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『ジョー・ベル 心の旅』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。感動実話おすすめ映画にてマーク・ウォルバーグが孤独な息子のために歩み続ける父親を熱演|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー70

  • Writer :
  • 谷川裕美子

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第70回

深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。

そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第70回は、『ジョー・ベル ~心の旅~』(2021)のご紹介です。

現在のLGBTQムーブメントの一因になった実話をもとに描いた父と子の感動のヒューマンドラマです。

「トランスフォーマー」シリーズのマーク・ウォールバーグを主演に迎え、『ドリームプラン』(2022)のレイナルド・マーカス・グリーン監督が映画化しました。

粗暴だった父親が、ゲイを理由に周囲から偏見を受けて苦しむ息子のために、アメリカを徒歩で横断する長い旅に出ます。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら

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映画『ジョー・ベル ~心の旅~』の作品情報


(C)2021 Bells of La Grande, LLC. All Rights Reserved.

【公開】
2021年(アメリカ映画)

【原題】
Joe Bell

【脚本】
ダイアナ・オサナ、ラリー・マクマートリー

【監督】
レイナルド・マーカス・グリーン

【編集】
マーク・サンガー

【出演】
マーク・ウォールバーグ、リード・ミラー、コニー・ブリットン、ゲイリー・シニーズ、モーガン・リリー、マックスウェル・ジェンキンス

【作品概要】

ブギーナイツ』(1998)「トランスフォーマー」シリーズのマーク・ウォールバーグ主演のヒューマンドラマ。

監督を『ドリームプラン』(2022)のレイナルド・マーカス・グリーンが務めます。

LGBTQムーブメントの一因になった実話をベースに、父と息子がこの世を変えるために歩き続ける姿を描く感動の物語です。

アポロ13』(1995)のゲイリー・シニーズ、リード・ミラー、コニー・ブリットンらが共演。

映画『ジョー・ベル ~心の旅~』のあらすじとネタバレ


(C)2021 Bells of La Grande, LLC. All Rights Reserved.

2013年5月。アイダホ。自分で決めたことだからやりきらないと。そう言ってカートを押しながら歩くジョー・ベルと息子のジェイディン。ジョーは息子のためにアメリカを徒歩横断し、いじめ撲滅を訴えてきました。

高校での講演で、親はありのままの子供の姿を愛することが大切だと語ります。「理解は家庭から」と言った父に、「うちは違ったのに」とジェイディンは言うのでした。

9カ月前のオレゴン州ラグランド。深刻な面持ちでジェイディンは父に話しかけますが、テレビが観たいジョー・ベルは荒々しく対応します。

そんな父に向って、ジェイディンは涙目で自分がゲイであるためにいじめに遭っていることを告白します。自然に解決するというジョーでしたが、妻のローラは「この子には家族の愛が必要」と言います。

妻にうながされ「愛してる」と言うジョー。母は息子を抱きしめますが、ジョーはすぐにテレビの前に行ってしまいます。保守的な町で息子がゲイだと知られることを恐れるジョー。葛藤する彼は息子に冷たくしてしまうものの、心から彼を愛していました。

旅の道中、レストランに入った父子。後ろの男がゲイの悪口を言うのを聞いたジョーは、彼に向かって息子のために多様性の受け入れを訴えていることを話し、カードを置いて店を出ます。

しかしジェイディンは、「カードを置いて逃げるだけではなにも変わらない。偽善者になりたくなきゃ戻って戦えば?」と厳しくつめよります。

以前、恋人のアメフト選手の試合を、チアの一員としてジェイディンは応援していました。彼に向かってからかいや中傷、果てはモノまで投げつけられますが、目の前で見ていたはずの両親は黙って席を立ち、逃げるように去っていきました。

ジェイディンはその時のことを父に責めます。妻から電話が入りましたが、ジョーは妻の話を遮って彼女が酒を飲み過ぎることを強く叱ります。妻は、あなたはこっちのことは何も知らないでしょうと冷たく言うのでした。

ユタ州ソルトレークシティで、ジョーはゲイバーに行って話を聞きます。ある男はゲイに厳しい世を嘆き、このバーが自分たちにとっての教会だと話すのでした。

ドラァグクイーンから息子もつれてくればよかったのにと言われたジョーはこたえます。「息子は死んだ」と。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには映画『ジョー・ベル ~心の旅~』ネタバレ・結末の記載がございます。映画『ジョー・ベル ~心の旅~』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)2021 Bells of La Grande, LLC. All Rights Reserved.

風吹きすさぶ中、そして雪降りしきる嵐ので中も旅を続けるジョーのもとに、妻と息子のジョセフが訪れます。ローラはジョーに、ジェイディンのお墓に置かれたいじめた子からの謝罪の手紙を見せました。いまだ許すことのできないジョーは怒り狂います。

寛大になるために歩いてるんじゃないのか、と問う妻。しかし、ジョーは怒りを抑えられず、ジョセフに当たり散らします。ジョセフは「やめてよ!」と叫び、妻もあきれて離れていきました。

帰り際、妻は、寛容さを求める旅なのに昨夜の態度はどうなのか、と夫を責めます。そして、「もうあなたの怒りに耐える気はない」と言います。そして答えを見つけるまで歩き続けるようにと言います。「家に戻る時はジェイディンが教えてくれるから」と。

その後ジョーはカートを盗まれてしまいながらも、旅を続けます。

ある日妻から、ジェイディンの遺した文章をみつけたと電話が入りました。「彼らは理解してくれない これが僕の人生 周りが僕を憎み 死を望む これ以上は無理だ 思いとどまれない もう終わりにしたい」。

行き場をなくして追い詰められたジェイディンは、自ら命を絶ってしまいました。泣き叫びながら駆けつける母。無気力になったジョーは、夜に銃を手に車に乗りこみますが、すんでのところでジョセフに止められます。

公園でひとり嗚咽したジョーは、その翌日、アメリカを歩いて横断してニューヨークに行くと妻に告げます。ジェイディンが望んでいるから、と言って。

旅が続けられなくなったジョーは、妻に涙ながらに家に帰りたいと言います。家族のためにがんばってほしいとこたえるローラ。ジェイディンは一緒に旅をしていたのに急に消えてしまったことを、彼は妻に話しますす。

途中で善意の男性が寄付してくれたカート一式に力をもらったジョー。道中パトロール中の保安官のウェスティンに出会い、温かい食事をふるまわれます。自分の息子もゲイだとウェスティンは話し、自分が頑固な警察官だったから息子がうちあけられなかったのかと悩んだことを話します。

ジョーは語ります。「ただ息子の死に意味を与えたかった。でも本心では、死の理由を知りたかったんだ。そして俺が一因だと気付いた。息子を孤独にさせた。ジョー・ベルのことばかり考えていた。息子ではなく。」

息子も自殺を考えたかもと気づいたと言うウェスティンに、ジョーは同じ間違いを犯さないでほしいと言います。

道端にいたジョー・ベルの隣にジェイディンがやってきて言います。「僕は理解するまで13年もかかった。嘘をついて生きるのは死んでるも同然だと。父さんは半年で理解した。」

それは違う、本当にすまない、とこたえるジョー。「僕に愛されてなかったと思わないで。父さんの愛も感じてた。何もかもが辛かったけど。心の奥では知ってた。」その言葉を聞いたジョーはそれなら何よりうれしいと言い、互いに「愛してる」と言い合います。

ジョーはローラに電話して言います。「君とジョセフに愛してると伝えたい。きみなしでは俺はどうなっていたか。多くを学んだがいくつかは理解するのに本当に時間がかかった。まだ道のりは長い。ジョセフにも愛してると伝えて。」

2013年10月9日。ウェスティンのもとに、歩行者が轢かれたという連絡が入りました。ドライバーの居眠り運転が原因でした。

投げ出されたカート。横たわっているジョーに向かい、ウェスティンが語り掛けます。ジェイディンが待っている、と。

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映画『ジョー・ベル ~心の旅~』の感想と評価


(C)2021 Bells of La Grande, LLC. All Rights Reserved.

マーク・ウォルバーグが紡ぐ父と子の心の旅

主演を務めるのは名優マーク・ウォルバーグです。『ブギー・ナイツ』で初主演を果たして高く評価され、『ディパーテッド』や「トランスフォーマー」シリーズで活躍してきました。徹底した肉体改造を行うストイックな俳優としても知られています。

本作では、ゲイの息子を失った後に、彼を苦しめた偏見をなくすための過酷な長い旅に出た父ジョー・ベルを演じています。

ジョー・ベルは昔ながらの男らしさを持つ、粗暴で横柄な、そして家族に威圧的な父でした。

彼の長男のジェイディンは父とは対照的に、繊細な心の持ち主でした。彼は意を決して父に自分がゲイであることをカミングアウトしますが、父は事実を正面から受け止めきれず、様子を見ようといってその場を逃げてしまいます。

その後ひどいいじめに遭い、周囲からも理解してもらえず逃げ場を失ったジェイディンは、最悪の選択をするのでした。

父であるジョー・ベルは、息子を苦しめた偏見やいじめをなくすための運動をしながら、自分の足だけでニューヨークまで徒歩で横断するという過酷な道をスタートさせます。

旅の前半、ジョーはジェイディンとふたりで旅をしていました。しかし、ジョーが「息子は死んだ」と言葉に出した晩から、ジェイディンは姿を消してしまいます。

後半に出会った保安官に向かって、ジョーは言います。息子の死の理由を知りたかったから旅を始めたのだと。そして、自分が彼を孤独にさせてしまったことが一因だったと気づいたと。

本当は旅の初めからジョーはそれらの事実に気づいていました。旅の途中でジェイディンは言います。

「理解は家庭から、と父さんは言うけれどうちは違ったじゃないか。」

「レストランでゲイ差別を言う男にカードを渡して逃げるだけでは何も解決しない。戻って戦え。」

それらの耳痛い言葉は、実際はジョーが自分自身に向けて放った言葉でした。

自分がどこで何を間違えてしまったのか、ジョーには本当は痛いほどわかっていたのです。

「ジェイディンは悪くない」とわかっていながらも、わが身かわいさから息子のすべてを受け入れてやることができなかったジョー。それこそが、息子に自死を選ばせてしまった一番の理由と気づきます。

この旅はいじめ撲滅が一番の目的ではなく、ジェイディンへの鎮魂と、彼が自分の罪に向き合い真実を理解するための旅ったのです。

孤独という恐怖


(C)2021 Bells of La Grande, LLC. All Rights Reserved.

ジェイディンに命を絶たせたものはなんだったのか。それがこの作品の大きなテーマとなっています。

ひどいいじめ、中傷、偏見、暴力。それらすべてが合わさって彼を絶望に追いやったということは明白な事実です。

しかし、彼が最期の選択をしてしまった本当の理由は、ジョー・ベルが最後にたどりついた答えが正解だったように思えます。

ジェイディンは孤独だったから死んでしまったのです。

初めて父にジェイディンがゲイを告白した日に、ローラは言います。「この子には家族の愛が必要」だと。何が一番大切なのかわかってた母。

しかし、悲しいことに、ジェイディンの生前、ローラはジョーに逆らうことができませんでした。

家の前庭でチアの練習をする息子を追い出す夫を止められず、試合でチアをがんばる息子が心無い中傷を目の前で受けていても、夫とともに席を立って逃げ去ってしまいます。

ジェイディンにとっては、自分に向かって一歩踏み込んで、抱きしめて守ってくれる存在が必要でした。

しかし、保守的な両親は世間体と息子への愛情の板挟みになって動けず、カウンセラーも親友も本当に必要な時に手を差し伸べてはくれませんでした。

彼は強烈な孤独感に堪え切れずに、この世から逃げ出したのです。

誰かひとりでも、自分の力になってくれると信じられる人がいること。人間が生きていけるかどうかは、その一点にかかっているということに改めて気づかされます。

まとめ


(C)2021 Bells of La Grande, LLC. All Rights Reserved.

名優マーク・ウォルバーグが愛する我が子の死をめぐり、鎮魂と再生の旅に出る感動のドラマ『ジョー・ベル ~心の旅~』。

父と子の愛情という面だけにとどまらず、人間の尊厳、生きるために必要なこととは何かなど、普遍的な問題に対しても正面から向き合っています。

ラストのジョー・ベルの姿も含めて、人が幸せに生きるということに対して深く考えさせられる作品です。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら



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