映画『ゴジラvsコング』は2021年7月2日(金)よりロードショー
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)に続く「モンスター・バース」シリーズ第4弾となるアクションアドベンチャー『ゴジラvsコング』。
ハリウッド映画にて日本を代表する怪獣ゴジラと怪獣の元祖キングコングとが対決する様子が描かれます。はたして勝つのはどちらか。
この度、満を持して日本に上陸した二大怪獣による夢の頂上決戦『ゴジラvsコング』のあらすじと内容解説を、ネタバレありでご紹介します。
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映画『ゴジラvsコング』の作品情報
(C)2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC
【日本公開】
2021年(アメリカ映画)
【原題】
Godzilla vs Kong
【監督】
アダム・ウィンガード
【キャスト】
アレクサンダー・スカルスガルド、ミリー・ボビー・ブラウン、レベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリー、小栗旬、エイザ・ゴンザレス、ジュリアン・デニソン、カイル・チャンドラー、デミアン・ビチル、ランス・レディック、ケイリー・ホトル
【作品概要】
ギャレス・エドワーズ監督作『GODZILLA ゴジラ』(2014)から始まる「モンスター・バース」シリーズ第4作目。第2作目にあたる『キングコング 髑髏島の巨神』(2017)に登場したコングと第3作目『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)にて「怪獣の王」となったゴジラの対決を描く。
監督は『ブレア・ウィッチ』(2016)、Netflix実写版『Death Note デスノート』(2017)で知られるアダム・ウィンガード。音楽を担当したのは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2016)、『ターミネーター:ニュー・フェイト』(2019)などで知られるジャンキーXL。
映画『ゴジラvsコング』のあらすじとネタバレ
(C)2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC
ゴジラが怪獣の王として君臨してから5年後の世界。髑髏島らしきその場所で、コングは生活を送っていました。
朝起きて滝壺をシャワー代わりにするというルーティンをこなし、上空へ向かって大木を投げるコング。大木は上空で粉々になり、髑髏島の周囲に張られているバリアが剥き出しになります。
そこは「タイタン」と称される怪獣たちを研究する特務機関「モナーク」の第236前哨基地であり、年々巨大化しつつあるコングを収容していた施設だったのです。
閉じ込められている苛立ちを露わにし、空へ咆哮するコングを心配そうに見つめる少女の姿がありました。彼女の名はジア。髑髏島に古くから住むイーウィス族の孤児で、モナークの研究者アイリーンに養われていました。
コングの様子を心配して施設内部で視察に来たアイリーン。施設は今のコングにとって不十分であるとして、コングの別施設への移送を考えていました。
しかし移送のためコングを地上に出すと、同じアルファ級タイタンであるゴジラがコングの存在を察知し、出現する危険性があるとの懸念がありました。
両者が対面したら、どちらかが死ぬことになる。怪獣の王によって生態系のバランスが保たれるという自然の摂理に人類は従うしかありません。
同じ頃、巨大企業エイペックス社が怪獣にまつわる研究を行なっていると睨み、自身のポッドキャストにて壮大な陰謀論を語るバーニー。彼は技術者としてエイペックス社に潜入し、陰謀の証拠を調査し続けてきました。
ある時、フロリダ州ペンサコーラにあるエイペックス社のサーバーへ侵入したバーニーは、同社が何か巨大なメカを香港へ輸送する計画を知ります。
すると施設内で突如警報が鳴り、研究員含む作業員たちは避難を開始しました。海底から研究所近くへゴジラが上陸したのです。
避難の済んだ研究所内を探索したバーニーは、資料で見たメカを発見。そのメカから発せられるシグナルにゴジラは呼び寄せられたようです。
ゴジラによる襲撃をニュースでみたマディソンは、バーニーのポッドキャストによって研究所を狙ったゴジラの襲撃は偶然ではないことを知ります。
マディソンはペンサコーラの避難所にいた父親マークのもとへ行き、ゴジラは目的もなく街を襲っているわけではないと訴えますが、マークは聞く耳を持ちませんでした。
その頃、地球空洞説を研究していた元モナーク地質学者ネイサンのもとへ、エイペックス社のCEOウォルター・シモンズとエイペックス社の主任研究員にして芹沢猪四郎の息子である芹沢蓮が現れ、地下空洞世界を利用した対ゴジラ兵器の開発に彼を誘いました。
共同研究者だった兄が地下空洞世界の特殊な重力によって事故死したことで地下空洞世界の調査を断念していたネイサン。しかしエイペックス社の空洞世界移動マシン「H.E.A.V(ヒーブ)」の開発により調査が可能になったことで、兵器開発のオファーを受けました。
アイリーンは、かつての同僚であるネイサンから地下空洞世界の調査の件を聞き、「コングこそが人類を地下空洞世界へ導く存在である」というコングの帰巣本能を利用した彼の提案により、コングの南極への輸送を決断しました。
故郷である髑髏島を離れたコングは怒りと悲しみを抱えていました。アイリーンはジアが手話を通じてコングと意思疎通が出来ることを知ります。そしてジアから、コングが人間を信頼しておらず、故郷へ帰りたがっていることを伝えられました。
一方、ゴジラとエイペックスの陰謀を追うマディソンは、友人のジョシュとともにポッドキャストの配信者であるバーニーの居場所を突き止め、彼とコンタクトを取ります。
最近のゴジラによるエイペックス社関連施設の襲撃は偶発的なものではなく、エイペックス社が何かゴジラにとって脅威となるものを秘密裏に開発しているせいではとマディソンとバーニーは考えていました。そこでマディソン、バーニー、ジョシュの3人はエイペックス社に潜入し、社内で開発中と思われるゴジラに関係する何かを探ろうとします。
コングの輸送が進められる中、アイリーンが危惧していた通り、その存在を察知したゴジラが海底より出現。輸送船を含めた周辺の艦隊を破壊します。
海中で対峙するコングとゴジラ。揉み合いになりながらも、コングは輸送船のデッキに上がります。何かを察知して空母のデッキへ乗り移るコング。続いてゴジラも同じデッキ上にあがります。
ゴジラが上がってきたタイミングを狙ったコングの強烈な一撃がゴジラを直撃。すかさずゴジラも鋭い爪でコングを狙い、続けざまに放射熱線を浴びせようと身体を青白く光らせるものの、背後からの戦闘機の爆撃に阻まれました。
その隙を見たコングのタックルで海中へと戻されるゴジラ。すぐさま上空へ向かって放射熱線を放ちます。足下が青白く光るのを見たコングはすぐさま海へダイブし、熱線を避けました。
再び海中で揉み合いになったコングとゴジラ。爆音とともにコングが輸送船のデッキへ上がりました。辺りを火の海へと変えた後、ゴジラはその場を去るコングを乗せた輸送船を見送り、何処へともなく消えていきました。
ゴジラの襲撃を受けたエイペックス社の施設へ侵入するマディソン、バーニー、ジョシュの3人。瓦礫の奥へと進み、以前バーニーが見たというメカのあった場所へ辿り着きますが、そこには何もありませんでした。
しかしマディソンが奥へと進むと、施設の最深部へと続く地下エレベーターを発見。そこには髑髏島に生息していたスカル・クローラーの卵が保管されていました。
突如、轟音とともに閉まる扉。3人は知らず知らずのうちにヒーブの中へ乗っていたのです。3人を乗せたヒーブは、ペンサコーラを出発。地球の中心部を通り香港へと辿り着きました。
南極大陸に存在する地下空洞世界の入り口へと到着したコング。ジアはコングに地下空洞世界こそがコングの故郷なのだと告げます。ネイサン、アイリーン、ジア、そしてシモンズの娘マイアを乗せた2機のヒーブが、コングの後に続いて地下空洞世界へ向かいました。
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映画『ゴジラvsコング』の感想と評価
(c)2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC
おまけの人間ドラマ
本作はコンセプトの共通している東宝版『キングコング対ゴジラ』(1962)のリメイクではなく、「モンスター・バース」シリーズ4作目にあたる完全オリジナルの作品です。
しかしながら、過去作を連想させるオマージュの数々が捧げられており、完全に独立したオリジナル作品としての面白さだけで成立した作品ではないことも確かです。
特に劇中の登場人物たちが、この世に怪獣が存在することを当たり前として生きている空気感など、往年の東宝作品と非常に似通っており、本作の雑多な世界観には懐かしさを感じさせます。
一度あったクロスオーバー企画をハリウッド映画化したのは、旧作『キングコング対ゴジラ』(1962)にて、自国のキャラクターを敗者にすることを避けたい日米のスタジオの協議によって、勝敗が描かれなかったためでした。
本作ではゴジラとコングとの対決に明確な決着がつき、敗者であるコングを中心に物語を展開し、クライマックスの見せ場もコングに与えるという、ゴジラにもコングにも華を持たせた理想的な配分でした。
ただ「モンスター・バース」全体的な傾向というよりも、前作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)から顕著になったあまりにも荒削りとなったキャラクター描写、人間ドラマについては触れておかなくてはなりません。
シリーズファンにとってはもはや自明のことでしょうが、荒唐無稽なサブプロットが重なった結果、辻褄が合わなくなった設定、物語の都合で動かされるキャラクターの記号的な感情表現が見られるのは確かです。
本作は緻密で奥深い舞台背景やアクションシーンの情報量など、超大作映画ならではの高い解像度を誇る反面、作品のリアリティラインは極端に下がってはいます。
これは作り手が長年の怪獣ファンに対し、過剰なサービスをしようとした結果、最低限は必要とされる理路整然としたストーリーやキャラクターの行動原理への配慮に欠け、怪獣描写に注力し過ぎてしまった所以でしょう。
似たような作品である1作目の『パシフィック・リム』(2013)や『ランペイジ 巨獣大乱闘』(2018)のようにジャンル的な気配り、美意識の徹底もさることながら映画としても教科書のような展開の重ね、起承転結があるような丁寧な映画を本作の制作スタッフは誰一人として心がけていなかったのでしょう。
良くも悪くも本作は、非常に表層的な形で「怪獣アクション」と「異世界アドベンチャー」を取り込んだ“お祭り作品”なのです。
怪獣映画におけるこのバランスの悪さは、その世界での命の重さに符合していると言い換えることもできます。老若男女をターゲットにした結果、グロテスクな死亡シーンは控え目になり、怪獣の足元で右往左往する人間にも死の危険性といったスリルは感じられません。
「モンスター・バース」の人間たちは、怪獣同士の頂上決戦に巻き込まれて大変な目に遭う脇役に過ぎず、オフカメラで呆気なく死ぬか、ホコリをかぶりながらも、なんだかんだ生き残るかの2択というお約束があります。
明確な悪役もおらず、悪行に対する制裁も存在しないこの世界では、「殺す」のではなく、「やっつける」と表現がマイルドになった結果、人間ドラマにおける極端な情緒や観客の心を掴むセンシティブな描写、それゆえのカタルシスは無くなってしまいました。
人間の生命倫理と怪獣の倫理に関する噛み合わせの悪さが、その世界に生きる登場人物たちへの感情移入の障害になっているのです。
シリーズに共通してゴジラとコング、二大怪獣の命が最優先。人命は二の次と予め断られているため、観客も足元の人間よりビルを壊しながら戦っているゴジラを心配してしまいます。果たしてそれは怪獣を偏愛する作り手たちの思惑通りなのでしょうか。
外世界と内世界を統べる王
(c)2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC
本作に対する代表的な否定的意見とその原因について触れましたが、それは本作が二大怪獣のバトルを描くというハイコンセプトを愚直に通した結果、取りこぼしてしまった一般映画に求められるモラルのようなものです。
同様の物差しで映画を判断しない肯定派にとっては、そもそも上がっている土俵が違うため議論にならないのではないでしょうか。
怪獣映画というジャンルが本質的に抱える雑ささえもギミックとして取り込んだバイキングのような本作は、あらゆる演出、取るに足らない些細な伏線を摘んで楽しむことができます。
それは本作が観客に自己解釈させて、背景や裏設定を妄想させるような二次創作の許容範囲が異様に広いことを意味しています。
例えば本作の魅力的な導入であり、1作目の『GODZILLA ゴジラ』(2014)以降シリーズ恒例となっているカイル・クーパーによるお馴染みのオープニングモンタージュ。
今回は「地球空洞説」に基づいて怪獣と人類が歩んだ擬似歴史が描かれ、古代よりゴジラとコングの先祖が対決していた過去が明かされました。
「地球空洞説」はシリーズ2作目『キングコング 髑髏島の巨神』(2017)でも髑髏島独自の生態系に対する説明として登場しており、現実世界でも17世紀より親しまれてきた有名なSF設定です。
モンタージュ内で一瞬映る「空洞地球の調査 1926年」は、フランスの思想家ルネ・ゲノンの著作『世界の王(原題:The King of the World) 』に対する言及ではないかと考察します。
本作における世界の王とは、地上の怪獣王だけでなく別世界=地下空洞世界でトーナメントを勝ち抜いてきたコングを倒すことで、地球全体を統べるチャンピオン・ゴジラを意味しています。
小説『世界の王』では中央アジアのシャンバラから地球内部にある理想の王国「アガルタ」へ向かうまでが描かれており、本作の地下空洞世界にも共通していますし、SF冒険小説の古典『地底旅行』をはじめとした数多くのSF作品で描かれてきた定番でもあります。
また本作の地球空洞描写として、地球のコアを通り反対の大陸へ出るという設定はリメイク版『トータル・リコール』(2012)に登場する巨大エレベーター「ザ・フォール」に似ていたり、南極から地下空洞世界へ出るシーンでは『2001年宇宙の旅』(1968)のモノリス内を思わせるシーンがあったりと、古今東西あらゆる作品のオマージュが数多く食傷気味ともいえる過剰演出がさえ渡っていました。
事ほど左様に本作は面白いではなく楽しいと形容するのが適切で、理屈や整合性を度外視した見栄え重視の作品作りが徹底されており、目の保養に全振りした「アイキャンディが永遠に続く映画」なのです。
理屈のない楽しさだけで2時間の映画を成り立たせているのは、かつてない規模のお祭り映画としては正解なのではないでしょうか。
ビッグバジェットで描かれるコングとゴジラの壮絶なバトルをこれまで無かったカメラワーク、CGならではのトンデモアングルで見せ、アクションシーンにおけるアトラクション性、ライド感を極限まで高めていました。
特に香港を舞台にした夜の決戦シーンでは、高層ビルのネオンがコングとゴジラを妖しく照らし、超規模の怪獣バトルが始まる恍惚感に包まれました。本作が2024年という近未来を舞台とした作品である必然性はここにこそあったのではないでしょうか。
香港のネオン街は映画『ブレードランナー』(1982)の近未来2019年のロサンゼルスのランドスケープのモデルになったことでも有名です。
近未来のイメージもさることながら、香港を舞台にしたことで、高層ビルという西洋文化的な都市設計に、極彩色のネオンと漢字の看板といった東洋文化とが融合したコンプレックスを表現でき、コングとゴジラ、西洋と東洋の対決を立地的に表すことも可能となりました。
このシーンではコンセプトアートにもあった高層ビルのタワーに、片手で掴まり地上のゴジラを見下ろすというオリジナル『キングコング』(1933)へのオマージュシーンもあり、都会のジャングルを高低差を利用してゴジラに挑むコングの様子を視覚的に捉える効果もありました。
また、平成ゴジラファンにとっては最終作である『ゴジラvsデストロイア』(1995)の冒頭で、バーニングゴジラが出現した場所でもあり、香港が二重三重に奥深いロケーションであったことが伺えます。
まとめ
(c) 2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC
お祭り作品として、アジテーションの如くアクション、アクションの釣瓶うちで、終盤に向かって盛り上がる大興奮の一作です。
必要最低限の人物描写やリアリティを度外視した作風を肯定的にとるか否定的にとるかは観客個人に委ねられますが、ハイコンセプトに従ってゴジラとコングとの対決を決着までキチンと見せたという意味で、本作は絶対に観なくてはならない怪獣映画です。
トーナメントを勝ち抜いたゴジラとコングの頂上決戦を見せ、もはや飽和状態になった本作の続きが作られたとしても、本作と同じ方向性で盛り上がることはもう2度とないでしょう。
チャンピオン戦にあわせてEXバトルまで付いてくる超お得な『ゴジラvsコング』は、繰り返し観ても興奮が一切冷めないアトラクション性の極まった娯楽作品のチャンピオンでした。