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Entry 2020/10/17
Update

シン・ゴジラ以前に描かれた政治家たちを考察解説。歴代シリーズの大臣たちが緊急事態に立ち向かう姿を分析する|邦画特撮大全75

  • Writer :
  • 森谷秀

連載コラム「邦画特撮大全」第75章

今回の邦画特撮大全はゴジラシリーズに登場した歴代の内閣総理大臣を紹介します。

先日2020年8月28日、安倍晋三内閣総理大臣が体調不良を理由にその職を辞任。同年9月14日に執行された自民党総裁選挙で、第2次安倍政権で内閣官房長官を務めた菅義偉議員が党総裁に選出され、第99代内閣総理大臣に就任しました。

ではゴジラシリーズに登場した内閣総理大臣たちはどのように描かれてきたのでしょうか。

映画ファンの記憶に新しい所では『シン・ゴジラ』(2016)に登場した、大杉漣演じる大河内総理、平泉成演じる里見臨時総理の2人がいると思います。今回『シン・ゴジラ』以前にゴジラシリーズに登場した内閣総理大臣を振り返っていきましょう。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

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米ソ両国にも毅然な態度・三田村清輝総理:『ゴジラ(1984)』

ゴジラシリーズに初めて総理大臣が登場した作品が、1984年に公開された『ゴジラ』。本作は『日本沈没』(1973)以降の東宝パニック特撮映画の流れを汲む作品で、竹内均や田原総一朗など、各分野の専門家を招きリアリティを重視した怪獣映画となっています。

本作に登場したのが、小林桂樹演じる三田村清輝総理です。当初、三田村総理はパニックを避けるため、ゴジラの存在を国民には伏せていましたが、ソ連の原子力潜水艦がゴジラに撃沈され、米ソの緊張状態が高まったためゴジラの情報を解禁します。

ゴジラに対して戦術核兵器使用を強硬に迫る米ソの特使に対しては、非核三原則の遵守を盾にこれを拒否します。

最終的に三田村総理は、「もしあなたがたの国に、アメリカとソ連にゴジラが現れたら、その時あなた方は首都ワシントンやモスクワでためらわずに核兵器を使える勇気がありますか」と米ソ両国の首脳を説得。毅然な態度を見せました。

『ゴジラ(1984)』の作品情報

(C)1984 TOHO CO., LTD.

【公開】
1984年(日本映画)

【監督】
橋本幸治

【特技監督】
中野昭慶

【脚本】
永原秀一

【出演】
小林桂樹、田中健、沢口靖子、宅麻伸、村井國夫、小泉博、小沢栄太郎、内藤武敏、金子信雄、加藤武、鈴木瑞穂、織本順吉、御木本伸介、佐藤慶、江本孟紀、森本毅郎、石坂浩二、武田鉄矢、夏木陽介

贅沢なキャスティング・山村聰演じる林田首相:『ゴジラVSキングギドラ』

84年版『ゴジラ』の続編『ゴジラVSビオランテ』(1989)に総理大臣は登場しませんでしたが、久我美子演じる内閣官房長官・大和田圭子が登場しました。

これは久我美子が「ゴジラ」シリーズの常連俳優だった平田昭彦の夫人であったこと、公開当時の内閣官房長官が女性初の森山眞弓・元議員であったことが反映されたキャスティングです。

「ゴジラ」シリーズに総理大臣が登場したのは、続く『ゴジラVSキングギドラ』(1991)です。本作に登場したのが山村聰演じる林田首相。名優・山村聰が演じた林田首相ですが、登場場面は少なく劇中ではほとんど活躍しません。

未来人から「ゴジラによる核汚染で日本が死滅する」と聞かされ、タイムスリップしてゴジラを抹殺するという彼らの計画に乗ります。

しかし未来人の本来の目的はゴジラの代りに怪獣キングギドラを誕生させ日本を破壊することでした。それを知った林田首相は怒りを露わにします。

林田首相の登場場面はわずか2シーンほど。山村聰は過去に『世界大戦争』(1961)の病に冒されながらも全世界に核兵器の不使用を訴え続けた総理大臣や、『ノストラダムスの大予言』(1974)のラストで名演説をする総理大臣を演じていたこともあり、本作でも何かしらの活躍を見せて欲しかったというのが筆者の正直な感想です。

『ゴジラVSキングギドラ』の作品情報


(C)1991 TOHO CO., LTD.

【公開】
1991年(日本映画)

【脚本・監督】
大森一樹

【特技監督】
川北紘一

【出演】
中川安奈、豊原功補、小高恵美、原田貴和子、佐々木勝彦、チャック・ウィルソン、小林昭二、上田耕一、矢追純一、ケント・ギルバート、ダニエル・カール、佐原健二、黒部進、風見しんご、時任三郎、西岡徳馬、山村聰、土屋嘉男

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女性総理の登場:『ゴジラ×メカゴジラ』

現実の日本では、いまだ女性の内閣総理大臣は存在していません。しかしゴジラシリーズには既に女性の総理大臣が登場していました。それが『ゴジラ×メカゴジラ』で水野久美が演じた柘植真智子総理です。

柘植総理は二度目のゴジラの襲撃を受けた1999年当時の総理大臣。ゴジラの脅威から日本を守るため、対G特殊兵器開発特別法案を可決させます。

対G兵器によるさまざまな問題に対しても、自身が世界各国へ赴き説得すると公言し毅然な態度を見せました。後述する五十嵐総理に後継を譲り2003年には退官しています。

脚本段階の柘植総理は男性だったようですが、水野久美の出演にあたり急遽女性に変更されました。本作の序盤では柘植総理の口から、1954年のオキシジェンデストロイヤーによるゴジラ撃退、東京へ飛来したモスラ、1966年のガイラとの戦いと、それに伴う兵器開発と“特生自衛隊”の誕生の歴史が語られます。

ゴジラシリーズをはじめとする東宝特撮映画に数多く出演した水野久美によって、作中の日本と怪獣の歴史が語られる様は非常に説得力があるもので、このキャスティングは見事という他ないでしょう。

『ゴジラ×メカゴジラ』の作品情報


(C)2002 TOHO CO., LTD.

【公開】
2002年(日本映画)

【監督】
手塚昌明

【脚本】
三村渉

【特殊技術】
菊地雄一

【出演】
釈由美子、宅麻伸、高杉亘、友井雄亮、中原丈雄、加納幸和、小野寺華那、上田耕一、白井晃、六平直政、萩尾みどり、水野純一、森末慎二、永島敏行、田中美里、谷原章介、吹越満、村田雄浩、柳沢慎吾、藤山直美、中村嘉葎雄、松井秀喜、水野久美、中尾彬

強い責任感のある五十嵐隼人総理:『ゴジラ×メカゴジラ』他

『ゴジラ×メカゴジラ』で前述した柘植真智子総理の後継となったのが、中尾彬演じる五十嵐隼人総理です。元々は科学技術庁長官で、対G兵器“3式機龍”(メカゴジラ)の開発プロジェクトを指揮していました。

しかし初戦で暴走した機龍は八景島周辺を全壊させてしまい、五十嵐総理はプロジェクトを推進させた自身の責任を強く感じていました。

暴走の危険性からゴジラの品川上陸の際には機龍を待機させていましたが、機龍隊隊長の富樫からの直談判を受け「全責任は私が取る」と機龍の出撃を決意します。

次作『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』でも五十嵐総理は現職。インファント島の小美人の警告を受けた中條博士の機龍凍結案を真摯に受け止めるも、モスラがかつて東京を破壊した怪獣であること、ゴジラへの対抗手段が機龍以外にないことから、態度を保留します。

しかし死期が迫りながらもゴジラに挑むモスラの勇姿を見て、「この戦いをゴジラとの最終決戦とする」と機龍の出撃を決意します。五十嵐総理は元々ゴジラ駆逐後、機龍を廃棄するつもりでいました。

柘植前総理から「今こそ強いリーダーシップが求められています」という言葉を受けて就任した五十嵐総理。

劇中ではその言葉に違わぬ、強い責任感とリーダーシップを発揮した活躍を見せてくれました。

『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』の作品情報


(C)2003 TOHO CO., LTD.

【公開】
2003年(日本映画)

【監督】
手塚昌明

【脚本】
横谷昌宏、手塚昌明

【特殊技術】
浅田英一

【出演】
金子昇、吉岡美穂、虎牙光揮、高杉亘、益岡徹、中原丈雄、長澤まさみ、大塚ちひろ、上田耕一、清水紘治、升毅、六平直政、友井雄亮、釈由美子、水野純一、峰岸徹、飯星景子、渡辺典子、小泉博、中尾彬

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まとめ

戦後の日本映画界に「怪獣映画」という新ジャンルを築いた、1954年に誕生する記念すべき第1作となる映画『ゴジラ』。監督は本多猪四郎、特技監督は円谷英二のコンビで描いたリアリズム溢れる政治家たちの姿と、特撮演出が絶妙な作品でした。

今回解説したのは、それ以後のゴジラシリーズに登場した内閣総理大臣たちです。

「怪獣映画」ということもあり、米ソ両国に毅然な態度を見せたり、ゴジラ対策兵器の開発を推進したりと、全体的に理想的に、ヒロイックに描かれています。

しかしこれはあくまでフィクションの話。内閣総理大臣以下、現実の政治家たちは新型コロナウイルスという国難にどのような態度で挑むのでしょうか。

次回の『邦画特撮大全』は…

(C)1996 TOHO CO., LTD.

次回の邦画特撮大全は現在Netflixで配信中の平成モスラシリーズを紹介します。お楽しみに。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら



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