“ジェネレーションギャップ”を飛び越えるコミュニケーションの極意を描く
今回ご紹介する映画『マイ・インターン』は、ニューヨークでファッション通販サイトを立ち上げ、成功を収めた若き女性経営者が、40歳年上のインターンを直属の部下に迎えたことで、経営者として人として成長していく姿をコメディタッチに描いたヒューマンドラマです。
テーマは「世代を超えた友情」。アン・ハサウェイが演じる女社長とその下で、シニアインターンとして奮闘するベンを演じる、ロバート・デ・ニーロとの掛け合いは、俳優としてのキャリアとも重なり、等身大でリアルなコミュニケーションが描かれています。
映画『マイ・インターン』の作品情報
(C) 2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED
【公開】
2015年(アメリカ映画)
【監督・脚本】
ナンシー・マイヤーズ
【原題】
The Intern
【キャスト】
ロバート・デ・ニーロ、アン・ハサウェイ、レネ・ルッソ、アンダーズ・ホーム、アンドリュー・ラネルズ、アダム・ディヴァイン、セリア・ウェストン、ナット・ウルフ、リンダ・ラヴィン、ザック・パールマン、ジェイソン・オーリー、クリスティーナ・シェラー
【作品概要】
抜群のセンスとアイデアでインターネットファッションサイトを急成長させた、女社長のジュールズを演じたのは『プラダを着た悪魔』(2006)のアン・ハサウェイです。
印刷会社で40年間勤めあげ、新天地にチャレンジするシニアインターン役は、『ゴッドファーザーPARTII』(1975)でアカデミー賞助演男優賞を受賞した彼が、徹底した役作りをすることから、“デ・ニーロ・アプローチ”という言葉も生み出します。
監督のナンシー・マイヤーズは脚本家としてテレビ界で活躍したのち、『プライベート・ベンジャミン』(1980)で初めて映画の脚本を手掛け、アカデミー賞脚本賞にノミネートされました。
初監督は『ファミリーゲーム 双子の天子』(1998)で、『恋するベーカリー』(2009)では製作・監督・脚本の3役を務め、ゴールデングローブ賞脚本賞にノミネートされました。
映画『マイ・インターン』のあらすじとネタバレ
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印刷会社で40年勤務し定年退職したベン・ウィテカーは、妻のモリーに先立たれて3年半が経ち、隠居生活の時間を持て余していました。
隠居生活もだいぶ経過しやること探しをする日々、貯まったマイレージで海外旅行に行っても、帰宅すれば虚しく、その後はゴルフや読書、映画、太極拳、中国語レッスン……。
さらに葬儀への参列が顕著に増えます。ベンにはサンディエゴに一人息子の家族がいて、余暇を過ごすことも多くなり幸せを感じていますが、それとは裏腹に心に空いた穴を埋めたいと考えていました。
そんな時、ベンはスーパーマーケットの求人コーナーで、65歳以上のシニアインターン募集の広告を見つけます。
ベンはそれに挑戦してみようと考えますが、広告には今まで縁のなかったIT用語が並びます。自己PRは動画で作成し、指定の拡張ファイルで送るなど、初めてだらけのことでした。
シニアインターンの募集をした会社は、ファッションのインターネット通販を運営する「アバウト・ザ・フィット」という会社でした。
ベンはネクタイを締めたスーツ姿でPR動画を撮ります。締めくくりに音楽家の引退を引用し、「自分の中にはまだ音楽があります」と言い、応募しました。
ファッション通販の“アバウト・ザ・フィット”は主婦が1年半前に立ち上げ、消費者目線の戦略から瞬く間に、220名の従業員を抱える大企業へと発展していました。
社長のジュールズ・オースティンの仕事ぶりは斬新で時々、直接顧客の声を聞けるコールセンター業務も行います。
ある日、花嫁の付添人のドレスが誤配されたクレームを受けますが、迅速な判断と手配で顧客を安心させるなど、経営者としての手腕を発揮していました。
ジュールズの業務は多忙で時間との戦いのため、社内を自転車で移動しています。自由な社風の中、アニバーサリーを祝ったり、業務中にお菓子を食べるのもOKです。
PR動画の選考に通ったベンは面接に訪れ、自分よりも若い5人の重役と面接します。学歴はノースウェスタン大学、職歴は電話帳専門の印刷会社デックス社で営業や部長で、40年務めたことを話しました。
そして最後の面接官から「10年後の夢は?」とセオリー通りの質問をします。ベンは「80歳の?」と聞き返すと、面接官は慌てて質問を撤回します。
ビジネスパートナーのキャメロンは、社会貢献の一環で65歳以上のシニアを採用すると、ジュールズに説明していましたが、彼女は、“シニア”を大学4年生のことと勘違いします。
キャメロンは高齢者を採用することで、企業イメージをアップできると考えていました。ベンのPR動画は好印象を与え、インターンとして働くことになりました。
そして、キャメロンはベンの配属先を、ジュールズ直属のインターンにしようと考えますが、ジュールズの目下の気がかりは、オフィスの真ん中にある物置エリアでした。
ベンは初出勤に向けて、スーツを選び目覚まし時計を2つセットし、意気込み十分で挑みました。
シニア枠で雇われたのはベンを含め3人、若年枠から1人採用され、4人は配属先が発表され、オフィシャルのインスタグラムに新採用メンバーとして紹介されます。
4人は自分のデスクに案内され、ベンの隣は若年採用されたデイビスです。彼はスマートフォンやバッテリー、ケーブル類を机に並べはじめます。
それを見たベンも持参した携帯やシステム手帳、ペンケースなどを几帳面に並べました。仕事の指示はメールでやりとりすると説明され、初めてノートパソコンを開けます。
起動のさせ方がわからないベンが、戸惑っていると隣りの席のルイスがキーを叩き、教えてくれました。
初めてのメールは秘書のベッキーから、ジュールズの面談についてです。ジュールズのスケジュールは分刻みのため、午後3時55分から時間厳守と打たれていました。
デイビスには早速仕事の指示が入りますが、ベンは出社してから午後3時55分まで、何もすることがありません。
面談前にベンはベッキーの所へ行きます。彼女は彼がインターンであることに驚き、年齢を聞きます。ベンは70歳だと答え、ベッキーにも歳を聞くと彼女は24歳でした。
ベンはジュールズに関してアドバイスがほしいと言うと、自分はモタモタしすぎて仕事が遅く嫌われていると言います。
そして、まばたきしないと不気味がられるから、「まばたきを忘れずに」とアドバイスを受けます。
時間になりベンはジュールズの面談に行きますが、自分の親ほど歳の違うベンに対して、どう接したらよいのか困惑していました。
ジュールズは正直に「任せる仕事がない」と言い、営業経験があるならマーケティングの方が向いているかもと、異動を勧めますがベンはジュールの下で働くことを希望します。
以下、『マイ・インターン』のネタバレ・結末の記載がございます。『マイ・インターン』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
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ジュールズが「仕事を頼むときはメールする」と告げると、ベンは笑顔で“まばたき”をして部屋を出ました。
翌日からベンは、ジュールズからのメールを待つ日々となります。ベンの存在を忘れるほどに多忙で構っていられませんでした。
定時になればデイビスは退社しますが、ベンはジュールズが業務中の間は居残り、スタンバイしていました。
ジュールズからの仕事がないベンでしたが、郵便物や宅配をカートで運ぶ女性社員を手伝ったのをきっかけに、若い仲間達に仕事から恋愛のことまでアドバイスを求められます。
こうしてベンは職場の若い人たちから、確固たる信頼をつかみ社内に打ち解けていきます。
ある時、ベッキーからヘルプメールが入ります。それは、ジュールズがサン・ローランのジャケットにつけた、醤油のシミ抜きでした。
ジュールズはキャメロンから、外部からCEO(最高経営責任者)を雇う必要があると提案されていました。
急激に成長した「アバウト・ザ・フィット」は、その勢いに社員たちが追いついていないと指摘し、その1人がジュールズだと指摘します。
業務を円滑にするためには経験豊富な人材からのアドバイスが必要で、そうすることで、さらなる成功への道が開けると考えます。
しかし、ジュールズは自分で築き上げた会社を他人に委ねることに抵抗を感じ、断固として受け入れられません。ベンは話を聞いてしまいますが、ジャケットを受け取ると部屋を出ます。
ベッキーは何の話をしていたか、探りを入れますが、ベンは「失礼、ボス」といって離れると、ベッキーはボスと呼ばれまんざらでもないと、嬉しそうな笑顔を浮かべます。
翌朝、出社したジュールズは気がかりだった、物置エリアの山が片付いていることに気づきました。ベンが7時に出社して、片付けてくれたと社員が報告します。
ジュールズはベンが自分のインターンであることも忘れていました……。キャメロンが社内放送でベンを呼ぶと、ジュールズが感謝の言葉をのべ、社内に拍手が沸き起こります。
ベンがデスクワークしていると、会社専属のマッサージ師フィオナが、ベンを労うためにやってきます。
フィオナは肩から腰にかけてマッサージをし、ベンは同世代で美しいフィオナに好感を抱きます。彼女はベンに連絡先の名刺を渡して戻っていきました。
何気なく窓の外に目をやったベンは、待機しているジュールズ専属の運転手が飲酒するのを目撃します。ジュールズが外出する間際でした。
ベンは先回りしてドライバーに運転を控えるよう言います。ドライバーはジュールズに体調不良を訴え運転を回避しました。その代りにベンが運転することになります。
後部座席に乗ったジュールズは、車内での会話はオフレコだと伝えますが、嫌でも内容がベンの耳に入ってしまいます。
母親と会話をするのが日課でしたが、メールを打つ音を指摘され、すぐに通話は終ります。次はキャメロンとのスカイプで、ジュールズがCEOの候補に会いに行くのだとわかりました。
昼食を抜いたジュールズは空腹で緊張がほぐれないといいながら、面会に向かいますが短時間でオフィスから出てきます。
待っている間にベンは、ジュールズのためにチキンスープを買っていました。彼女はそれを飲みながらキャメロンに、候補者は感じが悪く“まばたき”もしなかったと報告します。
最初の候補者をNGにしたジュールズは苦悩していました。彼女を家まで送ると、ジュールズはベンに片づけのこと、スープの礼をいいます。
ベンが何か言いたげな顔をすると、彼女はそれをいうように促します。ベンは「1年半前に会社を作り、従業員を220名までにした偉業はだれがした?」と励まします。
出迎えに出てきたジュールズの家族を見ながら、ベンは「一歩前進」と安堵し、家に帰ると早速フィオナに電話して、デートの約束を取り付けました。
早朝、ベッキーから緊急の電話が入ります。専属ドライバーが行方不明になり、ジュールズの迎えができないというヘルプでした。
ベンは迎えを引き受け自宅へ向かいます。対応に出たジュールズの夫マットは「外で待つ」というベンを中に招き入れ、コーヒーをふるまいます。
ジュールズはキッチンにいるベンを見て驚きます。マットに洗濯物の分別を教えながら、会社に注文した荷物の梱包状態をチェックします。
出勤間際まで仕事に集中するジュールズは、マットの話しが耳に入ってきません。ベンがいることで余計にやりにくそうです。
ベンはマットのことを“21世紀の父親像”だと絶賛します。ジュールズも同意しながら、マットは彼女を助けるため、仕事を辞めて家庭に入ってくれたと話します。
しかし、自分のプライバシーを守りたいジュールズは、キャメロンに「ベンを異動させて」とメールし、異動の理由を聞かれたジュールズは「目ざとすぎる」と答えました。
ジュールズはベンに倉庫に立ち寄るよう指示します。ルートが違うと指摘しますが、ベンはこの方が12分早いと説明し、そのとおりに到着するとジュールズは驚きます。
倉庫に到着したジュールズは、梱包方法の改善を従業員に伝え、包装の手順をレクチャーしながら指導します。ベンはその様子を感心しながらみつめていました。
その日はフィオナとのディナーデートでしたが、残業になってしまったと伝えに行きます。デートは土曜のランチへと変更しました。
ジュールズは自分の残業に合わせて残るベンをみつけて、1人で食べていたピザとワインを勧めに来ます。
彼女はCEO選びの愚痴をこぼしたり、ベンの前職について尋ねました。
ベンがデックス社に40年勤務していたというと、「アバウト・ザ・フィット」の社屋は以前、“電話帳の工場”だったといい、彼女はまさかとベンに問いかけます。
ベンはデックス社に勤務していたときの席や、外のスズカケノ木を植樹した日を覚えているなど話し、ジュールズはそのめぐり合わせに驚きました。
ベンはフェイスブックを始めるため奮闘していました。ジュールズは登録の手伝いをしながら、プロフィールの質問を埋めていきます。
「尊敬する人物は」の問いにベンは「ジュールズ」と即答します。ジュールズは苦笑いしますが、ベンは本気でそう思っていました。
長年働いてきた中で初めて知るタイプで触発されたからです。そして、好きな言葉は「正しい行いは迷わず行え」と言います。
他にも共感できる部分があったりと、ジュールズはベンのことを何も知らず、“目ざとい”人物と嫌悪していましたが、彼は“気遣いの人”なのだと気づきます。
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ところが翌朝、ジュールズを迎えに来たのは、ベンと一緒に入社したドリスでした。不慣れで危険な運転で、結局ジュールズが運転する羽目になります。
その理由は彼女がベンを「異動させて」と言ったからです。ジュールズはベンを探して謝罪し、異動を撤回してベッキーの助手として働いてほしいと頼みます。
そのベッキーは9カ月間、必死で業務をこなしているのに何も任されないと嘆きます。無能だと思われ助手をつけるのだと、泣きだしてしまいました。
ベンはベッキーの業務過多を解消するための補佐で、仕事が減ればストレスも減り、友人と過ごす時間も作れると慰めます。
顧客の動向を確認するジュールズ達のところへ、ベンは経営を学んだベッキーのアドバイスで、購買パターンの分析表ができたと報告します。
ジュールズは満足し購買戦略を練ってほしいと依頼すると、ベンは念を押すように、ベッキーに助けてもらったおかげでというと、彼女に「後で褒めておく」と言わせました。
そしてベンは社内でもジュールズの家族たちとも、円滑なコミュニケーションがとれ、満足な仕事も任されていきました。
ペイジの友達マディの誕生会の日、マットが風邪気味ということでベンが代わりに付き添います。
途中でペイジが具合が悪いと戻ってきたため、ベンは帰宅をします。ところが家の前に他の自動車が止まっていて入れません。
しばらくすると、風邪気味だと言っていたマットが家から出てきて、その自動車に乗り込み運転席の女性とキスをして、出かけて行くのを目撃してしまいます。
ペイジが居眠りしはじめたのでベンは、誕生日会が終わるころの時間までドライブして、再び家に戻り寝ているペイジを家に運びました。
マットはベンにCEOの件をどう思うか聞きます。ベンはジュールズは投資家、会社、キミのためを思っていて……彼女の重荷は計りしれないと答えます。
マットはCEOを雇えばジュールズの負担が軽くなり、夫婦のすれ違いも少なくなると考えていました。ベンはCEOに関係なく、彼女には幸せになってほしいと言います。
ベンはサンフランシスコのCEO候補と面談するジュールズに同行しました。前日から様子がおかしいベンは機内でもソワソワし、ジュールズは何か変だと察知します。
それでもベンはマットの件はグッとこらえ、「休日のファーストクラスを楽しもう」とジュールズとのフライト旅行を楽しみました。
ジュールズは未来の上司となるCEOに、不安があることをベンに漏らします。ベンは「君や会社にとって役に立つ人物かどうかで決めればいい」とキッパリ言います。
その言葉にジュールズの迷いは吹っ切れました。はるばる出向いたことを考慮する必要はないのだと、気持ちが楽になっていきました。
ところがその晩、宿泊先で火災報知機の誤作動で退避させられ、ベンがジュールズを部屋まで送ると彼女は緊張して眠れないと、一緒にお茶を飲んで言います。
ジュールズは仕事以外の話がしたいと、ベンの結婚生活や亡くなった奥さんの話を聞きます。ベンは結婚とは“一緒に歳を重ねること”と言います。
そしてジュールズは思いきって「マットが浮気している」と話し始めます。彼女はマットの浮気を18日前に偶然、知ってしまいました。
するとベンも浮気の現場を目撃したと話し始めます。マットの浮気相手はペイジ通う保育園のママ友でした。
ジュールズはマットが自分のために、自分の仕事を犠牲にして家に入ってくれたことに感謝していて、何よりも彼のことを愛して別れたいとは思っていません。
彼と元のさやに戻すことは可能かとベンに相談し、 別れてしまったらもう一生結婚は無理、何よりも独りきりの老後やお墓でも独りきりになるのが怖いと、ジュールズは嘆きます。
ベンはそうなった時は「僕とモリーの墓に入れるスペースがある」とジュールズを慰めると、彼女はどこまでも優しいベンに感謝します。
翌日、CEO候補のタウンゼントに会ったジュールズは、彼を好印象で高評価します。そして、その場でCEOの依頼を打診したとベンに伝えました。
家に帰ったジュールズは出迎えたマットから、CEOはどうだったかと尋ねられます。彼女は即決でCEOをお願いしたと言います。
マットはそれでいいのか聞きますが、ジュールズは「私たちのためよ」と答えます。マットがその真意を聞くとジュールズは「夫婦のため」と言います。
ジュールズはマットに会社を任せられる人ができれば、昔の2人に戻れるのではないか? その努力をしてみないかと告げました。
それでもまだジュールズは悩み、バスタブに浸りながら泣きました。そして、ジュールズの苦悩を目の当たりにしたマットも、どうするべきなのか考えるようになります。
よく眠れぬまま朝を迎えたジュールズは、タクシーでベンの家を訪れます。ベンの家から居候になっているというデイビスと、フィオナが応対に出てきて驚きます。
ジュールズは一晩、考え抜いて決めたと話し出すと、ベンは倉庫まで彼女を連れて行った時のことを話します。
社長自らが従業員に梱包の指導をする、そういう姿勢が事業を成功させた秘訣なのだと、君ほど会社を思う人はいないといいます。
そして、いくら経験豊富な人材がきても、君以上の発想が浮かぶとは思えず、会社にとって君は必要で、浮気ごときで君の作った宝物を譲ってはいけないと続けました。
ベンは背中を押してくれる言葉が欲しくて来たのだと察しました。ジュールズはベンを「最高の友人であり、困った時に頼れる人」と感謝しました。
出勤するとジュールズがクレームを受けた客から、式でピンクのシフォンドレスを着て介添え人をした5人の写真と、メッセージを見せられます。
写真を見たジュールズは、その時の迅速な対応と判断は正しかったと確信します。
さらにタウンゼントから、メッセージカードと花が届けられていました。ジュールズはベンにタウンゼントの電話番号を確認し席に座ります。
するとそこにマットが現れ、自分のためにCEOを雇うのならやめて、自分の心に従ってほしいと訴えました。
彼は“理想の夫と父”になるため焦り、慣れない世界で気の迷いが出てしまったと、ジュールズに「僕にチャンスをくれ」と謝罪します。
涙があふれ出るジュールズは「これからは、ハンカチを持って」というと、マットが彼女を抱きしめると、彼女はタウンゼントを断るつもりだったといいます。
ジュールズはベンに伝えようと席へ行きますが、彼は休暇を取って退社していました。フィオナに心当たりの場所を聞きます。
公園で太極拳のサークルに参加していたベンに、ジュールズは微笑みながら近づきます。ベンが彼女に太極拳を教えていると「いい話が……」と話しかけます。
ベンは「終わったら聞こう」と答えながら穏やかでゆるやかな時間を過ごします。
映画『マイ・インターン』の感想と評価
(C) 2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED
長年勤めた会社を定年退職したベンが、愛する妻と悠々自適なシニアライフをしますが、その妻を亡くし時間を持て余し始め、新たなチャレンジをしながら、若き起業家の頼れるパートナーになる物語です。
70歳の高齢者が、新しい感覚の社風で最新のOA機器に挑戦したり、年配男性には無縁であろうレディースファッションの世界。
そこに飛び込んでいくだけでも、ベンのアクティブさに清々しさを感じましたが、それ以上に「自分もベンのような歳の重ね方をしたい」そう思わせました。
作中でベンは「経験や年齢だけでは新しいものは生みだせない」とジュールズを最大限に称賛し、後押しをする場面など、こういう先輩がいてくれたら……と遠い目になります。
しかし、経験や年齢が全て無駄というわけではなく、TPOを今の若い人に向けどう伝えるか、自分から押し付ける場面はなく、場面ごとでその必要性を教える、そんな大人の指導力を垣間みせました。
ジュールズもまた創設者、経営者という立場にあぐらをかかず、自ら考え自ら動くリーダーシップがありました。
しかしそれが逆に何でも自分でしたがる、自分でやった方が早い……そんな発想では社員は育たない、彼女の姿はそれを伝えています。
リーダーシップは十分なジュールズ、次はコミュニケーション能力という段階で、ベンとの出会いがありました。
自分の足元ばかりを見ていたジュールズが、会社全体を視野に入れながら更に成長させていく、その助けになったのが、チャレンジ精神旺盛のベンです。
昨今では「アバウト・ザ・フィット」のような、オープン&フラットな企業が増えてきていますが、その中でシニア層が絶妙な立ち位置で働く職場がどのくらいあるでしょう?
ある意味、これは理想的な職場です。「アバウト・ザ・フィット」のように若い社員とシニア社員が刺激し合ったり、学び合う平等な関係性がこれからのコミュニティーには、必要不可欠になると考えさせられます。
そして、起業する女性や若年層が増えた時代になり、壁に直面してもベンの格言「正しい行いは迷わず行え」が勇気を与えてくれるでしょう。
まとめ
(C) 2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED
映画『マイ・インターン』はハードボイルドなイメージだった、ロバート・デ・ニーロのお茶目な笑顔と演技で、胸キュン連発の意外性満載の作品です。
また、アン・ハサウェイはこれまで出演してきた作品の役柄に沿って、自分も歳を重ね成長してきたと、インタビューで語っており本作もそのひとつになりました。
そんな彼女が近年の『オーシャンズ8』(2018)、『魔女がいっぱい』(2020)で、ダーク&ワイルドな役を演じ始め、ますます演技の幅を広げています。
そんな“チャレンジ”する2人が共演する、『マイ・インターン』は多くの共感を呼びました。
「正しい行いは迷わず行え」。若い世代には自分の夢に向かって挑戦すること、シニアには新しいことに挑戦する、柔軟な思考を持つ大切さを教えてくれた作品でした。