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Entry 2021/08/17
Update

【ネタバレ】『ドント・ブリーズ2』考察と結末内容。少女フェニックスによるノーマンの“変化と善悪”

  • Writer :
  • 糸魚川悟

盲目の老人ノーマンは「善」なのか、「悪」なのか?

世界でヒットを記録しただけでなく、口コミによって日本でも話題となった映画『ドント・ブリーズ』(2016)。

最強の盲目老人が侵入者を惨殺する作品として、「ヴィラン」に位置付けられた盲目の老人「ノーマン・ノードストローム」は一躍大人気となります。

そして数年の月日を経て製作された続編『ドント・ブリーズ2』(2021)でも、劇場に返り咲いたノーマンは相変わらずの殺戮を繰り広げますが、「ヴィラン」としての彼の立ち位置を問うような物語にもなっていました。

そこで今回はノーマンが善の存在なのか悪の存在なのかを、『ドント・ブリーズ2』で描かれた少女フェニックスとの関係性から探っていきたいと思います。

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映画『ドント・ブリーズ2』の作品情報


(C)2021 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.

【日本公開】
2021年(アメリカ映画)

【原題】
Don’t Breathe 2

【プロデューサー】
サム・ライミ

【監督】
ロド・サヤゲス

【脚本】
フェデ・アルバレス、ロド・サヤゲス

【キャスト】
スティーヴン・ラング、マデリン・グレイス、アダム・ヤング、ボビー・スコフィールド

【作品概要】
2016年に全世界で話題となった映画『ドント・ブリーズ』(2016)の8年後を描いたスリラー映画。

盲目の老人ノーマンを前作から引き続きスティーヴン・ラングが演じ、前作で脚本を担当したロド・サヤゲスが監督を務めました。

映画『ドント・ブリーズ2』のあらすじ


(C)2021 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.

郊外に住む盲目の老人ノーマン(スティーヴン・ラング)は「娘」のフェニックス(マデリン・グレイス)と2人で暮らしていました。

火事で母と姉妹を失ったフェニックスは学校へ通うことを望みますが、家族を失うことを異常に恐れるノーマンはそれを許さず悶々とした日々を過ごす毎日。

そんなある日、フェニックスを誘拐しようと狙うレイラン(ブレンダン・セクストン3世)率いる武装集団が家へと侵入し……。

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「ノーマン」=「ヴィラン」を決定づけた行動


(C)2021 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.

前作『ドント・ブリーズ』では、主人公であるロッキーたちを容赦なく殺害していく残虐性を見せたノーマンですが、前作の監督フェデ・アルバレスが「泥棒の目線で描いた泥棒の物語」であり、様々な要素に「逆転」を盛り込んだ映画にしたと語ったように、主人公サイドが「盲目の老人の家を狙った泥棒」であるがゆえに、作中には善も悪もいないと考えることが可能でした。

しかし、物語が展開され中盤に差し掛かるとノーマンの恐るべき行動が発覚し、彼のヴィランとしての位置づけが決定的なものとなります。

「家族を想う心」と「過剰な制裁心」


(C)2021 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.

ノーマンは自宅の地下室内で女性のシンディを生かしたまま吊るし、ノーマンの子どもを産むことを条件に解放を約束するという常軌を逸した行動を取っていました。

ノーマンはかつて自身の子どもを宿した妻を車の事故で亡くし、さらに加害者は富豪の娘であったため罪を問われることなく放免となりました。

地下で吊るされていたシンディは、ノーマンの妻と子供を轢き殺した女性その人であり、ノーマンは彼女に子どもを産ませることで「制裁」と自身に対する「救い」を一挙に行わせていたのです。

このように1作目では、侵入者を容赦なく殺害することから分かる「過剰な制裁心」と、盲目にも関わらず家族の写真を飾り、シンディの胎児が死亡した際に泣き崩れるなどの「家族を想う心」が同時に描写されており、あまりにも強烈すぎるシーンの数々によって「ヴィラン」として多くの人々に認識されることとなりました。

ノーマンの善性とは?


(C)2021 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.

戦争に従軍したことで視力を失い、事故によって身内をも失ったノーマン。

汲むべき事情こそあるものの、1作目での彼の行動は独りよがりの行き過ぎた行動であり、「善性」を微塵も感じることは出来ません。

さらに前作の物語の終盤では、ロッキーの生存を確信するや否や保身のための守秘契約を交わすなど、ノーマンのしたたかさは「過剰な制裁」を行う本人の真逆の行為とも言え、「悪」としての印象がより強固なものとなりました。

少女フェニックスによって変化する心


(C)2021 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.

対して続編となる『ドント・ブリーズ2』では、「娘」であるフェニックスと同居し始めたノーマンが描かれており、彼はフェニックスを守るために持てる力の全てを発揮し武装集団を殺戮していきます。

1作目のロッキーたちと異なり、レイラン率いる武装集団は殺人を厭わない犯罪組織であり、フェニックスを狙う「真の目的」が「悪」の印象を強め、結果として少女を守るために行動するノーマンが「善」の存在に感じます。

終始フェニックスのためを想い行動し、「家族」を失った際には深い悲しみに暮れ、「家族」を脅かす存在と戦うノーマンの姿はヒーローとして遜色のない描写でした。

しかし、2作目で描かれるノーマンの要素は全て1作目と同じ「家族を想う心」と「過剰な制裁心」であり、本質的に彼の行動原理は変わることはありませんでした

自身の罪を自覚しフェニックスのために戦うノーマンは、紛れもなく彼女にとっての「ヒーロー」です。ですが、彼を「善」と感じるか「悪」と感じるかは、彼と敵対する人物の「悪」の度合いによって変わる相対的なものであり、いかに善悪の判断が曖昧なものかを再認識させてくれる作品でもありました。

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まとめ


(C)2021 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.

ドント・ブリーズ2』で明かされる少女フェニックスとノーマンの関係性の真実は、決して許されることではありません。

しかし、ノーマンがフェニックスを守ろうとする意志は本物であり、少女のために命を燃やす盲目の老人は、「家族」を手にしたことで「善」となることが出来たのかもしれません。

鑑賞する人の善悪の判断をかき乱す『ドント・ブリーズ2』は、ノーマンを「悪」と捉えていた人にこそ観て欲しい作品でした。


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