連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile162
時代を越えて長く愛される、イギリスの小説家J・R・R・トールキンによるファンタジー小説『指輪物語』。
『ロード・オブ・ザ・リング』(2002)を始まりとしたピーター・ジャクソン監督による3部作での映画化が全世界で大ヒットとなり、出版から70年以上が経過してもなお高い人気を保ち続けています。
そして2022年、映像配信サービス「Amazon Prime Video」から原作の「追補編」を基に映画化された『ロード・オブ・ザ・リング』の前日譚を描いたドラマシリーズの配信が始まりました。
今回はドラマ『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪 シーズン1』より、9月2日に配信されたEpisode1・2をネタバレあらすじを含め、ドラマシリーズの魅力をご紹介させていただきます。
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CONTENTS
ドラマ『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪 シーズン1』Episode1・2の作品情報
(C)Amazon Studios
【原題】
The Lord of the Rings: The Rings of Power
【配信】
2022年9月2日(Amazon Prime Video独占配信)
【監督】
J・A・バヨナ
【キャスト】
モーフィッド・クラーク、ロバート・アラマヨ、ベンジャミン・ウォーカー、チャールズ・エドワーズ、イスマエル・クルス・コルドバ、サイモン・メレルズ、オーガスタス・プリュー、マックス・ボルドリー、ナザニン・ボニアディ、オウェイン・アーサー
【作品概要】
J・R・R・トールキンによって執筆された小説『指輪物語』を基に、映画『ロード・オブ・ザ・リング』で描かれた『旅の仲間』の物語に至るまでの過程を映像化した連続ドラマシリーズ。
『怪物はささやく』(2017)で高い評価を得たJ・A・バヨナがEpisode1・2の監督を務め、『リンカーン/秘密の書』(2012)のベンジャミン・ウォーカーやドラマ『HOMELAND』でファラ・シェラジを演じたナザニン・ボニアディがレギュラー俳優として参加しました。
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(C)Amazon Studios
【ガラドリエル】
ヴァリノールに住むエルフのガラドリエルは里の中でも浮いた存在でしたが、兄のフィンロドからさまざまな事を教わることでその孤独を埋めていました。
冥王モルゴスを討伐するためフィンロドを含むエルフたちはヴァリノールから中つ国へと渡り、多くの犠牲の上でモルゴスを討ち取ることに成功しますが、モルゴスの配下である魔術師のサウロンを取り逃がしてしまいます。
長い年月が経ち、サウロンによってフィンロドを殺害されたガラドリエルは戦士となり、北方のフォロドワイスへと兵を引き連れ調査に訪れていました。
フォロドワイスは雪に覆われた過酷な地であり、長年が経過したことでサウロンは既に死亡していると考えるガラドリエルの配下たちは彼女への反感を強め、トロルに襲われたことを契機に本国からの帰還要請に逆らうガラドリエルに反発。
配下の全員が同調したことでガラドリエルは中つ国内のエルフの国リンドンへと戻らざるを得なくなり、リンドンで旧友であり高官にまで出世したエルロンドと再会します。
エルロンドはサウロンを始めとしたガラドリエルの言う「敵」の存在には懐疑的でしたが、命令無視を繰り返すガラドリエルに同情的であり、彼女の要請を受け入れ上級王ギル=ガラドへの謁見を手配しました。
ギル=ガラドと謁見したガラドリエルでしたが、彼女の意に反しギル=ガラドは冥王を始めとした「敵」は既に絶滅したと宣言し、貢献したガラドリエルたちにヴァリノールへの帰還を報酬として与えました。
フォロドワイスでサウロンの手掛かりを見つけていたガラドリエルはヴァリノールへの帰還を受け入れかねますが、エルロンドは手掛かり自体がいつのものか分からないと反論すると彼女に帰還を懇願し、ガラドリエルは渋々帰還を受け入れます。
ガラドリエルをヴァリノールへと向かう船に乗せたエルロンドはギル=ガラドからエルフの中でも名高い鍛冶ケレブリンボール卿への助力を命じられます。
【南方国】
かつてモルゴスに助力した人間たちを見張るエルフの駐留隊の1人アロンディルは村の医者でひとり息子を持つブロンウィンと恋仲でしたが、エルフと人間の恋路が上手くいかないことや、監視されている村人がエルフへの反発を強めていることから公には出来ずにいました。
戦争の終結を宣言したギル=ガラドによって駐留隊の撤退が決まる中、ブロンウィンは東の村ホルデルンで家畜たちが不可解な病に倒れたことを知り、異変を感じ取り1人隊を離れたアロンディルと共に調査に向かいます。
一方、ブロンウィンの息子テオは納屋の地下に折れた剣を見つけ隠し持っていましたが、その剣にはサウロンの紋章が刻まれており、紋章に呼びかけられているような錯覚を覚えていました。
【ハーフット】
預言書のお告げを信じ、人間やエルフを始めとしたその他の種族に対する強い警戒心を持つハーフットの部族は、各地を転々としながら隠れ潜んでいました。
ロヴァニオンに居を構えたハーフットたちでしたが、本来ならこの時期に見かけることのない旅人を見かけます。
族長のサドクは預言書に旅人の存在から始まる予言が記されていることから不安を覚え警戒を呼びかけていましたが、強い好奇心と外の世界へのあこがれを持つ少女ノーリはたびたびハーフットの居住地から離れ冒険を繰り返していました。
【ガラドリエル】
ヴァリノールへと向かう船の中、「サウロン」が死んだとは信じられず心の中に不安を募らせるガラドリエルは船から1人飛び降り、海の中を漂流することとなります。
【ハーフット】
中つ国の至る所で空から降る隕石が確認されます。
隕石のひとつがロヴァニオンの外れに墜ちたことに気づいたノーリは落下地点へと向かうと、燃え盛る隕石の破片の中で横たわる男の姿がありました。
ドラマ『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪 シーズン1』Episode2「漂流」のあらすじとネタバレ
【ガラドリエル】
海を漂うガラドリエルは船を海の怪物ワームに破壊され即席の筏で漂う人間たちに保護されます。
ワームが再び筏を襲撃すると生存者たちは海に飲み込まれ、ガラドリエルは何とか筏の破片に逃げ延びていたハルブランドに救われますが、ハルブランドは襲われている他の漂流者を囮にしておりガラドリエルは不信感を募らせます。
ガラドリエルはハルブランドが故郷である南方国がオークに襲われたことで復讐を誓う人間であることを知りますが、信頼の出来ないお互いの関係性からそれ以上の詮索が出来ませんでした。
【エルロンド】
ケレブリンボールはエルロンドに巨大な鍛冶場の建設計画があるものの人員が足らないことを相談します。
エルロンドは高い鍛冶と建設技術を持つドワーフに助力を求めようと提案し、2人はドワーフの王国カザド=ドゥムを訪問。
カザド=ドゥムの王の息子であるドゥリン4世とエルロンドは旧知の仲であるためエルロンドは歓迎されると思っていましたが、門番は頑なにエルロンドを拒否し、意を決したエルロンドはドゥリン4世に対決の儀式を挑みます。
お互いに限界を迎えるまで石を割り続けると言う勝負にエルロンドは敗北しカザド=ドゥムからの追放を強制されそうになりますが、ドゥリン4世に直接話しを聞くことの出来たエルロンドはドゥリン4世が自分を恨む理由が結婚式に参加せず、20年間何も交流が無かったことであることを知りました。
エルフにとっては僅かな時間であれど他の種族には長い20年と言う年月の溝を埋めるため、エルロンドはドゥリン4世の妻ディーサと子供たちに会い食事をするとドゥリン4世は鍛冶場建設の話しを父親に取り次ぐと約束します。
しかし、ドゥリン3世はエルフがドワーフの持つ特別な宝を狙っているのではないかと警戒を強めてしまいました。
【南方国】
アロンディルとブロンウィンが異変のあった東の村へと向かうと、そこには地面に空いた巨大な穴と焼けたホルデルン村がありました。
アロンディルが地面の穴を調査している間にブロンウィンは村に戻り異変を伝えますが、エルフの監視から解放された村人は再びエルフを呼び戻しかねない彼女の報告を信用しませんでした。
家に戻ったブロンウィンは家の地下から現れたオークに襲われます。
オークから身を隠していたテオと共にオークに立ち向かったブロンウィンはオークの首を切り落とし村人に改めて警告すると、流石の村人たちもブロンウィンの言葉を信用し避難を始めます。
家から離れる際にテオは折れた剣を取り出すと、オークとの戦いで負った傷から流れ出た血を剣が吸い取り、折れた剣先を修復していく様子を目にします。
その頃、穴を調査していたアロンディルはオークたちに捕縛されていました。
【ハーフット】
ノーリは隕石と共に落ちてきた男を親友のポピーと共に救い出すと、他のハーフットには内緒にしつつ彼を介抱します。
男は言葉を喋ることが出来ないだけでなく、木の実の食べ方すら分からないほどの記憶喪失であり、ノーリは男のルーツを知ることを絶望的に感じます。
ある日、ホタルを箱に詰めたランタンを男の前で落としてしまいホタルが辺りに散らばると、男はホタルを操り始めました。
男は星座のようなものを描き、ノーリは自分の知らないその星座こそが彼の正体に迫るものなのではないかと感じ始めました。
【ガラドリエル】
大嵐が2人を襲い、ガラドリエルは海の中に引き込まれてしまいますが、ハルブランドがその身を危険に晒し海に飛び込み彼女を救い出しました。
生死の淵を彷徨う2人の前に船が通り、ガラドリエルは船から見下ろす人間の姿に気が付き、気を失いました。
ドラマ『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪 シーズン1』Episode1・2の感想と評価
(C)Amazon Studios
『ホビットの冒険』『ロード・オブ・ザ・リング』に繋がる壮大なプロローグ
「Amazon.com」が10億ドルの予算で5シーズンの製作を決定し、「史上最も高額なテレビシリーズ」になると報じられているドラマ『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』。
本作は『指輪物語』の主に「追補編」で語られた、サウロンの台頭から敗北までを描いた中つ国の「第二紀」をメインに物語が作られることが予定されており、実写化されている中で最も古い年代が描かれることになります。
フロドやアラゴルンと言った『ロード・オブ・ザ・リング』の中心となるキャラクターは登場しないものの、かつてケイト・ブランシェットが演じたガラドリエルやヒューゴ・ウィーヴィングが演じたエルロンドは長命なエルフゆえに登場し、彼女たちの若き時代の物語が明かされていきます。
『ロード・オブ・ザ・リング』では、復活によって世界の終焉を導きかねないと警戒され、英雄たちがすべてを捧げて復活を阻止した冥王サウロン。
どうやってサウロンが世界を滅亡に追い込むほどの力を得たのか、そして中つ国の人々はどのように団結し一度はサウロンを滅ぼしたのか。
プロローグと言ってしまうにはあまりにも壮大すぎる始まりの物語が巨額を投じた圧巻のスケールで描かれていく今後に期待が膨らみます。
栄光と没落、力と不信の物語
ドラマの副題となる「力の指輪」は手にしたものが強大な力を持つこととなる20個の指輪を指しています。
『ロード・オブ・ザ・リング』でフロドがサウロンの復活を阻止するために旅をするきっかけとなった指輪は「力の指輪」のひとつであり、本作ではどのように「力の指輪」が作られることになったのかを詳細に描写していくことが想像されます。
「力の指輪」の創造にはサウロンが関わっており、サウロンは各種族の対立や疑心を煽り、強大な力を持つ指輪へと導いていきます。
人間の欲深さが巻き起こす政争と没落、エルフとドワーフと言う異なる種族の友好と不信、サウロンの恐るべき策略と対抗する者たちの団結が「力の指輪」を中心に描かれる、今までとは異なる重厚な物語の展開が予想されます。
まとめ
(C)Amazon Studios
4Kリマスターされたシリーズ3部作の全てをIMAX上映することが決定した「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ。
出版から70年経ってもなお色褪せることなくさらにシリーズは発展し続け、実写映像化作品も名作として語り継がれています。
そんな実写映像化作品につながる作品として制作されたドラマ『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』も、壮大なファンタジードラマとして歴史に刻まれることが期待される大注目の作品です。