消滅する都市に隠された製薬会社「アンブレラ」の秘密とは?
1996年に発売され、爆発的なヒットとなり、その後人気シリーズとなった、サバイバルホラーゲーム『バイオハザード』。
ゲーム版の1作目と2作目の設定をもとに「ラクーンシティ」で巻き起こる、恐怖を描いたのが、原点回帰とも呼べる映画『バイオハザード/ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』です。
映画版の『バイオハザード』といえば、2002年にミラ・ジョヴォヴィッチ主演で製作され、その後人気シリーズになった映画もありますが、ミラ・ジョヴォヴィッチ版は、アリスという映画オリジナルのキャラクターを主役にした、ホラーと言うよりアクションの要素が強い作品でした。
しかし『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』は、ゲーム版の持つ「ゾンビと遭遇する恐怖」を再現しているだけでなく、ゲーム版の『バイオハザード』ファンであることを公言している、ヨハネス・ロバーツ監督の「バイオハザード愛」とも呼べる要素が散りばめられた作品に仕上がっています。
では『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』とは、どんな内容なのでしょうか?
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CONTENTS
映画『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』の作品情報
(C)Resident Evil: Welcome to Raccoon City (2021)
【日本公開】
2022年公開(アメリカ映画)
【原題】
Resident Evil: Welcome to Raccoon City
【監督・脚本】
ヨハネス・ロバーツ
【キャスト】
カヤ・スコデラーリオ、ハナ・ジョン=カーメン、ロビー・アメル、トム・ホッパー、アバン・ジョーギア、ドナル・ローグ、ニール・マクドノー
【作品概要】
カプコンの人気サバイバルホラーゲーム『バイオハザード』を、ゲーム版の設定を重視し、新たなキャストで映画化。
メインキャラクターの1人である、クレアを演じるのは『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』(2017)でヒロインを演じたカヤ・スコデラーリオ。
「ラクーンシティ」の異変に巻き込まれる、警察官のジルを演じるハナ・ジョン=カーメンは『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)で長編デビューして以降『レディ・プレイヤー1』(2018)など、話題作に多数出演しています。
2017年のインディペンデント映画、最高の興行収入を記録した海洋パニック・スリラー映画『海底47m』(2016)のヨハネス・ロバーツが、監督と脚本を務めています。
映画『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』のあらすじとネタバレ
(C)Resident Evil: Welcome to Raccoon City (2021)
かつて製薬会社「アンブレラ」の拠点となっていた街「ラクーンシティ」。ですが、現在は「アンブレラ」の一部の研究員と、貧しい人達だけが暮らす、寂れた街になっています。
クレアは「ラクーンシティ」の孤児院で、兄のクリスと共に育ちました。
ですが、孤児院に夜中だけ現れる謎の存在、リサ・トレヴァーとの出会いをキッカケに、孤児院のある秘密を知り「ラクーンシティ」を出ていきました。
5年後、孤児院の秘密を探る為、クレアは「ラクーンシティ」へ戻ることを決意します。
PM11時
クレアは、ヒッチハイクで出会ったトレーラーの運転手に「ラクーンシティ」まで連れて行ってもらいます。
ですが、途中で運転手の不注意により、女性をはねてしまいます。
動揺する運転手ですが、倒れたはずの女性の姿が消え、道路には血だけが残っており、トレーラーの運転手が連れている犬が、その血をなめていました。
その後、クレアはトレーラーの運転手に、無事に「ラクーンシティ」まで送ってもらいます。
クレアがトレーラーから降りた後、女性の血をなめた犬が豹変し、運転手に噛みつきます。
「ラクーンシティ」に到着したクレアは、クリスの住む住居を訪ねました。
クリスの部屋には、孤児院時代に面倒を見てくれた、親代わりでもあるウィリアムの写真があります。
ウィリアムは「アンブレラ」の研究員でもあり、孤児院の地下で極秘の研究をしていた様子で、クレアは不気味なウィリアムに、嫌悪感を抱いていました。
久しぶりに会ったクリスは、「ラクーンシティ」の警察官になっていました。
クレアは、クリスにあるビデオを見せます。
そこには、ベンと名乗る男が映っており「『ラクーンシティ』は『アンブレラ』の実験場で、水が汚染されている」と語り、最後に「それ以上にやばいことが起きている」という言葉で、ビデオは終わります。
クリスは「陰謀論」であると決めつけ、相手にしません。ですが「ラクーンシティ」に、突如緊急警報が流れます。
警報を聞いたクリスは、クレアに「家に帰れ」と伝え、警察署に向かいます。
残されたクレアは、隣の建物の住人が不気味な目つきで、こちらを見ていることに気付きました。
次の瞬間、隣の建物の住人は、窓ガラスを破って侵入して来て、うめき声をあげながらクレアに襲いかかって来ました。
クレアは間一髪のところで、部屋の外に逃げ、クリスのバイクに乗って警察署に向かいます。
警察署に向かう途中で、クレアはウィリアムの車に遭遇しますが、何も言わずにバイクを発進させます。
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映画『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』感想と評価
(C)Resident Evil: Welcome to Raccoon City (2021)
人気サバイバルホラーゲームを映像化した『バイオハザード/ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』。
過去に映像化された、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演の『バイオハザード』は、オリジナル要素を入れることで、ゲームを知らない人でも分かりやすい内容になっていました。
ジョヴォヴィッチ版も悪くは無いのですが、素手でゾンビを次々に倒していく、アクション要素の強い内容で「限られた状況で、どうゾンビと戦い脱出するか?」というゲーム版の魅力である、サバイバル要素が無くなってしまったことが、個人的には残念に感じていました。
今回の映画『バイオハザード/ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』は、ジョヴォヴィッチ版と比べ、かなりゲームの要素を重視しています。
映画に登場する「スペンサー邸」と「ラクーンシティ警察署」は、それぞれゲーム版の1作目と2作目の舞台で、ゲーム版を製作したカプコンから、設計図を借りて作り出したセットは、かなりゲームに忠実です。
登場するキャラクターも、ゲーム版の1作目の主人公のクリスとジル、2作目の主人公クレアとレオンの他、シリーズを通しての敵キャラとなるウェスカーや、ファンの間で人気が高い、リサ・トレヴァーも登場しています。
ですが、映画版のキャラクターは、ゲーム版からキャラクターの設定や容姿の変更がされており、物足りなさを感じる部分は正直あります。
ですが、『バイオハザード』の世界観が、忠実に再現されていることは間違いないです。
では「ゲーム版を知らないと全く楽しめないのか?」というと、そうではありません。
『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』は、それぞれのキャラクターの戦いを描いた、群像劇でもあるからです。
クレアは、自らの過去に決着をつける為に、5年前に逃げ出した「ラクーンシティ」に戻ります。
そこで「孤児院の地下で、人体実験がされていた」という衝撃的な真実に直面し、「アンブレラ」との戦いを決意します。
兄のクリスは、父親同然に思っていたウィリアムに裏切られ、自らの手で全てを終わらせようとしますし、ジルは恋人のウェスカーの裏切りに遭い、新人警官のレオンは、配属された「ラクーンシティ」で、いきなり怪物たちと戦うことになります。
本作で脚本も担当した、ヨハネス・ロバーツは「ゲームのファンだけに向けた映画ではなく、ストーリーテリングとキャラクターが重要」と語っていることからも分かる通り、本作は、ゾンビが徘徊し、数時間後に消滅する街から生き残る為の、それぞれの戦いと背負った過去を描いた「人間ドラマ」なのです。
また、ゲーム版を意識した「恐怖を感じる映像」にもこだわっており、特に中盤での「スペンサー邸」での戦いは、暗い屋敷内で逃げ回りながら、銃を発砲した時の光のみで、ゾンビの姿を捉えていくという、かなり生々しい恐怖を感じる演出になっています。
ヨハネス・ロバーツは「『バイオハザード』の世界に息を吹き込みたかった」と語っており、ゲームの要素を重要視しながら「ホラー映画」としてのバランスにもこだわっていることを語っています。
ゲーム版のファンは、新たな『バイオハザード』の世界に触れることになりますし、逆にゲーム版を知らない人にこそ、これを機に『バイオハザード』の世界を体験していただきたいです。
まとめ
(C)Resident Evil: Welcome to Raccoon City (2021)
『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』は、ゲームの要素を重視するあまり、何も知らない人からすると「唐突に感じる展開」が、いくつかありますので、知っていると楽しめる要素をご紹介します。
突然ピアノの演奏を始めるウェスカー
中盤で「スペンサー邸」を探索するウェスカーが、突然ピアノを演奏して隠し扉を出す場面ですが、これはゲーム版1作目でのイベントの1つです。
ヨハネス・ロバーツは「どうしてもこの場面を入れたくて、苦労した」と語ってています。
墜落するヘリコプター
本作の中盤で「スペンサー邸」に、いきなり墜落してくるヘリコプター。
ゲーム版の『バイオハザード』では、救助に来たヘリコプターが、高い確率で墜落することで有名なのですが、そこを映画に反映させていますね。
いきなり出て来る「ロケットランチャー」
本作のラストで怪物になったウィリアム相手に、いきなりレオンが発射したロケットランチャー。
ゲームを知らないと、突然すぎる展開ですが、ゲーム版の1作目で最後のボスと戦う際に使用するのがロケットランチャーで、それ以降、シリーズを象徴する強力な武器になっています。
『バイオハザード』で、最後のボスと言えばロケットランチャーなんです。
エンドロールの意味
本作のエンドロールでは、死んだはずのウェスカーが突如蘇ります。
そして、ウェスカーの前にエイダと名乗る女性が現れ、ウェスカーにサングラスを渡します。
ウェスカーは、ゲーム版のシリーズを通しての代表的な悪役で、トレードマークがサングラスなんですね。
なので、ここでは「悪役としてのウェスカー誕生」を描いた場面になっています。
そして、エイダですが、これもシリーズを通してお馴染みの工作員です。
ウェスカーに名前を聞かれたエイダが「エイダ、エイダ・ウォン」と名乗りますが、これもゲーム版ではお馴染みのセリフになっています。
このように、ジョヴォヴィッチ版と比べて、本当に『バイオハザード』が好きなヨハネス・ロバーツ監督の、ゲームへの愛を強く感じる作品ですが、ヨハネス・ロバーツ監督自身「ゲームの要素を探すだけの映画にはしたくなかった」と語っています。
その為『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』は、前述したように群像劇、体感型のホラーとして、誰でも楽しめる作品に仕上がっています。
ご紹介した要素を踏まえて『バイオハザード』の世界を、味わって下さい!