意図とは⁈

『パージ:エクスペリメント(原題:The First Purge)』は、「パージ」シリーズの第4作。 1年に1度、殺人を含め全ての犯罪が12時間合法となるパージ(粛清)法。 『パージ:エクスペリメント …

ホラー映画

映画『ポラロイド』あらすじネタバレと感想。アナログな恐怖の秘密はカラヴァッジョの陰影とスピルバーグファンとしての遊び心

『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』のロイ・リーがプロデューサーを務めた、ポラロイドカメラが巻き起こす怪奇ホラー! 『ポラロイド』は、ノルウェー出身のラース・クレヴバーグが製作・監督・脚本を …

ホラー映画

『ゴーストランドの惨劇』あらすじとホラー映画解説。ラストのセリフに込められた意味とは?

『ゴーストランドの惨劇』は2019年8月9日より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー。 人里離れた叔母の家に引っ越した事から、ある一家が遭遇する惨劇と、その後の物語を描いたパスカル・ロジェ監督による …

ホラー映画

【カメ止め】ネタバレ含む映画トリビア。金曜ロードショーの地上波と共にチェック!

『カメラを止めるな!』にまつわるトリビア 低予算ながら大ヒットした作品と言えばアメリカで製作され、大ヒットシリーズとなったスリラー映画『ソウ』(2004)などが有名です。 しかし、2018年に日本でも …

ホラー映画

映画『ハロウィン( 2018)』あらすじネタバレと感想。続編ブギーマンの見どころとは?

映画『ハロウィン』2019年4月12日(金)全国ロードショー! 1978年ジョン・カーペンター監督の手によって生み出されたホラーアイコン“ブギーマン=マイケル・マイヤーズ”がシリーズ誕生40周年の年に …

U-NEXT
架空映画館 by ReallyLikeFilms Online
【Cinemarche】今週のおすすめ映画情報
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
凱里(かいり)ブルース|2020年6月6日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかにて全国順次ロードショー予定!
映画『異端の鳥』2020年10月9日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開
映画『朝が来る』2020年10月23日(金)より全国公開
ドラマ『そして、ユリコは一人になった』
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学