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Entry 2019/05/01
Update

映画『アンデッド/ブラインド』ネタバレ感想と結末までのあらすじ。 【不死身の少女と盲目の少年】を現代のお伽噺に仕立てる|未体験ゾーンの映画たち2019見破録51

  • Writer :
  • 増田健

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」第51回

ヒューマントラストシネマ渋谷で開催された“劇場発の映画祭”「未体験ゾーンの映画たち2019」。今回はダークファンタジーと呼ぶべきホラー映画が登場します。

時は現代。人々から悪魔が棲む地と恐れられる場所に、人を襲って喰うモンスターと化した、1人の少女がいました。

ある日その少女の元に、罪を犯し逃亡中の悪人が現れますが、少女は悪人を殺してしまいます。

ところが悪人は、誘拐した盲目の少年を連れていました。モンスターと化した少女と、彼女の姿を見る事ができない少年との交流が始まります。

第51回は異色のホラー映画『アンデッド/ブラインド 不死身の少女と盲目の少年』を紹介いたします。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2019見破録』記事一覧はこちら

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映画『アンデッド/ブラインド 不死身の少女と盲目の少年』の作品情報


(C)MMXVIII Dor Film

【日本公開】
2019年(オーストリア映画)

【原題】
The Dark

【脚本・監督】
ジャスティン・P・ラング

【キャスト】
ナディア・アレクサンダー、トビー・ニコルズ、カール・マルコビクス

【作品概要】
短編映画出身の監督ジャスティン・P・ラングの、初長編映画となるホラー映画。

主人公である、不死のモンスターと化した少女ミーナを演じるのは、Netflixオリジナルドラマ『運命の7秒』に出演のナディア・アレクサンダー。

その相手役となる盲目の少年、アレックスを演じたのは、Netflixオリジナルのマーベルドラマ『アイアンフィスト』で、主人公ダニー・ランドの少年時代を演じているトビー・ニコルズです。

ヒューマントラストシネマ渋谷とシネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2019」上映作品。

映画『アンデッド/ブラインド 不死身の少女と盲目の少年』のあらすじとネタバレ


(C)MMXVIII Dor Film

林の中の一本道を突っ走る乗用車。車は寂れたガソリンスタンドで停まります。中から現れた男(カール・マルコビクス)が店内に入ります。店番の老人はテレビを見ていました。

不釣り合いなシリアルの大箱を掴んだ男は、いきなりカウンターで地図を広げます。売り物を広げる行為に店の老人が抗議すると、男は買うよと答えます。

男の様子を見た老人は、あんたみたいな人が、時々ここを訪れると語ります。怖い話が好きな、都会に住む連中がここにやって来ると。

老人は地図を指さし今はここで、あんたの行きたい場所、デビルズ・デン(悪魔の巣)はここだと示します。何が楽しくて来るんだ、好奇心は身を滅ぼすと言われただろうと、言葉を続けます。

先を急ぐ様子の男に、老人はデビルズ・デンに語り継がれる話は俺も好きだ、と語ります。あそこに行って怪物に引き裂かれるのは、俺じゃなくてあんたみたいな人だ。

そう語った老人は、テレビのニュースに目を止めます。現在警察は武装して逃亡中の男、ヨセフ・ホファーを指名手配しており、逮捕につながる情報を提供した者には、25万ドルの報酬金が支払われると伝えていました。老人は目の前の男が、その指名手配犯だと気付きます。

ヨセフ・ホファーは何も言わず、銃で老人を撃つと車に乗って走り去ります。

地図を広げても道が見つかられず、いら立ったホファーは車を停めます。スマホもつながらず焦る彼は、傍らの小道にテビルズ・デンと書かれた道しるべが立っていると気付きます。

ヨセフはその道を車で進んで行きます。道はどんどん細く、険しくなっていきます。

突然車がパンクして停止します。ヨセフが降りてタイヤを見ると、何者かが仕掛けた罠で傷つけられていました。

近くに古びた一軒の家があります。ヨセフは様子を伺い声をかけますが、家の中から返事はありません。鍵がかかっていると思われた扉が開き、彼は中へと入っていきます。

家の中は荒れ果てていました。2階に上がったヨセフは、一つだけ生活感のある部屋を見つけ、その中に入ります。その部屋の壁には、無数の絵が貼ってありました。

枕元に熊のぬいぐるみが置いてあるベットに、彼は横たわります。突然物音が響き、ヨセフは飛び起きます。

銃を手にしたヨセフは、壁の向こう側から音が響いていると気付きます。壁の穴を覗いた彼の目の前に、いきなり斧の先が突き出てきます。

ヨセフは驚いて銃を放ちますが、彼に迫る物音は止みません。慌てて家の外に走り出たヨセフは、仕掛けられた釘を踏み抜き悲鳴を上げます。

足を引きずって逃げるヨセフを、斧を手にした人影が追ってきます。彼は木の陰に身を隠し背後を伺いますが、そこには誰もいません。突然木の上から、ヨセフの顔面に斧が振り下ろされます。

遺体を見下ろす恐ろしい形相の少女(ナディア・アレクサンダー)。少女はその体をむさぼり喰います。その光景を家の外の椅子の上に置かれた、熊のぬいぐるみが見つめていました。

少女はヨセフの持ち物を探り、ライターを見つけます。ライターの火で自らの手を炙っても、彼女は何の痛みも感じません。

少女は車を停めた罠を仕掛け直すと、改めて車内を物色します。シリアルの箱を見つけて開け、食べてみますがすぐに吐き出してしまう少女。

突然ヨセフ、と呼びかける声に少女は驚きます。ごめんなさい愛してる、嘘じゃないと、その声が続けます。

声は車の後部にあった毛布の中からしていました。毛布の中には怯え切った少年(トビー・ニコルズ)がおり、ヨセフがずっと戻らないので心配になったと語ります。


(C)MMXVIII Dor Film

少女の気配に少年は悲鳴を上げます。目を無惨に傷付けられ、彼は盲目でした。少女がヨセフはもういないと告げると、少年は泣き崩れます。

少年の体は汚れていました。少女にズボンを渡された少年は、怯えた声で見ないで、と告げ履き替えます。少女の手にふれた少年は、君の手は冷た過ぎると告げます。

ヨセフの死を信じていない少年は、もうすぐ戻ってくるヨセフに怒られるから、ズボンのことは内緒にしてくれと少女に頼みます。

そんな少年を少女は黙って見ていました。辺りが暗くなる中、彼は車の中で鼻歌を歌い始めます。

少女は昔を夢見ていました。イヤホンを付け、CDで音楽を聞いている少女は父の顔を描いていました。机の上には、彼女と両親の写が入ったスノードームが置いてあります。彼女はごく普通の女の子でした。

物音に気付いた彼女はイヤホンを外します。様子を伺うと母が、父ではない男と酒を飲み言葉を交わしていました。

母からミーナと呼ばれた少女は、早く寝るよう言いつけられます。母はもう来ないと彼女に約束した男を、家に引き入れていました。父を失った後現れたその男の存在を、堪らなく苦痛に感じているミーナ。

机に戻った彼女はイヤホンを付け、黒いクレヨンで何かを描き始めます。頭の中に轟音が響く中、完成した絵は悪魔の様な、現在のミーナのような顔を描いていました。

朝になり恐ろしい形相の少女、ミーナは目覚めました。車の中の少年に触れると彼は悲鳴を上げます。他人と接触する事はルール違反だ、ヨセフがやってくると叫ぶ少年。彼はまだヨセフの存在に怯えています。

そこにパトカーが現れ、ミーナは姿を隠します。パトカーはミーナの仕掛けた罠でパンクし、停止していました。降りた警官は無線で連絡を取り、目の前にある車が指名手配中のヨセフのものと確認します。

警官は少年に気付きアレックスだろ、と声をかけます。警官は彼がヨセフ・ホファーにさらわれた少年、アレックスだと知っていました。

警官はアレックスにヨセフの所在を確認しますが、まだヨセフの死を信じていない彼は、家の中にいると告げます。警官は銃を手に、家の中に入っていきます。

ミーナは熊のぬいぐるみを手に、壁一面に絵を貼った部屋のクローゼットに隠れていました。部屋に入った警官は、彼女の気配に気付きます。

クローゼットに銃を向け、ホファーだなと呼びかける警官。彼は無線で状況を報告し、3つ数えたら撃つと告げ、クローゼットから大人しく出て来いと命じます。数え終え、扉を開けた警官に飛びかかっていくミーナ。

ミーナは警官に飛びつき彼の目を潰します。人間ではない何かに襲われたと、報告する警官の首に彼女は噛みつき、彼の命を奪います。この格闘で、大切にしていたぬいぐるみの首が取れたと気付き、ミーナは怒りの唸り声を上げます。

アレックスの姿はありません。パトカーのサイレンが迫る中、ミーナは荷物をまとめると、斧を手にして森を進みます。彼女は足音を頼りにアレックスを追っていきます。

森の中を手探りで進むアレックスを、ミーナは背後からタックルして倒します。怯えたアレックスはヨセフに会わせてと、ミーナに訴えます。

ヨセフは死んだ、とミーナが叫んでも、アレックスは謝るから、ヨセフの所に連れていってと懇願します。そんな彼に斧を振るうミーナ。斧は彼の顔のすぐ近くに打ち込まれました。

私に構わないで消えて欲しかった、とつぶやくミーナ。ようやくヨセフの死を信じたアレックスは、ヨセフに何かあれば連絡しないと、彼に何かあればヨセフの仲間が捕まえに来ると、怯えて彼女に語ります。

ミーナはアレックスの言葉を疑いますが、彼は嘘ではないと告げ、その証拠に指切りする指を差し出します。そして改めてミーナに自分の名前を告げます。

ミーナはアレックスを先導して森の中を歩きます。彼女はアレックスにここは悪魔の森、デビルズ・デンと語り、人間の肉と骨を喰らう怪物がさまよっていると語ります。

作り話と思って信じないアレックスに対し、ミーナは彼女は存在すると告げます。怪物は女なの、と問いかけるアレックス。

捜索する警官と警察犬の物音が近づいてきます。目の見えないアレックスはヨセフの仲間が追って来たと怯えます。ミーナは彼と木に隠された洞穴に入り、身を潜めます。

その穴の入口に警察犬が現れますが、ミーナに睨まれ、唸られた警察犬は怯えて逃げ去り、捜索をやり過ごす事が出来ました。

夜になり、外は雷雨になっていました。電話を手に入れ連絡しないとまずいと、外に出ようと言うアレックスを、ミーナは朝まで待てと言い聞かせます。腹ペコだと告げたアレックスは、ヨセフがシリアルを買って来るはずだったと語ります。

何でヨセフは死んだのと尋ねる彼に、ミーナは見たとだけ答えます。顔を知らないのに、と納得しないアレックスに、彼女はヨセフのライターを渡します。

ヨセフは煙草を吸わない、燃やすのが好きだったと呟くアレックス。ミーナは彼の目もヨセフが焼いたのかと尋ねますが、アレックスは彼のせいじゃない、僕がルールを破っやから、悪い事が起きただけだと説明します。

与えられられたルールの1つは、車の中では毛布を被って姿を消す事。透明人間にはなれないけど、と語るアレックス。彼は暴力でヨセフに暴力で身も心も支配され、その影響から抜けきれないでいると、ミーナは悟りました。

ヨセフのライターを、あげるよ、とミーナに手渡すアレックス。彼はこの森が呪われている話を、彼女が信じているかを尋ねます。信じてると答えたミーナに、僕も信じてると告げるアレックス。ミーナは初めて自分の名を彼に伝えます。

洞穴の中で丸まって休むアレックスは鼻歌を歌っていました。その姿を見つめるミーナは、いつしか自分がまだ人間だった頃を、夢見ていました。

鍵を閉めるなと言っただろう、いい子だ。と言って母と付き合っている男は、ミーナに言い寄っていました。母が不在の時、男は彼女の体を求めてきたのです。その有様を熊のぬいぐるみだけが見ていました。

ついに男の行為に耐えかねたミーナは、指に激しく噛みつきます。怒った男は机の上のスノードームを手にとり、激しく彼女の頭を殴りつけます。

男はミーナの体を運ぶと、森の中に埋めました。

悪夢から醒めたミーナは、思わずアレックスの首を絞めてしまいます。彼の悲鳴に我に返ったミーナ。アレックスは自分も悪夢を見たと打ち明けます。

ミーナは彼の身を案じ、首を絞めた自分の手が、冷たかったと彼に尋ねますが、アレックスは冷たくなかったと答えます。

ミーナは電話を捜してくると告げ、アレックスを洞穴に残し外にでます。ふとライターを取り出し火を付け、炎に手をかざしたミーナは痛みを感じます。

ミーナは3人の男が現れた事に気付きます。彼らは報奨金目当てに、指名手配犯のヨセフ・ホファーと、彼にさらわれたアレックスを捜しに、デビルズ・デンの森に入ったのです。

ミーナは洞穴に戻ると、アレックスを連れ出します。彼女は手を放して身を隠し、アレックスを男たちに引き渡そうとします。1人にされ不安に駆られた彼は、ニーナの名を呼びます。

アレックスに気付いた3人は、テオと弟のヘンリーと、息子のジョージだと名乗り、彼を安心させようとします。

しかし目の見えないアレックスは彼らをヨセフの仲間を思いこみ、ミーナの名を呼び続けます。

3人は近くにヨセフがいるかもと身構えます。3人が何を語ってもアレックスは信用せず怯え、ミーナの名を呼び続けます。

ジョージはミーナとは、デビルズ・デンで殺人のあった家に住んでいて、行方不明になった女の子の名だと気付きます。

アレックスがその名を知っている事も、3人には不審でした。テオはヘンリーに保安官に連絡するよう告げます。

ミーナはアレックスを3人に引き渡し、立ち去るつもりでしたが、警察に追求される事態は望んでいませんでした。

3人の男は不安に駆られながら、アレックスに向き合っていました。

以下、『アンデッド/ブラインド 不死身の少女と盲目の少年』ネタバレ・結末の記載がございます。『アンデッド/ブラインド 不死身の少女と盲目の少年』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)MMXVIII Dor Film

テオに保安官に連絡するよう言われた、ヘンリーがまずミーナに襲われ絶命します。テオは反撃しナイフでミーナを傷付けますが、彼女によって殺されます。

ジョージはその光景をスマホで撮影していました。茫然としていたジョージは我に返り、走って逃げ出します。

ミーナはその後を追いますが、道路に飛び出したジョージは、車にはねられてしまいます。

車はジョージを残し走り去ります。近づいたミーナは瀕死のジョージから荷物を奪うと、森の中へ戻ります。

次は僕を殺すの、と怯えて語るアレックスに、ミーナはジョージのスマホを差し出します。

アレックスはミーナに電話番号を伝え、彼女にかけさせます。かけた先の相手は女性の声でしたが、彼は何も告げず電話を切ってしまいます。

ミーナに相手が誰か聞かれても、アレックスは答えません。彼はヨセフの最期は知らないといけないと告げ、その様子をミーナから聞き出します。

ミーナはただ、自分の周りから人がいなくなる事を望み、殺したと打ち明けます。それを聞いて誰にも何も言わないし、自分を置いて立ち去ってくれていいと告げるアレックス。

それでも2人は共に進んで森を抜け、草原に建つ家を見つけます。家の中に入ったミーナは、聞こえて来た留守電の内容から、この家は1人暮らしの女の家だと悟ります。

ミーナは台所で、鍋が火にかかった状態だと気付きます。そのミーナに、家の住人である初老の女が銃を突きつけます。

季節はずれのハロウィンか、と言ってミーナへの警戒を緩めない女。友人に電話を貸して欲しいとミーナが頼んでも、取り付くひまも無い態度です。

ところがミーナの危機を察したアレックスが、背後から女を包丁で刺して殺します。

飢えていたアレックスは、器にいれた鍋のスープを貪るように飲みます。女を殺す必要は無かったと言うミーナに、アレックスは君を守るためだったと答え、さらにスープを求めます。

ミーナはアレックスに、追手が去るまで温かく食料もあるこの家に居ればいいと話します。ミーナに抱きつくアレックス。

疲れ切ったアレックスがソファーで眠ると、ミーナは家の中を物色します。

自分にあった服を見つけると着替え、髪をといて身なりを整えます。そしてスープをよそって飲んでみますが、やはり体が受け付けず、吐いてしまいます。

ミーナはスマホを取り出し、アレックスが教えた番号にもう一度かけてみます。相手は女性でした。

何も語らないミーナに対して、相手は息子を返してと訴えます。

アレックスの鼻歌が聞こえ、ミーナはまた過去の出来事を思い出していました。

殺され埋められたミーナは蘇り、もがき苦しみながら地上に這い出しました。傷口は癒えておらず、彼女は恐ろしい形相になっていました。

ミーナが家に戻ると、電話をかける母の姿がありました。娘の行方を捜すよう訴えている母、しかしミーナを殺した愛人の事は、少しも疑っていませんでした。

電話を切った母は彼女に気付き、ミーナの名を呼び彼女を抱きしめます。

しかしミーナは母を刺殺します。そして家の中へ、暗闇の中へと進んでゆくミーナ。

ミーナの名を呼ぶアレックスの声に、彼女は目を覚まします。辺りは夜で、家に車が近づいていました。殺された女の娘が、母の様子を見に訪れたのです。

彼女は母の死体とアレックスに気付きます。

アレックスの捜索に加わっていた彼女は、彼を安全な場所に送るべく車に乗せますが、アレックスは怯えてミーナの名を呼びます。その車の荷台に密かに乗り込むミーナ。

女は必死にアレックスをなだめ、警察に状況を通報します。ミーナは荷台からアレックスに声をかけようとします。

ところが怯えたアレックスがハンドルを奪い、車は横転してしまいます。

ミーナが車に駆け寄ると、運転席の女は負傷していましたが、警察に事故を報告していました。

身動きがとれず混乱した状態の女は、ミーナを疑わずアレックスの世話を任せます。

アレックスも負傷していましたが、命に別状はありませんでした。彼は自分をさらったヨセフの影におびえ、事故を引き起こしたのです。ミーナに痛みを訴えるアレックス。

あの番号にかけた、とミーナは彼に語ります。ママはあなたを待っている、大丈夫、帰っていいとアレックスに告げます。

しかしアレックスは、そんな事をすればヨセフと仲間が、彼だけでなく家族まで殺しに来ると信じ込んでいました。

ミーナはヨセフは死んだ、何も出来ないから怯えなくていいと説得します。

意識を失いかけたアレックスを励ますミーナ。ママはどこ、と訴え始めるアレックス。あなたを守り、誰にも手出しさせないというミーナに、彼は一緒に帰ろうと訴えます。

パトカーや救急車のサイレンが近づくと、ミーナはその場を離れ、木陰から様子を伺います。

アレックスは何度もミーナの名を叫びます。彼が収容される姿を確認すると、ミーナは立ち去ります。

翌朝。ミーナは自分の家に戻っていました。警察の規制テープを越え家に入り、自室から自筆の絵やCD、スノードームなどをリュックに詰めて、彼女は家を後にします。

湖のほとりに腰かけたミーナは、アレックスの肖像を描いていました。ミーナはシリアルを掴んで食べます。もう吐き出す事はありませんでした。

道路の脇を歩くミーナに、車の女性が声をかけます。あなたの様な若い女の子には危険です、安全な場所まで送っていきますよと。

女の車に乗り込んだミーナ。彼女の顔から傷跡は消え、ごく普通の少女の姿がそこにありました。林の中の一本道を、ミーナを乗せた車が走り去っていきます。

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映画『アンデッド/ブラインド 不死身の少女と盲目の少年』の感想と評価


(C)MMXVIII Dor Film

現代のおとぎ話として描かれたホラー映画

なかなか感動的に泣ける要素のあるホラー映画です。しかし何故少女が甦ってモンスターとなったのか、何故このようなラストを迎える事が出来たのか、明確な説明はありません。

物語の中だけの設定であっても、明確な理由の説明を求める人には、不満の残る展開かもしれません。しかしこの映画を、おとぎ話として受け止めればスッキリするのではないでしょうか。

この作品の悲劇と再生の物語は童話そのもの。但し少年少女を襲うのは、魔女や怪物の類いでは無く、邪な意図を持つ大人たち。おとぎ話を現代的な設定に置き換えた映画です。

参考映像:『ザ・モンスター』(2017)

「未体験ゾーンの映画たち2017」で上映された『ザ・モンスター』。

これも暗い夜道で車が故障し立往生した母娘が、説明も前フリも無くいきなり現れた、正体不明の怪物に襲われるという、何とも理不尽な展開のB級ホラー映画です。

この映画も、貧しい母娘が旅の道中で、狼や怪物に襲われるおとぎ話の現代版、と解釈すれば納得できる作品です。

登場するのは現代に生きる白人下流層の、荒んだ家庭の母娘。その2人が怪物に襲われる事で、互いの絆を確認する展開は、おとぎ話として受け入れれば感動モノです。

『ザ・モンスター』の母親役は『ルビー・スパークス』『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』のゾーイ・カザン、娘役は新たに製作され、日本では劇場公開された「赤毛のアン」3部作で、主人公アンを演じたのエラ・バレンタイン。

2人の熱演もあって、『ザ・モンスター』はシチュエーションホラーとしても見応えある作品です。

最近のゾンビ映画は科学技術の進歩を反映して、ウィルスだの遺伝子操作だの、原因を明確にした上で展開する作品が主流です。

しかし原因を明示せず、寓話化する事でかえって風刺的な意味を持つ映画もあります。

ジョージ・A・ロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』で登場したゾンビは、発生原因が(示唆されても)明示されなかった事で、ゾンビや登場人物、その展開に当時の社会状況を反映した、様々なメッセージが読み取れる作品となりました。

次作『ゾンビ』も同様で、大量消費社会に溺れた人々の、風刺としてのゾンビ像が前面に出た映画になっています。

『ゾンビ』の劇中のセリフ、「There’s no more room in Hell.(地獄が満員になったのさ。)When there’s no more room in Hell, The dead will walk the Earth.(地獄が満員になると、あふれた死者が地上を歩き出すんだ。)」、これに勝る理由があるでしょうか。

寓話化されたホラー映画は、時に様々なメッセージを、見る者に与えてくれるのです。

新鋭監督ジャスティン・P・ラングの描いた世界


(C)MMXVIII Dor Film

この映画はオーストリア資本で作られた映画ですが、ロケ地はカナダ、全編英語で語られる映画として製作されています。

監督・脚本はジャスティン・P・ラング。コロンビア大学院で映画プログラムを学び、卒業後短編映画を監督した人物です。

2013年に短編映画『The Dark』を製作、そのプロットを長編映画化したのが『アンデッド/ブラインド 不死身の少女と盲目の少年』(原題は同じく『The Dark』)です。

ちなみに短編映画『The Dark』と今回の長編映画は2本共、オーストリア出身のクレメンス・ハフナグルが撮影監督。落ち着いた雰囲気のある映像は彼の手によるものです。

現在はLAに住み、次回作を準備中のジャスティン・P・ラング。トレードマークはいつも履いている赤い靴、とアピールしている彼の今後の活躍にご注目下さい。

まとめ


(C)MMXVIII Dor Film

『アンデッド/ブラインド 不死身の少女と盲目の少年』を、寓話的なホラー映画として紹介してきました。

興味深いのはストーリーだけではありません。映画の世界観を維持する映像、冒頭シーンとラストシーンのつながりなど、映画的な完成度も極めて高い作品です。

物悲しい、切ないストーリーのホラー映画が好きな方にお薦めの作品です。

ところで映画を通して再生してゆく、辛い過去を経験した少女と少年の姿は感動的ですが、共にけっこうな数の、とばっちりの犠牲者を出しています。

良いんです、この映画が寓話や童話であるなら。「本当は恐ろしい」のが、童話ですから…。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」は…


(C)2018 GEORGIA FILM FUND 64, LLC

次回の第52回はシルヴェスター・スタローンが記憶を失った犯罪者を追う、異色のクライムアクション映画『バックトレース』を紹介いたします。

お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2019見破録』記事一覧はこちら

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