連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile150
ヒーロー映画での「ヴィランとの共闘」はファンにとって嬉しい展開であり、映画としても要注目の熱いシーンであると言えます。
ヴィランにもそれぞれの思想や考えがあり、結果的に「善」に繋がる行動を「悪」側の人間が取ることが興奮を呼び起こす要因の1つになっています。
今回は前作で主人公たちを絶望に陥れた盲目の老人が少女を救うために奮闘する映画『ドント・ブリーズ2』(2021)を、ネタバレあらすじを含めその真相についてご紹介させていただきます。
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CONTENTS
映画『ドント・ブリーズ2』の作品情報
(C)2021 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.
【原題】
Don’t Breathe 2
【日本公開】
2021年(アメリカ映画)
【プロデューサー】
サム・ライミ
【監督】
ロド・サヤゲス
【脚本】
フェデ・アルバレス、ロド・サヤゲス
【キャスト】
スティーヴン・ラング、マデリン・グレイス、アダム・ヤング、ボビー・スコフィールド
【作品概要】
2016年に全世界で話題となった映画『ドント・ブリーズ』(2016)の8年後を描いたスリラー映画。
盲目の老人ノーマンを前作から引き続きスティーヴン・ラングが演じ、前作で脚本を担当したロド・サヤゲスが監督を務めました。
映画『ドント・ブリーズ2』のあらすじとネタバレ
(C)2021 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.
燃え盛る家の中から1人の少女が命からがら抜け出し、道の半ばで倒れます。
8年後、火事から生き残った少女フェニックスは盲目かつ退役軍人の父親ノーマンと愛犬のシャドーと共に過ごしていました。
巷では臓器密売組織による誘拐が相次いでおり、妻と姉妹を失いこれ以上家族との別れを経験したくないと願うノーマンは、フェニックスを学校にも行かせず行動を過剰に制限します。
ある日、家に必要な物資を届けてくれる退役軍人のヘルナンデスに同行し街へ行くことを許可されたフェニックスは、ノーマンに内緒で火事により焼け落ちた家へと向かいます。
廃墟となった家の中で何者かの気配を感じ不気味に思ったフェニックスはその場を離れますが、その後公園のトイレで不審な男に絡まれます。
シャドーが同行していたことで難を逃れ、ヘルナンデスの車で自宅へと戻ったフェニックスはノーマンに「学校に行き友達を作りたい」と懇願しますが無駄に終わりました。
その日の夜、ノーマンの家からの帰り道で、ヘルナンデスは1台のトラックに道を阻まれます。
トラックにはトイレでフェニックスに絡んだ不審な男レイランを含んだ複数の男が乗っており、ヘルナンデスが退役軍人であることを見抜いたレイランは自身達も退役軍人であることを話します。
レイランたちをヘルナンデスは不審に感じますが、自身の車の中に隠れ潜んでいたレイランの仲間によって殺害されてしまいました。
その後レイランたちはシャドーを森におびき寄せ殺害すると、シャドーを探すノーマンが家から出て行った隙に家へと侵入。侵入者の存在に気づいたフェニックスは家から逃げようとしますが、レイランたち誘拐団の1人に捕まってしまいます。
一方、森の中でシャドーの死体を発見し悲しみに暮れるノーマンは、シャドーが何者かに射殺されたことを手探りで知ると家へと戻ります。そしてフェニックスを捕まえる男を攻撃し、彼女を地下室へと逃がします。
地下室内のフェニックスを捕まえようとする誘拐団の1人を殺害したノーマン。フェニックスと温室へと逃げますが、そこにレイランが現れます。
「ノーマンの秘密を知っている」と語り始めるレイラン。激高したノーマンは強盗団へと掴みかかりますが、逆に拘束されてしまいます。
レイランは8年前に麻薬の製造工場だった自宅が火事になり、放火の罪を着せられ投獄されていたことを明かした上で、自分こそが真の父親であるとフェニックスに告げます。
そしてノーマンは行き倒れていたフェニックスをさらい「自身の娘」として育てていた異常者だと吐き捨てると、レイランは部下にノーマンを殺害させようとしますが逃げられてしまいます。
ノーマンは誘拐団の1人を殺害しフェニックスを回収しますが、レイランがノーマンの服を嗅がせた誘拐団の幹部ラウルの犬を放ったことでフェニックスを見失いました。
ノーマンもレイランも信じることのできないフェニックスは、2階からひとり家を抜け出しますがラウルに捕らえられてしまいます。
一方、ラウルの犬を拘束したノーマンは犬を射殺しようとしますが、シャドーのことを思い出したノーマンはそれをためらい、その場に放置します。
フェニックスを回収したレイランはノーマンの家に火を付け、誘拐団と共にその場から退散。
火事となったことを知ったノーマンは、拘束したままにしていたラウルの犬を解放。自身も命からがら家から抜け出しますが、家もフェニックスも失ったことに絶望します。
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映画『ドント・ブリーズ2』の感想と評価
(C)2021 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.
悪と悪がぶつかり合うバイオレンスアクション
前作『ドント・ブリーズ』では盗みを働く少年少女が金銭目的でノーマンの家へと押し入り、彼の常軌を逸した戦闘能力に一人一人惨殺されていく様子が描かれ、「恐怖映画」としての側面が強い作品でした。
しかし、2作目となる『ドント・ブリーズ2』でノーマンと対峙するのは退役軍人で結成されたギャング組織であり、盲目というハンディキャップを除いても、老齢であるノーマンは体力という面で大きな劣勢に立たされることになります。
目的のためなら人を殺害することを躊躇わないノーマンとギャングが己の能力をフルに活かし一進一退の攻防を繰り広げる本作。
強すぎる盲目老人が戦闘のプロフェッショナルの集団とぶつかったらどうなるのか、と言う前作ファンの心をガッチリと掴む続編映画でした。
家族を求める「怪物」の物語
(C)2021 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.
前作で描かれた通り、盲目の老人ノーマンは妻と妻のお腹の中にいた娘を理不尽に失ったトラウマから「家族」を奪おうとする人間を容赦なく惨殺。
さらにノーマンは家族を奪った女性を監禁し、失った娘の代わりとなる子供を産ませようとする狂気に取り憑かれている様子も描かれており「ヴィラン」としての位置を確立します。
ですが、ヴィランとして描かれるノーマンの行動は失った「家族」を求める一心からであり、無意味に人を傷つける純粋悪とは異なるものでした。
そんなノーマンが「娘」のフェニックスと暮らす本作では、「家族」を再び手にした彼の本性が見えることになります。
鑑賞者の善悪の判断が大きく揺さぶられる本作は、「家族」の真の意味を問う良質なメッセージが込められた作品でした。
まとめ
(C)2021 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.
前作に比べホラー要素は抑え目になりつつも、「暗闇」と「息遣い」の扱いは本作でも健在。
アクションが大幅に進化し、盲目の退役軍人ノーマンによる虐殺は見ごたえ抜群となっています。
自身の呼吸すら我慢してしまうような緊迫感たっぷりの映画『ドント・ブリーズ2』をぜひ劇場でご覧になってください。