連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第100回
映画『シニアイヤー』は、高校のチアリーディングチームに所属するステファニーが、演技中の落下事故で、20年の時を経て昏睡状態から覚醒し、37歳で再び高校生チアリーダーになるコメディ映画です。
監督はイギリスBBCの人気コメディドラマ「ヤング・ドクター」シリーズのプロデューサー、アレックス・ハードキャッスルの長編映画初監督作品です。
『クルーレス』(1995)で、人気カリスマ高校生を演じ、第5回MTVムービー・アワードで演技賞を受賞した、アリシアン・シルバーストーンが、伝説のプロムクイーン、ディアナ・ルッソの末路を演じたことにも注目です。
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映画『シニアイヤー』の作品情報
(C)2022 Netflix
【公開】
2022年(アメリカ映画)
【原題】
Senior Year
【監督】
アレックス・ハードキャッスル
【脚本】
アンドリュー・クノアー、アーサー・ピエッリ、ブランドン・スコット・ジョーンズ
【キャスト】
レベル・ウィルソン、ゾーイ・チャオ、サム・リチャードソン、メアリー・ホランド、ジャスティン・ハートリー、クリス・パーネル、アンガーリー・ライス、マイケル・チミノ、ジェレミー・レイ・テイラー、ブランドン・スコット・ジョーンズ、アリシア・シルバーストーン、ジョシュア・コリー、ジェイド・ベンダー、アバンティカ
【作品概要】
37歳の高校生ステファニーを「ピッチ・パーフェクト」シリーズ、『ジョジョラビット』(2020)、『キャッツ』(2020)などで、メインキャストを務めたレベル・ウィルソンが演じます。
17歳のステファニーを演じたのは、「スパイダーマン」シリーズでベティ・ブラント役で出演した、アンガリー・ライスが務めます。
映画『シニアイヤー』のあらすじとネタバレ
(C)2022 Netflix
1999年、地元で最も“クール”なスポットの“ロックンボウル”でオーストラリアから移住してきたステファニー・コンウェイは、14歳のバースデーを友達のセスとマーサと一緒に祝っていました。
ステファニーはその時、学校で一番人気の男子ブレインをみつけ、バースデーを祝ってほしいと誘いますが、女子で一番人気のティファニーが邪魔に入ります。
ティファニーは何かとステファニーの出身地オーストラリアを引き合いに、イケてない子呼ばわりします。
ステファニーはそのコンプレックスを払拭するべく、“一番の人気者”になることを決意しました。
彼女はファッショ雑誌をみながら、なりたい自分のマインドマップを作ります。
2002年、ステファニーはチアリーディングチーム、”ブルドゲッツ”のキャプテンとなり、赤いオープンカーで登校する、派手なティーンエイジャーへとイメージチェンジをしました。
ステファニーはハーディング高校の伝説のチアリーダー、ディアナ・ルッソのように“完璧な人生”を送るのが夢です。
ディアナ・ルッソはブルドゲッツのキャプテンであり、プロムでクイーンの座を手にし、同年プロムキングと結婚し、高台に建つ豪華な家で暮らしていました。
学校の花形で人気者になった先には、プロムでクイーンの座が約束され、プロムキングとの華やかな生活までが、“完璧な人生”の構図でした。
つまり、ステファニーもクイーンの座を獲得するつもりでした。そして、キング候補のブレインはティファニーから、ステファニーの彼氏になっていました。
彼女は母親を亡くし父親と2人暮らしになっています。そして、今でもマーサとセスは友達ですが、2人はステファニーの引き立て役のようでした。
また、ティファニーとはプロムに向けて、指向の食い違いや意見の相違がありました。ティファニーもプロムクイーンの座を狙っているからです。
そして、校内でのブルドゲッツ卒業公演で、ティファニーはフィニッシュを失敗させ、ステファニーに恥をかかせるため、仲間に妨害するように指示しました。
ところがその作戦はやりすぎてしまい、ステファニーはバスケットトスで、華麗にキャッチされきめるところを妨害により、床に落下し昏睡状態の重体になってしまいました。
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映画『シニアイヤー』の感想と評価
(C)2022 Netflix
過去に縛られるシニアに捧げる物語
ステファニーは移民でいじめられっ子という境遇を、前向きな発想で人気者になり乗り越えました。
マーサとセスもステファニーの友達になったころは、地味で目立たない友達同士で付き合えていましたが、ステファニーの勢いに巻き込まれ戸惑いました。
若い頃に栄光を掴んだ人には、大人になってもその輝かしい思い出をひきずり、気づけば社会に適応できていない人も多くいます。
ステファニーは不幸にも事故で20年間、昏睡状態となりましたが、目覚めた時の心は17歳のままで、まだリハビリの余地と許容できる事情がありました。
ところが何事もなく20年間生きてきた人の中には、意識がアップデートされない大人もいます。
言動や行動そのものが、時代の流れに沿わず、不適切な大人も存在するということです。
マーサやセスのように、自分の悩みを将来に受け継がない努力をする人と、過去の栄光に縛られ自身のプライドのため、子供の価値観やステータスをも利用する“毒親”も存在します。
また、伝説のプロムクイーンが社会的信用を得るため、学位の取得を目指す姿は、行動を起こすことに、年齢は関係ないことも示していました。
性的マイノリティー、環境問題、不適切な言動など、20年という時の壁は想像以上に厚く、時代の変化の激しさを物語っていました。
1人が1台のパソコンを持つ時代を飛び越え、スマートフォンのような小型でハイスペックなモバイルを、1人1台持つ時代というスピード感です。
それゆえに時代に追いつけず適応できない人もいて、個性を尊重する風潮もありながら、差別は一向に減らない現実もあります。
努力を無駄にしない「努力」
マーサの苦しみは、差別のない平等な人間関係の構築をしました。その努力はジャネットのように大統領を目指す子を生みました。
悪い大人は反面教師にすること、高めた意識を社会貢献のために、アップデートし続ける努力が必要なことを感じました。
何が大切なのかを学んでも、それもまた時代の流れと共に風化し、社会になじまなくなる可能性が秘められているからです。
ステファニーのように、憧れのディアナ・ルッソがいることで、現実に何をすべきなのか、必然的に悟ることもできます。
また、ステファニーの父が妻亡き後、愛娘のために心を砕いた愛の努力は、彼女が進学を決心したことで報われるでしょう。
本作は「努力」は「努力」によって報われること、人の愛を無駄にすることが、最低な行為だというのも教えています。
まとめ
(C)2022 Netflix
映画『シニアイヤー』は37歳のステファニーが、自分の夢のために奮闘するポジティブな面をコメディ素材にし、ティファニーのように、精神的な成長が止まった大人を揶揄する作品といえます。
また、競争の全てが悪ではなく、競争の中で仲間同士の思いやりを育み、絆や思い出を深める大切さがあることを伝えていました。
そのことをユーモアを交え、押しつけがましくしないところは、コメディ作品を多く手掛けてきた、スタッフやキャストの技量からうかがい知ることができます。
アップデートしていない大人には学ぶ「努力」を促し、惜しみない「愛」を受けた子供には、それを社会にどう還元するのか、個性の昇華を提唱する作品でした。
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