Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2018/12/13
Update

映画『ある女流作家の罪と罰』あらすじネタバレと感想。リー・イスラエルの自伝を映画化

  • Writer :
  • こたきもえか

2018年も終わりに近づき、そろそろ来年度のアカデミー賞の動向が気になる季節となりました。

今回ご紹介するのはアカデミー賞前哨戦とも言われる放送映画批評家協会のアワードにノミネートされている注目の作品、『ある女流作家の罪と罰』です。

スポンサーリンク

映画『ある女流作家の罪と罰』の作品情報

【公開】
2018年 アメリカ映画

【原題】
an You Ever Forgive Me?

【監督】
マリエル・ミラー

【キャスト】
メリッサ・マッカーシー、リチャード・E・グラント、ドリー・ウェルズ、ジェーン・カーティン、アンナ・ディーヴァー・スミス、スティーヴン・スピネラ、ベン・ファルコーン、シェー・ドリン、マイケル・シリル・クレイトン、ケヴィン・キャロラン、マーク・エヴァン・ジャクソン、ティム・カミングス、クリスチャン・ナヴァロ、ジョアンナ・P・アドラー

【作品概要】
実在の女性ライター、リー・イスラエルの自伝を元にした作品を映画化。

主演を務めるのは『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』(2011)で ニューヨーク映画批評家オンライン賞助演女優賞を始め数々の映画祭で賞を受賞、近年では『ゴースト・バスターズ』(2016)が記憶に新しい女優メリッサ・マッカーシー。

主人公の友人男性役に扮するのは『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』(2016)や『LOGAN/ローガン』(2017)に出演、また2019年公開『スター・ウォーズ エピソード9』への出演が決まっているリチャード・E・グラント。

グラントは本作で既にニューヨーク映画批評家協会賞、サンディエゴ映画批評家協会賞で助演男優賞を受賞しています。

映画『ある女流作家の罪と罰』のあらすじとネタバレ

女優キャサリン・ヘプバーンやタルラー・バンクヘッドを取材し伝記本を書き、作家としての地位を得ていたリー・イスラエル。

しかしイスラエルは1983年、化粧品ブランド“エスティ・ローダー”の創立者エスティ・ローダーと伝記本をめぐって衝突します。

イスラエルはエスティ・ローダーの伝記の出版に踏み切りますがエスティ・ローダー側は妨害できないとわかると出版に合わせて自伝を出版。

イスラエルの伝記は批評家から酷評され、商業的にも失敗しました。

現在イスラエルは作家としてのスランプ、アルコール中毒、そして財政難に悩まされています。

文学者の友人マージョリーのパーティーに赴きビジネスの仕事をしようとするも嫌がられ、トイレットペーパーや他人のコートを代わりに着て帰るイスラエル。

飼っている猫は具合が悪そうですが診察料金を払うこともできず、家賃も滞納しています。

彼女は現金を手に入れるため、自宅の本を売りに古本屋に行きますが、店員は彼女に失礼な態度をとり、たった2冊しか買い取ろうとしません。

彼女がリー・イスラエルだと名乗るとその店員は、彼女の伝記本が安売りされていることを嫌味に告げ、怒ったイスラエルは店を飛び出しました。

途方にくれバーで飲んでいると、イスラエルは刑期を終え出所したばかりの旧友ジャック・ホックに再会しました。

彼女は最近のこと、今日本屋であった散々な出来事をホックに語ります。

久々に再会を喜び、イスラエルは彼女の家のほんの数ブロック先に住んでいるという、ホックを見送って別れました。

家で昔、伝記を書いたキャサリン・ヘプバーンからの手紙を見返すイスラエル。

彼女は生活の足しにするべくその手紙を売ることにしました。

本屋の店員アンナはイスラエルに彼女の伝記本を読んでいると伝えますが、前の本屋の男性店員のように失礼な態度をとりませんでした。

図書館でイスラエルは女優ファニー・ブライスについて調べています。

彼女は再びアンナの店に戻り、彼女のいとこが手紙のコレクターと嘘をつきファニー・ブライスの手紙を売りますが、内容があまり印象的でないため、少しの額しか受け取ることができませんでした。

本屋を出た後イスラエルは、マージョリーのオフィスへ行き、今ファニー・ブライスの伝記を執筆中であることを伝え、1万ドルを請求します。

マージョリーは、イスラエルの本の一冊がベストセラーであることは認めますが、なぜ現在彼女にお金を払うことができないかを説明します。

まずイスラエルは世間から良いイメージを持たれておらず、書いている本は他の人々の伝記本のため、彼女自身は知られていないこと。

他の作家は本の宣伝のために、記者会見を開くが彼女はそれをしないこと。

そして、誰もファニー・ブライスの伝記など読みたがらないこと。

マージョリーはイスラエルは他の方法を使って生計を立てることを示唆しました。

イスラエルは自宅へ戻り、机に向かってタイプライターを叩きますが、「私は今私のタイプライターを使っている」以外に書くことは思いつきませんでした。

以下、『Can You Ever Forgive me?』ネタバレ・結末の記載がございます。『Can You Ever Forgive me?』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

スポンサーリンク

イスラエルは有名人の手紙を捏造し売り続け、それによって得たお金で猫を無事病院に連れて行くことができ、滞納していた家賃も支払いました。

イスラエルは友人ホックに現在している詐欺活動を報告します。

ホックはさほど気にせず笑って彼女を受け止めました。

いつも一人部屋で孤独な時間を過ごしているイスラエルは、友人とのひと時を楽しみます。

2人はイスラエルのアパートに戻り、彼女は部屋にハエの死骸や猫の糞が落ちていることを恥じますが、ホックは清掃を手伝ってくれました。どこに住んでいるか聞いても毎回異なる住所を言うホック。

イスラエルは彼の居場所がどこにもないことを理解し、自分の家のリビングで眠ることを勧めます。

イスラエルは過去に書かれた文章に見せるため古い形のタイプライターを購入、作家の研究を重ねて捏造詐欺に熱中します。

本屋の店員アンナに再び売りに行くと、アンナはイスラエルを誘い2人はディナーにでかけました。

2人は各々の話をし、アンナはイスラエルにとても親切に接します。

イスラエルは、アンナが自分に好意を寄せていることを感じ取りますが、ロマンチックな空気をかき消すように別れます。

しかしイスラエルがイギリスの俳優ノエル・カワードが男性の恋人に宛てた捏造し手紙を売った後、それが偽物ではないかと疑いをかけられます。

コレクションの店を営む男性から、もうニューヨークの誰も彼女からは手紙を買わないと宣告されるイスラエル。

FBIも動き出し、ニューヨークの書店中にイスラエルから手紙を買わぬよう通達を出しました。

そんな最中家に帰ったイスラエルは彼女の猫が冷たくなっているのを発見。

取り乱したイスラエルは家にいたホックと、同性の恋人を追い出しました。

その後彼女に協力し続けていたホックは逮捕され、イスラエル自身も捕まり5年間の保護観察を言い渡されました。

年月が過ぎ、彼女は再びバーでホックと再会します。

ホックはエイズに蝕まれていました。イスラエルは自分が起こした詐欺について文章を書きたい、ホックのことも書きたいという旨を彼に伝え、ふたりは微笑みあうのでした。

スポンサーリンク

映画『ある女流作家の罪と罰』の感想と評価

2014年に亡くなったリー・イスラエルに捧げられている『Can You Ever Forgive me?』。

1990年代初頭のニューヨークを舞台に、女性ライターのリー・イスラエルが詐欺を働くようになった経緯をブラックユーモアを交えて綴られています

かつてはセレブたちの伝記を書き売れっ子ライターとして活躍していたイスラエル。

しかし今では極貧の生活にあり、家賃も払えず、綺麗とは言えない家に住み、パーティーでは備品を持ち帰るにとどまらず他の人のコートを盗んで帰ってしまうほどになります。

そんな彼女は生計を立てるために、他人の手紙を捏造して売りさばくようになります。

作家であるイスラエルはその文章を“自分の創作物”のように感じているため、さほど罪悪感を抱いていません

もちろん悪事は明るみに出て、罰を受けることになります。

本作では作家の葛藤がありのままに描かれています。

書きたいけれど、自分の文章を書くことができない。人が望むものを、自分の言葉では書くことができない。それでも捨てられない“書きたい”という葛藤。

現代はイデオロギーや社会問題に関する様々な意見、映画や文学作品に対する批評や考察をニュースやSNSで手に取ることが容易な時代です。

私たちが発信している言葉は果たして、自分の個人的経験、主観的な意見から生まれたものなのか、それともイデオロギーに反映させて語っている誰かから借りた”意見なのか

映画『Can You Ever Forgive me?』は、ある女性作家の詐欺事件の物語とともに、そのような問題提起をしていると言えます。

ニューヨークの街角で詐欺を働いた落ち目の女性ライターと、彼女に協力する同性愛者の男性の友人

彼も居場所がない、陽のあたらない場所に住む人物です。

彼女に何も言わずそばで寄り添っていたジャック・ホックにイスラエルは終盤辛くあたってしまいます。

しかしイスラエルは、お金を得ることより、作家として地位を得ることより、そばで寄り添う人がいることの尊さに気づかされるのです。

『ある女流作家の罪と罰』は冷え切った手をそっと誰かが握ってくれる、孤独に耐えきれない夜に誰かが「おやすみ」と言ってくれるような暖かさが染み込んだ物語であり、またある個人的な出来事を経験した時に初めて“自分だけの”物語を紡ぐことができるという、ものを書く人間の背中を押す作品であると言えます。

まとめ

新たな領域に挑戦するメリッサ・マッカーシー、リチャード・E・グラントの渋く暖かい演技が魅力でもある『Can You Ever Forgive me?』。

ニューヨークで肩を寄せ合う孤独な彼らの犯罪と奔走を茶目っ気を交えて描いた本作は、夢を追うことで生じる切なさと人間の繋がりの愛おしさが少しずつ観る人の心に優しく沁み込んでいくような作品です。

日本公開された際には、ぜひ劇場でご覧ください。

関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『天外者』ネタバレあらすじ感想と評価レビュー。キャスト三浦春馬のラスト主演作とは⁈

三浦春馬が五代友厚に扮する『天外者』は2020年12月11日(金)全国ロードショー。 映画『天外者』は、故三浦春馬の主演作として最後の作品となる映画です。近代日本経済の基礎を構築し希代の“天外者(てん …

ヒューマンドラマ映画

映画『ヒトラーと戦った22日間』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も

1943年に、ナチスの収容所ソビボルで実際に起きた反乱を描く映画『ヒトラーと戦った22日間』は、2018年9月8日より全国公開中。 歴史上あまり語られる事がない、命がけの脱出計画に挑んだ人々を描く、本 …

ヒューマンドラマ映画

映画『空に住む』あらすじネタバレと感想内容。三代目JSB主題歌の世界観を多部未華子×岩田剛典で描く

映画『空に住む』は、2020年10月23日(金)からロードショー 映画『空に住む』は、『EUREKA ユリイカ』の青山真治監督が7年ぶりに長編映画を制作し、多部未華子と初タッグを組んだ人間ドラマです。 …

ヒューマンドラマ映画

映画『酔うと化け物になる父がつらい』あらすじと感想レビュー。結末必見の実録エッセイを映像化

映画『酔うと化け物になる父がつらい』は2020年3月6日(金)より新宿武蔵野館ほか全国ロードショー。 2020年3月6日公開の『酔うと化け物になる父がつらい』は、同名のコミックエッセイの映画化作品です …

ヒューマンドラマ映画

映画『さざなみ』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

2016年4月公開されて、前期公開作品の中では、断トツの話題をさらっていった、『さざなみ』に注目します! 当初の予想を超えた観客からの話題ぶりに、映画を配給された彩プロの関係者も笑顔。また、彩プロの担 …

U-NEXT
架空映画館 by ReallyLikeFilms Online
【Cinemarche】今週のおすすめ映画情報
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
凱里(かいり)ブルース|2020年6月6日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかにて全国順次ロードショー予定!
映画『異端の鳥』2020年10月9日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開
映画『朝が来る』2020年10月23日(金)より全国公開
ドラマ『そして、ユリコは一人になった』
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学