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Entry 2021/01/28
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ホラー映画歴代ランキング(洋画1980年代)5選!やばい見てはいけないガチ怖を探すならこの時代へ飛び込もう!【増田健ホラーセレクション5】

  • Writer :
  • 増田健

おすすめの1980年代の洋画ホラー映画5選!

過去のホラー映画に興味を持った方、何を見ようか迷っていませんか? そんなアナタのために、各年代のホラー映画から5作品を厳選。今回はホラー映画全盛期、1980年代の作品から紹介いたします。

テレビの普及と共に衰退する世界の映画産業。そんな環境でもヒットを生む、そして新人監督のデビューの場としてホラー映画は脚光を浴びます。(詳しくは前コラム4の「1970年代編」)

1980年代になりビデオが普及すると映画は家庭で見るコンテンツへ変貌し、楽しみ方も多様化します。中でもホラー映画は人気ジャンルとして、過去作や様々な国籍の作品がソフト化されました。

ビデオ市場のニーズが更に高まると、低予算で製作でき、しかも世界中で需要が見込めるホラー映画が続々と生み出されることになります。

これらの作品に触れ、自らもホラー映画を作り映画監督として活躍しよう、と望むクリエイターも多数登場。また当時の撮影・特殊効果技術の発達は、製作者の創造意欲をかき立てます。

一方で巨額を投じた作品、中でもSF・アクション系映画の過激化が進みます。技術の進歩と相まりモンスターの登場や人体破壊描写など、ホラー要素はメジャーな映画にも取り入れられます。

低予算のB級映画から大作映画、世界の片隅から宇宙の果てを舞台とした、世界のあらゆる国で生まれた作品がビデオでも鑑賞可能な、将に百鬼夜行のホラー映画全盛の時代が到来します。

こんな時代から5作品を選ぶのは無理。しかし、独断と偏見で時代を代表する作品を紹介いたします。

【連載コラム】『増田健ホラーセレクション』一覧はこちら

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第5位『シャイニング』(1980)


©Warner Bros. Inc.

映画『シャイニング』の作品情報

【原題】
The Exorcist

【製作】
1980年(イギリス・アメリカ合作映画)

【監督・脚本・製作】
スタンリー・キューブリック

【キャスト】
ジャック・ニコルソン、シェリー・デュヴァル、ダニー・ロイド、スキャットマン・クローザース、バリー・ネルソン、フィリップ・ストーン、ジョー・ターケル、トニー・バートン、アン・ジャクソン、リア・ベルダム

【作品概要】
モダンホラーの時代を代表するスティーヴン・キングの同名小説を、究極の完全主義者の監督、スタンリー・キューブリックが映画化。

SF映画の金字塔『2001年宇宙の旅』(1968)、過激な暴力を描いた『時計じかけのオレンジ』(1971)と、映画表現の可能性を切り開いたキューブリック。

しかし歴史大作『バリー・リンドン』(1975)は芸術的評価は得たものの、興行的に振るいません。

次回作には世界の観客に受け入れられる映画を製作すると決意します。こうして生まれた作品が『シャイニング』でした。

伝説のホラー映画と呼ばれる割にショックシーンが少ない?もっともな感想です。しかし完璧主義者のキューブリックが、膨大な撮影テイクを重ね、綿密に撮影した映像に圧倒されるでしょう。

開発されて間もないステディカムを効果的に使用し、撮影した映像をその場でビデオチェックできる技術を初めて導入した映画と、技術的こだわりに満ちた映画です。

完成した作品は大ヒット。娯楽映画と扱われ賞レースに絡まなかったものの、今も優れた映像美を持つ作品として支持され、後の映画人に多くの影響を与えました。

同時に低俗なものと扱われていたホラー映画が、優れた映画芸術を生み出せると証明した、ホラー映画全盛の80年代の幕開けに相応しい作品です。

【映画『シャイニング』のあらすじ】

コロラド州の山上にあるオーバールック・ホテル。小説家志望でアルコール依存症のジャック(ジャック・ニコルソン)は、冬期に閉鎖されるこのホテルの管理人の職を得ます。

彼は妻のウェンディ(シェリー・デュヴァル)、息子のダニー(ダニー・ロイド)と共に、雪に閉ざされたホテルに住み込みます。ジャックは管理人の務めを果たしつつ、小説を書き上げるつもりでした。

以前の管理人は孤独な生活に精神を病み、家族を斧で惨殺し自殺していました。ホテルの生活が始まると、超能力的な感覚”シャイニング”を持つダニー少年は、様々な超常現象を目撃します。

やがてホテルに巣喰う何かは、ジャックの前に姿を現します。徐々に精神を蝕まれてゆくジャック。

ついにジャックは最愛の家族に襲い掛かります。逃げ場のない閉ざされたホテルで、ウェンディとダニーは逃げ惑います。

狂気に支配されたジャックと、その妻子にいかなる運命が待ち受けているのか…。

ホラーの新境地を開拓した映画にスピルバークがリスペクト!

今やホラー映画の枠を越え映画史に残る傑作、スタンリー・キューブリックを代表する映画とされる『シャイニング』。本作をオマージュする作品は数知れず。

熱心なファンは映画の隅から隅まで考察を繰り広げ、その姿はドキュメンタリー映画『ROOM237』(2012)に描かれました。

映画の完成させたキューブリックと彼を崇拝する1人の男の、『シャイニング』のジャックより狂気に満ちた姿は、ドキュメンタリー映画『キューブリックに魅せられた男』(2017)で実感できます。

しかし原作者でのスティーヴン・キングは本作を「まるでエンジンの無いキャデラックだ」と酷評。デビュー前の自身の姿に重なる主人公を、改変して描いたことが許せなかったのでしょう。

様々なエピソードに満ちた本作をリスペクトし、新たな世代の観客に紹介したのが『レディ・プレイヤー1』(2018)。スティーヴン・スピルバーグも『シャイニング』の熱烈なファンでした。

過去の映画と言わず、未だ輝きを失わぬ本作の魅力をぜひ体験して下さい。

第4位『死霊のはらわた』(1981)


(C) 1981 Renaissance Pictures, Ltd. All Rights Reserved.

映画『死霊のはらわた』の作品情報

【原題】
The Evil Dead

【製作】
1981年(アメリカ映画)

【監督・脚本・製作】
サム・ライミ

【キャスト】
ブルース・キャンベル、エレン・サンドワイズ、ベッツィ・ベイカー、ハル・デルリッチ、サラ・ヨーク

【作品概要】
ジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968)、トビー・フーパーの『悪魔のいけにえ』(1974)と、新人監督の鮮烈なデビュー作となったホラー映画。

同様の作品をこの時代に求めるなら筆頭は間違いなく、サム・ライミ監督が35万ドルで製作し世界的ヒットを飛ばした、今やホラー映画の古典的名作の1つとなった『死霊のはらわた』でしょう。

主人公を演じた監督と幼馴染みのブルース・キャンベル、編集スタッフとして参加したコーエン兄弟のジョエル・コーエンと、後に活躍する人物を輩出したことでも注目されています。

本作の特徴は徹底した人体破壊。悪趣味の限りを尽くした作品ですが、徹底的に突き抜けた描写はシュールであり、笑いすら誘います。

子供のころから1930年代から映画でも活躍した、『三ばか大将』シリーズの熱心なファンだったサム・ライミ。

本作に登場する緊張と緩和繰り返し、ナンセンスで笑いを誘う描写は、こういった古典的コメディ映画から学んだものでした。

この笑いの要素は続編『死霊のはらわたⅡ』(1987)、『キャプテン・スーパーマーケット』(1993)で加速。三部作を通して見れば、彼の真の狙いが何であったか確認できます。

そして本作の成功に倣って、徹底した人体破壊やブラックな笑いを売りにするホラー映画が、次々誕生することになりました。

【映画『死霊のはらわた』のあらすじ】

楽しい休暇を過ごそうと森の小屋を訪れたアッシュ(ブルース・キャンベル)、姉のシェリル、恋人のリンダ、友人のスコットと彼の恋人のシェリーの若者5人組。

彼らは小屋の地下で魔導書「ネクロノミコン」と、それに記された呪文を録音したテープを見つけ、好奇心から再生します。その呪文は森に封じ込められた悪霊を蘇らせます。

悪霊に憑依されたシェリルは、ゾンビのような死霊と化し襲いかかり、その犠牲者も死霊となります。死霊を倒す方法はただ1つ、体をバラバラに切断することだけでした。

死霊となった仲間にチェーンソーなどの凶器を向け、血みどろの死闘を繰り返すアッシュ。悪夢のような惨劇の夜は、いかなる結末を迎えるのか…。

インディーズ映画を作る人々に勇気を与えた作品

『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』も『悪魔のいけにえ』も成功を収めましたが、公開時はキワモノ映画、暴力ポルノといった扱いを受けていました。

しかしビデオが普及した時代に登場した『死霊のはらわた』は、ホラー映画ファンのみならず世界中の若者の間で、見るべき過激で刺激的な娯楽として広まっていきます。

当時は殺人鬼ジェイソンでお馴染み『13日の金曜日』(1980)や、フレディが登場する『エルム街の悪夢』(1984)に、殺人人形チャッキーの『チャイルド・プレイ』(1988)がシリーズ化された時代。

ティーン層を中心とした多くの若者にとって、映画館やビデオでホラー映画を見る行為は日常の一部でした。ホラー映画はポップカルチャーとして受け入れられていました。

『死霊のはらわた』の成功を目撃した、映画製作を目指す若者たちの中からホラー映画を作る者も続々現れます。

その代表がピーター・ジャクソン。彼は4年半の歳月をかけ製作した、悪趣味SFコメディホラー映画『バッド・テイスト』(1987)で監督デビューします。

その後『死霊のはらわた』テイストの強いホラー映画、『ブレインデッド』(1992)で世界的な評価を獲得、後の活躍の礎を築き上げました。

ホラー映画が世界的人気を博し、作り手も輝いていた、熱い時代の出来事です。

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第3位『ZOMBIO死霊のしたたり』(1985)


©ポニーキャニオン

映画『ZOMBIO死霊のしたたり』の作品情報

【原題】
Re-Animator

【製作】
1985年(アメリカ映画)

【監督・脚本】
スチュアート・ゴードン

【キャスト】
ジェフリー・コムズ、ブルース・アボット、デヴィッド・ゲイル、バーバラ・クランプトン

【作品概要】
『死霊のはらわた』が切り開いた、エロとグロの悪趣味とブラックユーモアが融合したホラー映画の中で、最高峰と呼べる作品。

テレビの普及と共に衰退し、ビテオの登場で更に混迷を深めた80年代の映画業界。大手映画会社が今後を模索する中、ホラー映画などのジャンル映画の製作で勢いづく製作会社も登場します。

そんな会社の1つで、この時代に生まれ消えていったエンパイアピクチャーズが生んだ作品の中で、最も人気のコメディ・ホラーが『ZOMBIO死霊のしたたり』です。

『死霊のはらわた』に登場する魔導書「ネクロノミコン」など、H・P・ラヴクラフトの生んだクトゥルフ神話からヒントやモチーフを得た、ホラー映画は数多く誕生しています。

本作はH・P・ラヴクラフトの著作、「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」を映画化した作品。しかし舞台を現代に移し、マッドサイエンティストとゾンビ映画を絡めた怪作です。

監督はスチュアート・ゴードン。そして主演のジェフリー・コムズが演じたハーバート・ウェストは、今もホラー映画ファンの間で愛されるキャラクターとなりました。

【映画『ZOMBIO死霊のしたたり』のあらすじ】

スイスの大学から、アメリカのミスカトニック医科大学にやって来た医学生のハーバート・ウェスト(ジェフリー・コムズ)。彼は死者を蘇生させる血清を開発に成功していました。

ウエストのルームメイトとなったダン(ブルース・アボット)は、彼の気難しい性格に戸惑いながらも、好奇心から死体蘇生の実験に手を貸すことになります。

完全な死体蘇生の成功には、死んで間もない「新鮮な」死体が必要だ、と無謀な実験を繰り返すウエスト。そして蘇生薬の存在に気付いたヒル博士(デヴィッド・ゲイル)は、我が物にしようと企てます。

やがてダンの恋人メイガン(バーバラ・クランプトン)も、ウエストの実験が生んだ混乱に巻き込まれます。狂気の実験で蘇った死者たちが、想像を越えた惨劇を引き起こします…。

悪趣味の極みがナンセンスな笑いを生む

80年代のゾンビ映画、そしてホラーコメディ映画の代表として本作を選びました。

本作と競ったのが、同じ年に誕生したダン・オバノン監督・脚本作品の『バタリアン』(1985)。『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のパロディで、「脳ミソを欲しがるゾンビ像」を生んだ作品です。

続々とホラー映画が生まれ、ビデオで古今東西の作品が鑑賞可能となり、多くのホラー映画ファンが生まれた80年代。

この環境が過去のホラー映画を踏まえた作品や、パロディ化した作品の登場を可能にしました。

『サンゲリア』(1979)以降も、グロテスク描写にこだったルチオ・フルチ監督の『地獄の門』(1980)、『ビヨンド』(1981)のような、残虐描写に徹したホラー映画も現れます。

しかし残酷シーンは黙って見つめるより、ナンセンスだと笑い飛ばして見るのが好き、という方には『ZOMBIO/死霊のしたたり』は痛快この上ない作品です。

あらゆるものを笑い飛ばす、悪ノリの極みのホラー映画『悪魔の毒々モンスター』(1984)などを生んだトロマ社が大活躍したのもこの時代です。

人の死を残酷かつ不謹慎に描くホラー映画に、顔をしかめる方もいるはずです。

しかし江戸時代に生まれた古典落語や歌舞伎、19世紀フランスで人気を博したグラン・ギニョールなど、多くの国で残酷を売りにした見世物が生まれ、それを笑いに昇華した出し物が誕生しています。

恐怖に魅かれ、恐怖を楽しみ、恐怖を笑おうと望むのが人の性。これは今後も変わらないでしょう。

第2位『スペースバンパイア』(1985)


日本ヘラルド映画

映画『スペースバンパイア』の作品情報

【原題】
Lifeforce

【製作】
1985年(イギリス・アメリカ合作映画)

【監督】
トビー・フーパー

【キャスト】
スティーブ・レイルズバック、ピーター・ファース、フランク・フィンレイ、マチルダ・メイ、パトリック・スチュワート

【作品概要】
1980年代B級映画を製作しヒットを連発、急成長を遂げたキャノン・フィルムズ。その盛衰はドキュメンタリー映画『キャノンフィルムズ爆走風雲録』(2014)でご覧頂けます。

キャノン・フィルムズの製作陣が『悪魔のいけにえ』(1974)のトビー・フーパーを監督に招き、巨額の予算をかけ製作したSFホラーです。

エイリアン』(1979)の原案・脚本を務め、『バタリアン』を監督したダン・オバノンが脚本に参加、音楽はヘンリー・マンシーニと「豪華なB級映画」と言うべき大作映画。

過去にも宇宙を舞台にしたSF・モンスター映画は存在しています。しかし『エイリアン』以降、VFX技術の進歩と共に宇宙を舞台にしたホラー映画が続々誕生します。

80年代に旋風を巻き起こした映画会社が製作し、ホラー映画界の名士が結集して生まれた、時代を象徴する作品です。

決して画面に裸身を晒す、マチルダ・メイの姿で選んだ訳ではありません。

【映画『スペースバンパイア』のあらすじ】

76年周期で地球に接近するハレー彗星。1986年、調査に向かったスペースシャトル「チャーチル号」は、彗星に隠れるように潜む謎の宇宙船を発見し、調査を行った後連絡を絶ちました。

救援に向かったシャトルは、破損した「チャーチル号」の船内で乗組員の遺体と、彼らが宇宙船から回収した異星人が眠る、3つのカプセルを発見します。

カプセルはロンドンの宇宙センターに運ばれます。そこで女性型エイリアン(マチルダ・メイ)が目覚め、警備員の生命エネルギーを吸収して逃亡、ロンドンの街に姿を消します。

同じころ「チャーチル号」のカールセン船長(スティーブ・レイルズバック)が、脱出カプセルで地球に帰還。彼は回収したエイリアンは、人類にとって危険な存在だと証言します。

人間の生命エネルギーを吸う、宇宙バンパイアの様なエイリアン。その犠牲者も人間の生気を求めるバンバイアと化し、被害は拡大していきます。

ケイン大佐(ピーター・ファース)はカールセンと共に事態の収拾に動きますが、バンパイアが溢れたロンドンの街は、破壊と混乱に渦に巻き込まれます。

その頃、ハレー彗星と共に地球に接近した宇宙船が、ロンドン上空に姿を現します…。

宇宙やSFを舞台に描かれる新たな恐怖

様々なホラー映画が生まれる中、80年代にはSF的題材に恐怖を求める作品が数多く現れます。

その代表が地球上の生物に同化・擬態する怪物を特殊効果で創造し、ホラー映画のモンスターの姿に革命をもたらした、ジョン・カーペンター監督作『遊星からの物体X』(1982)。

同様の奇怪なクリーチャーを、科学者の実験が生むデヴィッド・クローネンバーグ監督作『ザ・フライ』(1986)。2作共50年代のSF怪奇映画を、劇的に発展した特殊メイクを駆使してリメイクした作品です。

宇宙を舞台にしたホラー映画なら、『エイリアン』の続編でSF、アクション映画としても高い評価を得たジェームズ・キャメロン監督作『エイリアン2』(1986)も捨てがたい作品です。

しかし新興映画会社とホラー映画の若きクリエイターが手を組み製作した、当時の空気を伝えるド派手な作品『スペースバンパイア』をSFホラー映画代表に選びました。

無理に詰め込んだ様々な要素を、強引だがテンポよく処理して、壮大なクライマックスに突き進む本作は、B級映画を愛する人にはハマる作品です。

キャメロン監督の『ターミネーター』(1984)やポール・バーホーベン監督の『ロボコップ』を生んだオライオン・ピクチャーズ。

アクション映画『ランボー』(1982)で有名なカロルコ・ピクチャーズなど、時代の勢いに乗った製作会社が活躍した80年代。

熱気が収まると共に、こういった製作会社の多くが姿を消していきました。そんな時代を代表する映画としても、『スペースバンパイア』に触れてみて下さい。

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第1位『フェノミナ』(1985)


©1984 TITANUS

映画『フェノミナ』の作品情報

【原題】
Phenomena

【製作】
1985年(イタリア映画)

【監督・脚本・製作】
ダリオ・アルジェント

【キャスト】
ジェニファー・コネリー、ダリア・ニコロディ、ダリラ・ディ・ラザーロ、パトリック・ボーショー、ドナルド・プレザンス

【作品概要】
70年代からイタリア映画界で、ジャッロ(犯罪映画、ジャーロとも表記する)やホラーを手掛けてきたダリオ・アルジェント。

鮮烈な殺人シーンや強烈な色彩が印象に残る映画を手がけ、『サスペリア』(1977)はその代表作です。ホラー映画界のビックネームの作品を紹介します。

と意気込んだものの、音と映像にこだわるスタイリッシュな彼の作品は、時にそれを重視するあまり、本編から脱線したようなシーンが挿入されることも多々あります。

そんな不安定要素も、B級ホラー映画ファンにはたまらない魅力。しかしジェニファー・コネリー演じるヒロインが物語の軸となる『フェノミナ』は、そんな揺らぎが少ない作品です。

ジャッロの謎解きの魅力、無残な死やグロテスクな死体を見せる残虐性、超能力などが登場するファンタジー性。

そして周囲から孤立しながらも邪悪な犯人に立ち向かう、美少女の魅力が融合したホラー映画の傑作です。

日本では第1回東京国際ファンタスティック映画祭の、記念すべきオープニング作品として披露され、ジェニファー・コネリーの魅力と共に多くのファンを持つ映画です。

【映画『フェノミナ』のあらすじ】

スイス・チューリッヒ郊外では、若い少女が犠牲となる連続殺人事件が発生していました。

そこにある寄宿制女子学校にジェニファー(ジェニファー・コネリー)が転入します。持病の夢遊病の影響で夜の学校をさまよう彼女は、殺人を目撃します。

彼女は虫と交信することができる不思議な能力を持っていました。しかし校長から異常者と扱われ、生徒たちからも気味悪がられたジェニファーは、次第に孤立していきます。

犠牲者の遺体にたかる虫から死亡時期を推定し、警察の捜査に協力する老昆虫学者のマクレガー教授(ドナルド・プレザンス)は、彼女に興味を持ちました。

体の不自由なマクレガーは、自分の親友で手足として働くチンパンジーと共に暮らしていました。自らの能力が事件解決の糸口になると気付いたジェニファーは、老教授に協力します。

校長の手で精神病院に入れられそうになったジェニファーは、マクレガーの元に逃げ込みます。しかし真相に近づいたマクレガーは、何者かの手により殺害されます。

教授の死にによって、自らの身に迫る危険を確信したジェニファー。事件の真犯人は、彼女の身近に存在していました…。

スクリームクイーンから美少女アイドル、アカデミー女優へと成長

1位に選ぶ作品は独断と偏見、そして自分の趣味に忠実に従って選びました。

ホラー映画、そしてジャンル映画の大切な要素、それはお色気の担当でもある女優、スクリームクイーンです。

『ZOMBIO死霊のしたたり』のバーバラ・クランプトンはファンに強烈な印象を残し、今も影響を受けた若いクリエイターの映画に出演するB級映画界の顔の1人。

『スペースバンパイア』で一気に知名度を上げたマチルダ・メイは、その後各国で幅広いジャンルの作品に出演して実績を積み、今も活躍しています。

一方でスラッシャー映画の「脱ぎ要員」「殺され要員」として、多くの女優が消費されたのも事実です。

セクハラ騒動でハリウッドを騒がせ、#MeToo運動のきっかけとなったハーヴェイ・ワインスタインの初製作映画は、スラッシャー映画『バーニング』(1981)でした。

ホラー映画の製作現場には、時に過酷な側面があったことを忘れてはいけません。

一方で多様なホラー映画の誕生は、『エイリアン2』でシガニー・ウィーバーが演じたリプリーのような、闘うヒロイン像を新たに生みました。

当初『フェノミナ』の主役に、実娘フィオーレ・アルジェントの起用を考えていた監督。しかし製作陣からオーディションで決めるよう指示されます。

そして前年『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984)で映画デビューしたジェニファー・コネリーが選ばれます。(その結果フィオーレは、冒頭で殺される役になります)。

女優の演出に定評のあるアルジェントは、彼女を軸にミステリーと残酷趣味とファンタジーが融合し、ロックバンド”ゴブリン”のサウンドに彩られた作品を誕生させました。

可憐なヒロインが悪夢の世界の案内人となり、恐怖に立ち向かう展開は『ヘルレイザー』(1987)や、『エルム街の悪夢3 惨劇の館』(1987)以降の「エルム街」シリーズに引き継がれます。

この後スクリーンアイドルとなったジェニファー・コネリーは、様々な活躍を経て『ビューティフル・マインド』(2001)でアカデミー賞を受賞、今や世界的トップ女優の1人です。

美少女ホラー映画として成功した『フェノミナ』ですが、流石はジャッロの巨匠アルジェント。

本作に登場する「遺体にたかる虫から死亡時期を推定」という捜査手法は、次の時代のホラー系作品のトレンドを先取りしていました。

まとめ

巨匠の作品、インディーズ、コメディ、SF、ヒロインの各分野から選んだ【80年代の洋画ホラー映画5選】は以上となりました。

お題から外れた作品は選んでいないのでお許しを。ビデオ市場を目指し、あらゆる国であらゆるホラー映画が作られた夢のような時代。5作品を選ぶのに苦労しました。

しかしブームには、必ず陰りが訪れます。即席乱造されたホラー映画には低質な作品も多く、観客に飽きられ始めます。

すると今度は、マニアをターゲットにして内容は過激化、一般客はますます離れる悪循環が生まれます。

内容の過激化に厳しい目が向けられました。多くのヨーロッパ各国では、そもそもホラー映画は「暴力ポルノ」的扱い。

イギリスでは1984年ビデオレコーディング法が成立、ビデオ化される映画は劇場公開される映画より厳しい審査を受け、発売できない作品も登場します。

マニアたちは様々な手段で、規制の対象となった作品を見ようと苦心していました。

日本では80年代末に起きた連続殺人事件の犯人が、ホラー映画を含む大量のビデオを所持していたと報道されると、ホラー映画やオタク文化に対する激しいバッシングが起きます。

アメリカも同様で、ホラー映画に対するレイティング姿勢は厳しくなります。

一方で一般向け・ファミリー向け映画の暴力描写を「保護者の注意が必要」と指定するにとどめるなど、ある程度の表現を許容する動きが現れました。

こうして大作映画にホラー要素を加えることが可能になりました。現在のハリウッド娯楽映画のスタイルが、この頃に完成したとも言えるでしょう。

様々な制約を逃れた場所ではホラー映画の量産が続きますが、80年代末には停滞感が漂い始めます。

この状況を打破する作品は現れるでしょうか。80年代のホラー映画が熱かった時代を踏まえた作品が、90年代に登場します。

【連載コラム】『増田健ホラーセレクション』一覧はこちら







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