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映画『ビューティフル・ボーイ』ネタバレと感想。ティモシー・シャラメが朗読する詩が胸に迫る

  • Writer :
  • 西川ちょり

すべてを超えて愛している

『君の名前で僕を呼んで』で大反響を巻き起こしたティモシー・シャラメがドラッグ依存で堕ちていく少年を演じた映画『ビューティフル・ボーイ』。

ドラッグ依存で苦しむ息子と、そんな彼をなんとか更生させようと願う父の愛を描いた実話を原作にした家族の物語です。

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映画『ビューティフル・ボーイ』の作品情報


(C)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC.

【公開】
2019年公開(アメリカ映画)

【原題】
Beautiful Boy

【監督】
フェリックス・バン・ヒュルーニンゲン

【原作】
ニック・シェフ『Tweak』、デヴィッド・シェフ『Beautiful Boy』

【キャスト】
スティーヴ・カレル、ティモシー・シャラメ、モーラ・ティアニー、エイミー・ライアン、ケイトリン・デバー、ティモシー・ハットン

【作品概要】
息子ニックのドラッグ依存の経験を父親のデヴィッド・シェフと本人のニック・シェルがそれぞれの視点から描いた二冊の回顧録を映画化。父親をスティーヴ・カレル、息子をティモシー・シャラメが演じた。ベルギー出身のフェリックス・バン・ヒュルーニンゲンが監督を務め、『ムーンライト』、『それでも夜は明ける』を手がけたプランBエンターテインメントが製作を担当。

映画『ビューティフル・ボーイ』のあらすじとネタバレ


(C)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC.

フリーの音楽ライターをしているデヴィッド・シェフはカウンセリングの医師に向かって語り始めました。

「息子のことは知り尽くしていたはずなのに、彼を観ていると思うのです。この子は誰なんだろう?と。あらゆるドラッグをやり、今は最悪のクリスタル・メス依存に陥っている」

デヴィッドは医師に2点お聞きしたいと続けました。「息子の身に何が? 助ける方法は?」

一年前。

息子のニックがもう二日も家に帰ってこないのを心配したデヴィッドは、何か事故にでも巻き込まれていないかと病院に電話を入れますが、そのような方はうちには見当たりませんという返事が返ってくるだけでした。

今はLAに住んでいる別れた妻に電話を入れますが、そこにもニックはおらず、ささいなことから口論となってしまいます。

デヴィッドは、今はカレンという画家の女性と再婚し、ジャスパーとディジーという子宝にも恵まれていました。

ニックはカレンとも弟たちともうまくやっていて幸せ一杯の家族だとデヴィッドは思っていたのです。

ようやくニックが戻ってきますが、その様子を見てデヴィッドは即座に彼を医者につれていきました。

「まだ体の中に大量のドラッグが残っています。至急治療すべきです」と医師はいい、デヴィッドはニックを更生施設に預けることにします。

ある日、施設から電話がかかってきます。ニックが施設を出て戻ってこないというのです。「再発は回復への過程」という施設側の言葉に反発するデヴィッド。

施設側は、施設外に出てしまったら管轄外だと事務的に伝え、デヴィッドは車で市内を回り、必死でニックを探し始めました。

雨の中、濡れそぼったニックを見つけたデヴィッドは彼を抱きしめ、家に連れて帰りました。

ニックは自慢の息子でした。成績もスポーツも優秀で、父と息子は共にサーフィンをし、共に音楽を聴き、固い絆で結ばれていたはずでした。

お父さんも大麻を吸ったことはあるでしょう?と無邪気に問いながら、ほんのちょっとした息抜きと大麻を吸う息子にドラッグに手を出してはいけないと伝えたものの、まさかこんなふうに溺れてしまうとは思ってもいませんでした。

ニックはドラッグを絶ち、大学に行きたいと言い出しました。それは嬉しい言葉でしたが、デヴィッドは不安でもありました。

しばらくは順調に大学生活を送っていたニックでしたが、またもやドラッグに手を出してしまいます。デヴィッドは苦しむニックを抱きしめ、ニックは涙を流しました。

デヴィッドはニックをL.A.の母の元にやりました。ニックはそこで厚生施設に通い、一年以上ドラッグを絶ち続けました。

しかし大学時代のガールフレンドと再会したことから、またもやドラッグの誘惑に負けてしまいます。

元妻からニックがいなくなったという連絡を受け苛立つデヴィッド。ニックを探しにL.A.に飛ぼうとする彼をカレンがL.Aにいるとは限らない、落ち着くようにと諌めます。

何度も何度もニックを抱きしめ、愛を伝え、彼を救おうとするのに、それをすり抜けるようにニックはドラッグに溺れて行くのです。

ある日、ジャスパーが参加する水泳大会を見に、一家が出かけた日、ニックとガールフレンドは留守の家に忍び込み、金目のものはないかと家を物色し始めました。

たいしたものを見つけられないうちに、家族が帰ってきたことに気づき、二人は逃げ出しますが、それをジャスパーが見ていました。「ニックがいた」

車が動き出したのを見たカレンは自分の車に乗って、あとを追います。しかし、ニックは必死で逃げ、途中でカレンは追うのを諦め、がっくりと肩を落としました。

逃げ延びたニックでしたが、車内でドラッグをきめた時、ガールフレンドが過剰摂取で息が止まってしまいます。

救急車を呼び、心臓蘇生を繰り返すと、ガールフレンドは息を吹き返しました。しかし、到着した救急車は治療が必要と彼女を救急車に乗せて走り去りました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ビューティフル・ボーイ』ネタバレ・結末の記載がございます。『ビューティフル・ボーイ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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一人になったニックは父親に電話し、更生施設では僕は直せない、僕が更生できる場所は家しかないとわかった、帰ってもいいかなと問いかけます。

しかし父は「そうはいかない」と答え、ニックを驚かせます。「救ってやりたいが、私にはできない。お前が自分自身で人生を取り返すのだ」父はあえてニックを突き放しました。

デヴィッドとカレンは、ドラッグから抜け出せない子を持つ親の会に出席していました。

一人の黒人女性が語り始めました。可愛くて優しかった娘はドラッグに溺れ、ついには命を落としてしまったそうです。「彼女が生きていたときから私はもう何年も喪に服していたのです。生者の喪に服すのはつらいことです」

その頃、ニックは食堂のトイレで麻薬を打ち、床に転がり目を閉じていました。

元妻からの報せでL.A.の病院に駆けつけたデヴィッド。あれほど薬物を打って生きているのは奇跡だと医師が言っていたそうです。

互いに肩に腕を回し、廊下を歩いてくるニックとデヴィッド。二人は椅子に並んで腰掛けました。ニックはずっと泣いており、デヴィッドは彼をしっかり抱きしめるのでした。

(その後8年、多くの人の支えのもと、ニックはドラッグに手を出さずに生活していることを字幕が伝えます)

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映画『ビューティフル・ボーイ』の感想と評価


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本作は、Netflixのドラマ『13の理由』の脚本家として活躍するニック・シェフの手記と、その父親のデヴィッドが経験を綴った回顧録が原作となっています。

ドラッグ依存症に苦しむ青年とその父親というそれぞれの立場から書かれた2つの本が一本の映画として制作されており、当事者の苦しみと、その苦しみをなんとか取り除いて立ち直らせたいと考える親の苦しみの両方が描かれています。

そうした膨大な原作があると説明過多になってしまいそうですが、フェリックス・バン・ヒュルーニンゲン監督は登場人物の行動を丁寧に描くことで彼らの関係を表現していきます。

例えば、デヴィッドと元妻がなぜ離婚をしたのかということには一切触れず、二人が些細なやり取りで衝突する様を見せて、彼らが絶望的にうまくいかない関係であることを観客に読みとらせるのです。

その手法はデヴィッドとニックに関しても同様で、彼らの現在の姿やまだ幼かった頃のニックと父親の良好な関係を詳細に描きながら、「いったいなぜ?」という問いを観客になげかけてきます。

本作はドラッグ依存症の苦しみを描くという非常に重要なテーマを持っていますが、映画の本質は、家族の関係にあり、焦点もそこに当てられています。

子供が薬物に依存というと、家庭の問題や親子の不和を連想しがちですが、この一家には目に見える問題があったわけではなく、寧ろ、親子関係はうまくいっており、愛情も信頼関係も築かれていました。

この映画は観る人の年齢により、ニックの立場にたったり、父親の立場にたったりと、違った見方が出来る作品ですが、どちらかと言うと親の立場寄りに描かれています。

二十歳前後の我が子に対する親の接し方はとても難しく、過干渉であってはいけないし、かといって、もう大人だと安心してしまえるわけでもありません。

つかず、離れず、見守るしかない中で、子供がドロップアウトし始めた時、親はどのように対処したらいいのでしょうか。

間違いはなかったはずなのに、うまくいっていたのに。そうした親の戸惑いが身にしみて感じられるのです。

なんとか立ち直らせて、幸せな人生を歩んでほしいと思う父親の気持ちを充分理解しながら、それでも同じ過ちを繰り返してしまう息子。

当初、施設が語った「再発は回復への過程」という言葉に反発していたデヴィッドですが、それを受け入れ、時に愛情故に突き放しながら、ボロボロの姿の息子を何度も何度も抱きしめる姿が心を打ちます。

ドラッグ依存症でなくとも社会にうまく適応できなかったり、人生につまずいて不安にさいなまれるといった事柄は、皆が多かれ少なかれ抱えているものです。

子供がそんな立場に立たされた時、親は何をしてやれるのか、非常に普遍的で身にしみる作品となっています。

まとめ


(C)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC.

ニックを演じているのは、『君の名前で僕を呼んで』(2013/ルカ・グァダニーノ)で、一躍スターとして大旋風を巻き起こしたティモシー・シャラメです。

映画のタイトルである“ビューティフル・ボーイ”とはジョン・レノンとオノ・ヨーコが1980年に発表した、彼らの最後のアルバム『ダブル・ファンタジー』の収録曲からとられたもので、作中でも歌われ、流れます

それとは別にティモシー・シャラメほど“ビューティフル・ボーイ”という言葉が相応しい俳優もいないのではないでしょうか。

だからこそ余計にボロボロになって苦しむ彼の姿が痛ましく、“ビューティフル・ボーイ”の頃を取り戻させたいと願う父親の心理に説得力が生まれてくるのです。

ティモシー・シャラメは、本作品で第76回ゴールデン・グローブ賞助演男優賞、第72回英国アカデミー賞助演男優賞にノミネートされるなど、多くの国際映画祭で高い評価を受けました。

父親を演じるスティーヴ・カレルは、ゲイの活動家を演じた『ハンズ・オブ・ラブ 手のひらの勇気』(2015)や、元プロテニスプレーヤーを演じた『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(2017)など、最近富に演技の幅に広がりを見せてきていますが、今回はベストアクトと呼びたくなるほどの素晴らしさです。

彼の姿は子に愛情を持つすべての親を代弁しているといっても過言ではありません


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劇的な展開があるわけでも、完全な復活が描かれるわけでもなく、ハリウッド的なカタルシスがもたらされることはないのですが、彼らが演じることで作品はより普遍的で、より身近な問題として、観るものに迫ってくるのです。

父親が著名な音楽ライターということもあり、劇中では「ビューティフル・ボーイ」の他にも、ニルヴァーナの「テリトリアル・ビッシングス」、ニール・ヤングの「ハート・オブ・ゴールド」、クラシック音楽まで多種多様な音楽が効果的に使われています。

息子の机にはF・スコット・フィッツジェラルドの『美しく呪われた人たち』が置かれています。彼の机の回りに飾られたレコードジャケットの顔ぶれも、彼の人となりを表す重要な要素の一つとして興味深いものになっています。

そんな中、ティモシー・シャラメが朗読するチャールズ・ブコウスキーの詩が胸に迫ります。エンドロールが流れ出しても最後まで席を立たないことをおすすめします。

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