数年ぶりに再会した母親は、母親以外の「何か」だった…
双子のエリアスとルーカスが遭遇する、豹変した母親の恐怖を描いた、ホラー映画『グッドナイト、マミー』。
数年ぶりに再会した母親は、顔中に包帯が巻かれた衝撃的な見た目となっており、これまでとは違う、冷酷な性格になっていたという本作。
幼い双子が母親へ抱く「疑念と恐怖」が、想像を絶するラストへと繋がる、本作の魅力をご紹介します。
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CONTENTS
映画『グッドナイト、マミー』の作品情報
(C)Amazon Prime Video
【公開】
2022年製作(アメリカ映画)
【原題】
Goodnight Mommy
【監督】
マット・ソベル
【原作】
ベロニカ・フランツ、セベリン・フィアラ
【脚本】
カイル・ウォーレン
【キャスト】
ナオミ・ワッツ、キャメロン・クロベッティ、ニコラス・クロベッティ、ピーター・ハーマン、クリスタル・ルーカス=ペリー、ジェレミー・ボブ
【作品概要】
2014年に公開され話題になった、オーストラリアのカルトホラーをリメイクした「Amazon Prime Video」オリジナル配信作品。
本作で豹変した母親を演じるナオミ・ワッツは『マルホランド・ドライブ』(2001)で、世界的な女優となり『ザ・リング』(2002)『21グラム』(2003)『インポッシブル』(2012)などの話題作に出演し、アカデミー主演女優賞にもノミネートされている、実力派女優です。
ナオミ・ワッツは本作で、製作総指揮も担当しています。
映画『グッドナイト、マミー』のあらすじとネタバレ
(C)Amazon Prime Video
幼い双子のエリアスとルーカスを寝かしつける為、子守唄を歌う母親。
母親は元女優で、老いてしまった自分の容姿に自身が持てず、父親がスマホで動画を撮影することすら嫌がっています。
数年後、ある理由で、母親と別々に暮らしていたエリアスとルーカスは、父親に連れられて母親の住む住居へ戻って来ます。
エリアスとルーカスを送った父親は「ママはまだ、パパと会いたくないようだ」と言い残し、車で立ち去ります。
数年ぶりに母親と再会したエリアスとルーカス。ですが、母親の顔は包帯で覆われており、顔がハッキリと分からなくなっています。
母親は「変化が欲しかった、仕切り直し」とだけ伝えます。エリアスは、母親にルーカスと描いた絵を渡し、母親は喜びます。
その夜、エリアスは久しぶりに、母親に「子守唄を歌って」とせがみますが、母親は子守唄を拒否します。
「母親は自分のことが嫌いになったのか?」と悩むエリアスを、ルーカスは励まし、子供の頃によく遊んだ納屋へ誘います。
母親から「入ってはいけない」と忠告されていた、その納屋の中には、謎の血痕が残っていました。
怯えるように納屋から出たルーカスを、母親は乱暴に掴み「約束を守れ」と異常な怒り方をします。
母親に恐怖を覚え始めたエリアスは、夜中に母親が「いつまで、あの子と一緒にいればいいですか?私はもう自身が無い」と、謎の電話をしている所を目撃します。
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映画『グッドナイト、マミー』感想と評価
(C)Amazon Prime Video
幼い双子のエリアスとルーカスが、数年ぶりに再会した母親の、豹変した恐怖に遭遇するホラー『グッドナイト、マミー』。
再会した母親の、顔中包帯だらけという見た目が衝撃的だけでなく、一切先が読めない構成が、見事な作品です。
母親が豹変した理由や、突然消えたルーカスなど、いろいろ謎が残る作品ですが、作中にヒントは隠されていますので、本作の謎を考察していきます。
母親が豹変した理由は?
(C)Amazon Prime Video
本作最大の謎にして、恐怖のポイントとなるのが「何故、突然母親は豹変したか?」という部分です。
結局のところ、母親が包帯だらけの見た目になったのは、美容整形をしたからです。
作品の冒頭で、母親が老いた自分の姿を撮影されるのを、極度に嫌がっていたことからも「容姿に関するコンプレックス」を、感じていたことが分かります。
母親は、再会したエリアスに「変化が欲しかった、仕切り直し」と言っているので、ルーカスが亡くなったことから、気持ちを切り替える為に、自分の中で何かを変えようとし、このタイミングでの美容整形となったのでしょう。
では「何故、母親の性格まで変わったのか?」ですが、亡くなったルーカスが、エリアスには、今でも見えていることから動揺したと思われます。
そもそも、エリアスが母親と再会するまで「何処にいたのか?」は説明されていません。
エリアスが、夜中に母親の電話を聞いた際「いつまで、あの子と一緒にいればいいですか?私はもう自身が無い」という話をしているのですが、これは精神病院の医師との会話でしょう。
つまり、ルーカスを殺してしまったエリアスが、精神病院に入院し退院した後も、ルーカスの幻影が見える、精神的な病に侵されている姿を見て、母親は耐えられなくなったのです。
母親はエリアスに「鍵を閉めるな、外に出るな、家を走るな」などの約束事を決めますが、これは、精神的に不安定なエリアスを、母親が監視する為です。
作品の終盤で、いきなり姿を消すルーカスですが、母親が買っておいた玩具が1つだけだったり、母親の寝室に一緒に忍び込んだルーカスが、いつの間にか消えていたり、警官と話をしているのがエリアスだけだったり、最初から伏線は張られています。
『グッドナイト、マミー』は、豹変した母親の恐怖を描いた作品ですが、目線を母親に変えて作品を観てみると、実は悲しい物語であることが分かります。
寝室での母親の奇妙な行動の理由
(C)Amazon Prime Video
『グッドナイト、マミー』では、エリアスが寝室で、母親の奇妙な行動を目撃する場面が、かなり不気味で恐怖を煽ります。
ここで謎なのが、煙草嫌いのはずの母親が、何故煙草を吸っていたのでしょうか?
重要なのは、母親が元女優という点です。
母親はおそらく、子供達にとって「理想の母親」を演じており、エリアスとルーカスにとっての「優しくて大好きなママ」が、実は虚構だったのです。
誰も見ていない1人の寝室で、母親は1人の女性である本来の自分に戻ったのでしょうね。
エリアスとルーカスが産まれたことをキッカケに、煙草をしばらくやめていたのでしょうが、ルーカスの死と、エリアスの精神的な病が耐えられなくなり、再び吸い始めたと考えられます。
本作の母親だけでなく、誰しも「自分が与えられた役割」を少なからず、演じている部分はあるのではないでしょうか?
エリアスにとって、理想の母親だった存在は、実は母親が演じていた幻影だった可能性が高いですね。
ラストにエリアスが見た幻影
(C)Amazon Prime Video
ラストで、全ての真相が明かされた直後、母親を突き落とし殺してしまったエリアスが見る、ルーカスと母親の幻影。
完全にバッドエンドですが、エリアスはこれまで見えていたルーカスの幻と共に、今後は母親の幻影も見えるようになったということで、完全に病が悪化しています。
ただ前述したように、エリアスにとっての理想の母親は、元女優が演じていた、言わば幻想のような姿。
例え幻影でも、大好きなルーカスと母親と、今後一緒にいられることで、エリアスにとっては幸せなのかもしれません。
『グッドナイト、マミー』のエンディングは、解釈次第で「救いようのないラスト」にも「エリアスにとってのハッピーエンド」にも、どちらにも受け取れる、やはりここも視点の変化で印象が変わるという、かなり計算された作品です。
まとめ
(C)Amazon Prime Video
リメイク版となる本作は、オリジナル版の『グッドナイト、マミー』と、ほぼ同じ内容です。
オリジナル版は、母親へ不信感を抱き始めたエリアスの妄想が、結構グロいので、特に虫が苦手な方は、リメイク版をオススメしたいです。
ラストが分かったうえで、もう一度観賞すると、伏線の張り方や構成が、かなり練られていることが分かるので、ホラーやサスペンス好きの方は、いろいろと考察しがいのある作品ではないでしょうか?