伊坂幸太郎×ブラット・ピット
“世界一運の悪い殺し屋”が辿り着く結末は?
2022年9月1日(木)より日本公開された映画『ブレット・トレイン』。
復帰したばかりの殺し屋・レディバグが、ある依頼を果たすために東京発・京都行きの東海道新幹線に乗り込むも、乗り合わせた10人の殺し屋たちとの一触即発の状況に巻き込まれます。
伊坂幸太郎の小説『マリアビートル』を原作に、デヴィッド・リーチ監督がブラッド・ピット主演で映画化した本作。
本記事は映画『ブレット・トレイン』のネタバレ有りあらすじをご紹介。そして本作を手がけたデヴィッド・リーチ監督とその過去作を解説していきます。
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映画『ブレット・トレイン』の作品情報
(C) 2022 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.
【公開】
2022年(アメリカ・日本・スペイン合作映画)
【原作】
伊坂幸太郎『マリアビートル』
【監督】
デヴィッド・リーチ
【キャスト】
ブラッド・ピット、ジョーイ・キング、アーロン・テイラー=ジョンソン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、アンドリュー・小路、真田広之、マイケル・シャノン、バッド・バニー(ベニート・A・マルティネス・オカシオ)、サンドラ・ブロック
【作品概要】
ブラッド・ピット主演のミステリー・アクション映画。
「殺し屋」シリーズ第2作にして、累計300万部を超える大ヒットを記録した伊坂幸太郎の小説『マリアビートル』を、『デッドプール2』(2018)『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019)などで知られるデヴィッド・リーチ監督が大胆な脚色によって映画化。
映画『ブレット・トレイン』のあらすじとネタバレ
(C)2022 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.
トーキョーの病院。キムラは、父親が不在の間に屋上から突き落とされ重態の息子・ワタルを見守っていました。
そこへキムラの父である“エルダー(長老)”が訪れ、「父親は家族を守るものだ」と叱責。キムラは息子を手にかけた犯人を捜しに向かいます。
時を同じくして、休暇を終えた殺し屋“レディバグ”は仕事に復帰。別の殺し屋“カーバー”が体調不良のため、その代打として呼ばれました。
レディバグは仲介者“マリア・ビートル”より連絡を受け、東京から京都へ向かう新幹線に乗り込むよう命じられます。仕事内容は、取手にステッカーが貼られた大金の入ったブリーフケースを回収すること。
同じ新幹線に乗り込んだのは、双子の兄弟暗殺者である“タンジェリン”と“レモン”。彼らは“ホワイト・デス”と呼ばれるマフィアのボスから、放蕩息子を連れ戻すために送り込まれていました。
人生の教訓は『きかんしゃトーマス』で学んだと語るレモン。隙あらばのトーマス語りで兄弟のタンジェリンを困らせます。
タンジェリンはレモンに、ホワイト・デスの正体について語ります。
ホワイト・デスは元々ロシア出身の放浪者であり、一時は峰岸組の右腕として奉公していたものの、結局は自分の組を立ち上げ、組長である峰岸を裏切り殺害したという過去がありました。彼の息子を京都まで送り届ける間、兄弟は何人殺したかについて議論をしていました。
ワタルを突き飛ばした犯人の手がかりをつかんだキムラも、同じく列車に乗り込みます。
犯人は、“プリンス”と呼ばれる女子高生の暗殺者。キムラと相対したプリンスは、ワタルを突き飛ばしたのはキムラを誘い出すためと明かします。
彼女はキムラの手を借り、細工したブリーフケースでのホワイト・デスの爆殺を企てていました。引き金をひくと撃った本人の頭が吹き飛ぶトラップ銃も隠し持っていたプリンスは、キムラに協力を強いるため、「病院に手下を送り、ワタルを人質に取っている」と脅します。
一方、レディバグは難なくブリーフケースを回収しますが、切符を持っていなかったことを車掌に指摘され、次の駅で降りるよう注意を受けます。
指示に従い、新横浜で新幹線を降りようとする彼の目の前に現れたのは、別の殺し屋“ウルフ”。レディバグは、ウルフとの因縁を回想します。
ウルフはエル・サグアロの仕切るカルテルで出世し、妻と出会いました。しかしその結婚式で、エル・サガロとウルフの妻を含め、全員が毒殺されてしまいました。そして犯人は、その場にカクテルウェイターとして居合わせていたレディバグだと考えたウルフは、彼への復讐に燃えていました。
バーの車両で取っ組み合うレディバグとウルフ。レディバグはウルフを殺し、その死体を隠した後マリアに電話をかけます。
彼女はウルフの結婚式で出されたテキーラに、トーキョーの動物園から盗まれた蛇の毒が混入していたこと、そして同じ蛇が列車の中にいることを告げます。
レモンとタンジェリンはブリーフケースがなくなっている上に、何者かによって毒殺されたホワイト・デスの息子を発見します。彼らは犯人と思しきレディバグを、京都に到着するまでに見つけようと奔走します。
その様子を隣の車両から見ていたレディバグは、ヨハネスブルグでレモンに銃撃された過去を回想します。
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映画『ブレット・トレイン』デヴィッド・リーチ監督解説
リーチ監督作の魅力は「アクション×音楽」
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ノンクレジットの『ジョン・ウィック』(2014)を除くと、デヴィッド・リーチ監督の実質的な長編監督デビュー作である『アトミック・ブロンド』(2017)。
同作の最大の魅力はやっぱりなんといっても、サンプリングに近いMAD動画的な音楽×アクション。80年代ヒット曲とスタントチーム「87North」によるアクションの融合です。
リズムとアクションが重なるこの生理的快感は、スタントアクションがミュージカルのダンスを凌駕することを証明し、「デヴィッド・リーチはアクションをリズミカルに組み立てる」ということがこの一作に反映されていました。
続く『デッドプール2』(2018)も「Take On Me」を効果的に使ったラブロマンス・ストーリーが感動的かつ、こちらも音楽とアクションにカタルシスがあり、リーチ監督の作家性として定着。
その次の『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019)はその作家性を決定的なものとした作品といって過言ではありません。
メインシリーズから独立したスピンオフとして単体で完結する明快なストーリー。ドウェイン・ジョンソンとジェイソン・ステイサムの2大スター共演。テクノロジーとサモアの伝統が正面対決するクライマックスバトル。筋肉×家族×勝利で結ばれた明朗な夏休み映画でした。
同作のリーチ監督らしさは冒頭から全開。ヴァネッサ・カービィ演じるハッティが、「Time in a bottle」とともにアクションが炸裂。
音楽のリズムとアクションの動き、これが完全に一致しているとコミカルに見えてしまうため、そこをどう外すかがセンスが試されるところ。リーチ作品に関してはサビの一瞬、ワンフレーズだけが完全に音と動きを一致させ、そこから外れていくことで、前段の一瞬噛み合った気持ち良さにカタルシスを宿しています。
まとめ
(C) 2022 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.
デヴィッド・リーチ監督作の最大の魅力は、「快楽」を重視したアクション。その中で、「ミステリー」そして「サスペンス」という新たな要素が加わえられたのが『ブレット・トレイン』です。
リーチ監督の作家性であり魅力でもある音楽とアクションの融合が、新たなストーリーの要素が加えられたことでどのような反応をみせるのか。
それはやはり、映画を実際に観てこそ確かめられるはずです。