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Entry 2017/04/01
Update

映画『スプリット』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

  • Writer :
  • リョータ
  • 西川ちょり

女子高生3人vs “23+1人”の攻防?!

M・ナイト・シャマラン史上最も衝撃的なラストが待ち受ける『スプリット』をご紹介します。

映画『スプリット』の作品情報

【公開】
2017年(アメリカ)

【原題】
Split

【監督】
M・ナイト・シャマラン

【キャスト】
ジェームズ・マカヴォイ、アニャ・テイラー=ジョイ、ベティ・バックリー、ジェシカ・スーラ、ヘイリー・ルー・リチャードソン

【作品概要】
『シックス・センス』、『アンブレイカブル』でおなじみのM・ナイト・シャマラン監督が放つ衝撃のサイコ・スリラー。

前作『ヴィジット』に引き続き、『パラノーマル・アクティビティ』や『インシディアス』を手掛けたジェイソン・ブラムが製作を務め、主演には『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』のジェームズ・マカヴォイ、共演にアニャ・テイラー=ジョイやベティ・バックリー、ジェシカ・スーラ、ヘイリー・ルー・リチャードソンを迎えている。

映画『スプリット』のキャスト一覧

ケヴィン / ジェームズ・マカヴォイ


(C)2017 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

スコットランド出身のジェームズ・マカヴォイは、1995年に『The Near Room』で映画俳優としてデビューを果たします。

主にイギリス国内のテレビや舞台で活躍した後、世界的に知られるようになったのは2005年の『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』のタムナス役でしょう。

この年、英国アカデミー賞ライジング・スター賞を受賞するなど一躍脚光を浴びることになったジェームズ・マカヴォイ。

翌年にはケヴィン・マクドナルド監督の『ラストキング・オブ・スコットランド』で英国アカデミー助演男優賞にノミネート、さらには2007年の『つぐない』でゴールデングローブ賞や英国アカデミー主演男優賞にノミネートされるなど評価を高めます。

2008年の『ウォンテッド』でハリウッド進出を果たし、2011年にはマシュー・ヴォ―ン監督の『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』で主人公チャールズ・エグゼビア(プロフェッサーX)を演じ、以降の同シリーズにも出演し続け人気を博しました。

その後もダニー・ボイル監督の『トランス』(2013)で主演を務めるなど、その勢いはとどまるところを知りませんね!

そんなジェームズ・マカヴォイが本作『スプリット』で演じているのは、なんと23もの人格がある異常者ケヴィン。

ジェームズ・マカヴォイという俳優にこういった役どころのイメージがあまりないので、一体どのように様々な人格を演じ分けてくれるのか?!注目して見ていきたいですね!

ケイシー / アニャ・テイラー=ジョイ

1996年にアメリカで生まれて間もなくアルゼンチンに移り住むことになったアニャ・テイラー=ジョイ。

6歳の頃にはイギリス・ロンドンに渡ってからようやく英語をはなすようになったのだとか。(アルゼンチンはスペイン語圏)

女優としては2015年にBBCで放送されたファンタジードラマ『Atlantis』の数話に登場し、デビューを果たします。

同年のテレビ映画『バイキング・クエスト』にも出演した後、ロバート・エガース監督の『The Witch』に出演。

2015年にサンダンス映画祭で初上映されたこのホラー映画での高い演技力により、一躍脚光を浴びることに。

その後『モーガン プロトタイプ L-9』(2016)、『バリー』(2016)と出演を重ね、本作『スプリット』に至るという訳です。

そんなアニャ・テイラー=ジョイが演じているのは、ケヴィンに監禁されることになる女子高生の1人であるケイシー。

一体彼女をどのような運命が待ち受けているのか?!要注目です!

クレア / ヘイリー・ルー・リチャードソン

1995年アメリカ・アリゾナ州生まれのヘイリー・ルー・リチャードソンがハリウッドデビューを果たしたのは、16歳の頃の『ラスト・サバイバーズ』という作品のよう。

その後テレビドラマ『LAW & ORDER:性犯罪特捜班』のシーズン16や、『ブロンズ!私の銅メダル人生』(2015)などに出演。

2017年には本作の他にも、ケリー・フレモン・クレイグ監督の『スウィート17モンスター』(2017年4月22日公開開始予定)で主人公の親友クリスタ役で出演しており、これからが期待される若手女優の一人ですね。

本作『スプリット』では、ケイシーのクラスメイトで共に監禁されることになるクレアを演じています。

なにやら最初に脱走を試みるのがクレアのようで…。この先、一体どんな顛末が彼女を襲うのかに乞うご期待です!

マルシア / ジェシカ・スーラ

1994年5月3日生まれで現在22歳のジェシカ・スーラは、イギリス・スウォンジー出身の若手女優さんです。

2011年に『Skins』というテレビドラマ作品で女優としてデビューを果たし、2013年にはドラマLove and Marriage』に出演。

2014年には『Honeytrap』という作品で映画デビューを飾り、本作『スプリット』が2本目の模様ですね。

残念ながらほぼ情報がないのでこの程度しかプロフィールのご紹介は出来ませんが、本作『スプリット』では3人の女子高生の1人マルシアを演じています。

監禁された後に3人がそれぞれどのような反応を見せるのか、それぞれの反応の違いといった点にも注目したいところですね!

フレッチャー / ベティ・バックリー

元々舞台で活躍していたベティ・バックリーが映画に初めて登場したのは、ブライアン・デ・パルマ監督の『キャリー』(1976)。

1988年にはロマン・ポランスキー監督の『フランティック』、翌年にはウディ・アレン監督の『私の中のもうひとりの私』(1989)などに出演しています。

M・ナイト・シャマラン作品には2008年の『ハプニング』にも出演していますが、今回彼女が演じるのは、心理学者であるフレッチャー博士。

どうやらケヴィンは彼女のカウンセリングを受けており、彼に何が起っているのかを把握している人物のようで、もしかしたら物語の鍵を握る人物となるやもしれません!

注目して見ていきたいと思います!

映画『スプリット』の監督紹介

映画『スプリット』の監督を務めるのはM・ナイト・シャマランです。

インド出身のシャマラン監督のデビューとなったのは、大学時代に家族や友人から資金を借りて製作したという半自伝的ドラマ作品『Praying with Anger』。

1992年にトロント国際映画祭で上映され、1週間限定ではあるものの劇場で商業上映もされたのだそう。

1995年には『翼のない天使』を製作するも、公開されたのは1998年になってからとキャリアの初期はあまり上手く事が運んでいなかったシャマラン監督。

そんな彼にとって最も大きな転機となったのは1999年『シックス・センス』でしょう!

ブルース・ウィリスを主演に迎え、ハーレイ・ジョエル・オスメントを一躍人気者にしたこの作品で、アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞、助演男優賞、助演女優賞にノミネートされるのなど、最高の評価を得ることに。

興行収入的にも大ヒットを記録し、もちろん日本でも一躍『シックス・センス』旋風が巻き起こりました。

この成功でM・ナイト・シャマランの名も世界的に知られるものとなり、続く『アンブレイカブル』(2000)、『サイン』(2002)と次々にヒットを飛ばします。

と、ここまでは順調に来ていたシャマラン監督でしたが、2004年の『ヴィレッジ』を境に雲行きが怪しくなっていくことに。

続く『レディ・イン・ザ・ウォーター』(2006)も発想としては面白かったものの、興行的に失敗、内容的にも酷評されてしまいます。

2008年、マーク・ウォルバーグを主演に据え、衝撃的な冒頭で始まる『ハプニング』で少々持ち直したものの、結末の弱さが指摘され、あまりいい結果とは言えませんでしたね。

その後『エア・ベンダー』(2010)やウィル・スミス親子の共演が話題となった『アフター・アース』(2013)と、なぜか急激に方向を転換を図った(どちらもSF・ファンタジー系作品)シャマラン監督。

興行的にはここ最近の作品よりマシではあったものの、全体としては失敗作としてみなされます。

しかし、2015年に発表した『ヴィジット』では低予算に抑え、なおかつ原点回帰したような作風が復活し、明るい兆しが見えてきました。

そして本作『スプリット』の発表に至るという訳です。『ヴィジット』のスタッフを再集結させ、アメリカではオープニングの17日間でナンバーワンとなるヒットを記録し、『シックス・センス』の頃のキレを取り戻したと言われるM・ナイト・シャマラン。

“Don’t even try guessing the ending.(結末を予想してもムダだよ)”と語っているシャマラン監督は、本作で一体どんなラストを用意しているのか?!非常に楽しみですね!

映画『スプリット』のあらすじ


(C)2017 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

高校生のケイシーは、クラスメイトのクレアの誕生日会に参加していました。

しかし、彼女は浮かぬ顔。そんなケイシーを観て、クレアとマルシアは「ほらやっぱりあの調子」とクレアの父に話していました。ケイシーは問題児で、誰とも仲良くなろうとしないのです。それでも彼女を招待した理由は、招待しなければ、クラスメイトたちにSNSでいじめらることがわかっているからです。

誰かと電話をしていたケイシーはこちらにやってきました。保護者が迎えに来られないらしく、タクシーで帰るというケイシーをクレアの父は一緒に送ってあげるよ、と誘います。

トランクにたくさんのプレゼントを積めるのを父に任せて、少女たちは、車に乗り込みました。ケイシーは助手席に。仲良しのクレアとマルシアは後部座席でおしゃべりに夢中です。

後方でドスンと音がしたので、ケイシーはサイドミラーをみますが、特に何事もありません。しかし、次にトランクを閉める音に反応して振り向いたときは、持ち帰る予定だったものが地べたに散乱しているのが見えました。

何か変、何かがおかしい…。その時、運転席にクレアの父ではない別の男が乗り込んできました! 

「あなた車を間違ってない!?」とクレアが叫んだ瞬間、男はマスクをつけ、後部座席の2人に催涙スプレーをかけました!

そのまま男は運転席にちらばっているゴミをハンカチで取り除き始めました。恐怖にひきつったケイシーは、恐る恐る、ドアノブに手をかけ、脱出しようと試みますが、男がエンジンをかけると、ドアが開いているため音が鳴ってしまいます。

男は厳しい目つきでケイシーを睨みつけると、マスクをつけ、催涙スプレーを向けました…!

何やら細い通路を運ばれていく少女たち。気が付くと、ケイシーたち3人はどこか見知らぬ部屋に閉じ込められていました。

さきほどの男に拉致されたのです。三人の前に男が現れ、「まずお前だ」とマルシアを指名します。部屋を連れ出されたマルシア。マルシアの悲鳴が上がり、心配したクレアは激しくドアを叩きます。すぐに男がドアを開け、マルシアは戻されました。

「あいつ、私に踊れっていうの!」とマルシア。クレアとマルシアは三人で力を合わせてなんとか脱出しようと話し合いますが、ケイシーは、へたな抵抗をしてもやられるだけだ、もっと具体的な話をきかせてちょうだいと冷静です。

テレビのニュース番組は、女子高生3人が誘拐されたことを報じていました。一人の老女がそれを観ていると、パソコンにメールが届いた音が響きます。バリーという差出人からの「至急会いたい」というメールでした。

老婦人はフレッチャーというカウンセラーでした。

ケイシーは幼いころ、父に狩りを教わった時のことを思い浮かべていました。「メスはオスよりもかしこい。常に身の安全に気を付けている」と鹿について語っていた父…。

螺旋階段をあがっていく人の姿がありました。フレッチャーを訪ねてきた男は、なんとあの女子高生たちを監禁した男ではありませんか!? しかし彼はお姐言葉で喋り、ファッションイラストを得意そうに先生に見せています。まるで別人です。

フレッチャー先生は、至急会いたいと昨晩メールしてきたこの男がまったく切羽詰った様子がないのを不思議に思っていました。そして、なにやらいつもと様子が違うことも感じていました。

隣人とおしゃべりしながら、フレッチャー先生は、「私たちは心に傷を追っている人を劣っていると思いがちだけれど、もし優れていたら?」と呟きます。

少女たちのもとに男が戻ってきました。鍵穴から外の様子を探るクレアたち。女の人が来ているようで、二人の会話が聞こえてきます。

ドアが開き、女が入ってきました…。と思いきや、それは女装したあの男ではないですか!

男は女口調で、「あなたたちの役割は彼も知っているし、手を出さないわ」と告げるのでした。

何かがおかしいと感じる3人…。

次に男が顔を出した時は、子供のような言葉で話だし、なんと自分はヘドウィグという名で、年齢は9歳だと3人に告げたのです。

どうやら多重人格者であるらしいことが分かった3人は、一体この危機をどう乗り越えるのか?!

彼女たちは無事逃げ切れることが出来るのか?!

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『スプリット』ネタバレ・結末の記載がございます。『スプリット』をまだ鑑賞されていない方は観てからご覧ください。ストーリーのラストを知りたくない方は見ないでください。
男は少女たちに「お前らを連れてきたのは聖なるものの食料にするためだ」と言い、”9歳のヘドウィグ”は「あいつがこっちに向かってる。みんなにひどいことをする」と語っていました。それは一体何を意味するのでしょう?!

ヘドウィグが来た時口走った「ここを安全に変えた」という言葉にケイシーは注目しました。部屋の壁を見ると、新しい部分があります。これは後から補充したのでは?

三人は急いで壁のあちこちを叩き始めました。クレアが天井を叩いた時、明らかに音が違うのがわかりました。さらに壁を叩いていると穴があき、「登れるわ!」とクレアが叫びます。

しかし、男がやってきたようです。「ドアを抑えておいて!」とクレアは言うと、懸命によじ登りました。男を中に入れさせまいと、ケイシーとマルシアは必死でドアを抑えます。

クレアは天井のダクトをはっていき、なにやら廊下のようなところに降り立ちますが、既に男が追いかけてきていました。あわてて、ロッカーに身を潜め、息をおさえようとしますが、無情にもみつかってしまいます。

男はロッカーから出てきたクレアを見ると、セーターを見ろ、ほつれて汚れている、脱げ!と命じ、クレアは従います。彼女は他の2人とは別の部屋に監禁されてしまいました。

ケイシーたちのところに戻ってきた男は2人を見て、スカートを脱げ! 汚しやがって、お前は上着だ!と命じました。

フレッチャー先生は、DID(解離性同一性人格障害)の研究者で、彼女の患者の多くがその障害を患った人々でした。

「彼らは照明と呼ばれる権利を得て、出現し、別の人格が同時に出現することも可能。いわゆる予知能力は彼らに由来するのでは?」という自説を国際学会で発表します。

今日もあの男がフレッチャー先生のもとを訪れ、カウンセリングを受けていました。フレッチャーは男に問います。「あなたは誰なの?」

「いやだなぁ、先生、バリーですよ」と応える男に対して先生は「違うと思う」と応えます。

「2日続けてメールでアポをとった。照明を奪われ、誰かがメールしたのを取り繕うためにここに来たわね」

男はバリーと名乗っていますが、バリーは男の23の人格のうちの一人で、今ここにいる人格は凶悪なデニスに違いないと先生はふんでいました。

「パトリシアとデニスはある理由で照明を貰えないのよね」。先生は別の人格から、そのことを聞いており、男を問い詰めます。

しかし、男は自分が潔癖症ではないことを証明し、デニスではないと主張するのでした。

ケイシーとマルシアのもとに男がやってきました。今度の人格は女性らしく、彼女たちを部屋から出すと、台所につれていき、サンドイッチを与えました。

もう一つ作ると言って、ナイフでパンにバターを塗る男(女)。いきなり激しい音をたて、少女たちは凍り付きますが、男(女)は、「うまく切れなかったわ」ともう一度やり直し始めます。

ケイシーに何か訴えるマルシア。ケイシーは首を降っていますが、マルシアは立ち上がり、背中を向けている男(女)に椅子を振り上げて、叩きつけると、部屋から脱出します。

しかし、すぐに男(女)に連れ戻され、別の部屋に監禁されてしまいました。

ケイシーは元の部屋に連れ戻されました。そこに男がやってきて「シャツがパンくずだらけだ、脱げ」と命じます。潔癖症のこの男はデニスのようです。

ケイシーが目を覚ますと、隣にヘドウィグが寝ていました。ヘドウィグは、全員が椅子に座り、誰に照明があたるかは、バリーが決める。自分は照明を奪うことができるからデニスやパトリックから重宝されているといったことを一方的に語りました。そして、ビーストがやってくるとも。

さらに彼は、自分は踊るのが好きで部屋でよく踊っている。CDプレーヤーは窓辺に置いてあると得意げに言うのでした。

ケイシーは「君の部屋に連れて行って」と頼みますが、ヘドウィグは警戒します。ケイシーは自分の秘密を話すからそれで判断して、と続けました。

「私は学校でいつも騒ぎを起こしている。わざと居残りさせられるように。そうすればみんなと離れていられるから」

それを聞いたヘドウィグは「部屋でいいものを見せる。デニスさんに会ってからね」と言い、部屋を出ていきました。

フレッチャー先生は診察にやってきたバリー(?)と向き合っていました。「夜中に会いたいとメールした理由は?」と問いかけ、さらに続けます。

「あなたの職場で以前、事件があったわね。課外授業でやってきた女の子2人があなたの手をとり、胸にあて笑って出ていった。私はこの事件に注目せず流してしまった。でもその時、あなたは子ども時代の虐待を思い出したのよね」

今来ているのはバリーではなくデニスだと先生は確信していました。「あなたはみんなを守っているのよね。そう、ケビンを守っているのね。あなたは悪い人じゃない。あなたは必要だったの」。

男は自分が必要だと言われたことで、気をよくしたのか、デニスだということを認め、パトリシアと2人でケビンを守っているのだと応えます。そして彼は「ビースト」の出現を切望していました。

しかし、先生は、ビーストは人格ではないから24人目ではない、ビーストは存在しないのだと彼に語って気がせます。

その夜、ヘドウィグは約束を守り、ケイシーを部屋に招待しました。彼はいきなり爆音で踊り始めました。

ケイシーはCDプレーヤーを窓辺に置いているという言葉を聞き、脱出できると思ったのですが、その窓辺というのはヘドウィグが書いた絵に過ぎませんでした。部屋には窓はありませんでした。

ケイシーはそれでも諦めず「ここから出る手助けをしてちょうだい」と頼みますが、ヘドウィグはデニスたちを気にして首を縦に振りません。

ケイシーは粘って「いいものを見せるといったわ」とヘドウィグに問うと、彼が差し出したのはなんとトランシーバーでした。

トランシーバーを受け取ったケイシーは、自分は誘拐されたケイシー、助けて!と通信しますが、つながった相手は、まったく信用してくれません。

彼女はデニスにもとの場所に連れ戻されます。その時、ケイシーは一本の釘が落ちているのに気がつきました。

デニスは、ビーストは人間がさらに進化したもので、今夜ここに現れると告げます。

ケイシーは忌まわしい子ども時代を思い出していました。叔父が幼い彼女を騙し卑劣な行為をしたこと。叔父に猟銃を向けたが、撃てなかったこと。父が心臓発作で亡くなり、叔父に引き取られた彼女は、地獄のような日々をずっと送って来たのです。

その頃、フレッチャー先生のもとに、バリーからのメールが20件も届いていました。

「すぐ来て!」

タクシーで駆けつけたフレッチャー先生を迎えたのはデニスでした。「あなたは素晴らしい。私は皆が心配なだけなの」と言う先生に、デニスは「これからビーストを迎えに行く」と告げます。

「いるはずない」という先生に「ビーストは実在する。誰よりも大きい」というデニス。自分が肯定されたことで彼には何かの力が宿っているかのように見えました。

「ビーストは不純な若者を食べる」というデニスに、先生は「不純って何? 誰と会う予定なの? 明日、改めて私の家で話し合いましょう」と言いますが、デニスは首を振りません。

「望めば本当に手に入るのだ」とデニスは確信に満ちた目をしながらつぶやくのでした。

トイレを借りるため、廊下を歩いていた先生は、デニスがビーストという処世術を得て興奮しているのだと考えますが、何やら気配を感じて、ある部屋のスライド式の鍵を開けます。

するとどうでしょう、そこにはマルシアが。そして隣の部屋にはクレアがいるではありませんか。ニュースで報道されていた少女たちに違いないと先生は愕然とします。

突然、男以外の人が出現し、驚く彼女たちでしたが、喜んだのも束の間、先生もデニスに催涙スプレーをかけられて、意識を失ってしまいます。

デニスは再び彼女たちのドアを施錠し、先生を別の部屋のソファーに運んで寝かせると、ビーストを迎えに出ていきました。

スライド式の鍵を開けるため、なんとか出来ないかと懸命に努力する少女たち。先生は意識を取り戻し、朦朧とする中で、鉛筆をぎこちなく動かしていました。

一方、ケイシーは拾った釘でドアを開けることに成功していました。しかし、外に出た場所も施錠されています。部屋にパソコンがあったので、とびついて電源をつけてみましたが、ネットには接続されていません!

パソコンには、彼ら23人の映像が保存されていました。23人の人格が一人、一人、カメラに向かって喋っている映像です。

ドアを釘で開けられないか、懸命にトライしていたケイシーが、ふと画面をみやると、部屋の壁にかけられた鍵を取って男が出ていく姿が映っていました。思わず駆け寄ってみると、鍵の束は映像と同じ場所に存在していました。 

その頃、デニスは花束を買い、電車のホームで電車を待っていました。全ての乗客が降りたあと、車両に乗り込んだ彼は裸で床に寝そべりました。そして突然起き上がると、人間離れした動きで列車の上を飛び越え、駆け出していくのでした。

フレッチャー先生が意識を取り戻すと、側に何者かが立っていました。筋肉と血管が盛り上がったデニス…いや、ビーストが! ビーストは彼女を後ろから抱きしめ、そのまま絞め殺してしまいます。

部屋を脱出したケイシーが、半開きのドアの中を除くと、血まみれでマルシアが死んでいました。隣の部屋を開けると、クレアは今まさにビーストに襲われているところでした。

もう一つの部屋には(ケイシーにとって)見知らぬ女性が倒れており、机の上に「ケビン・ウエンデル・クラム 彼の名を呼んで」と書かれた紙が置いてありました。

その時、ビーストは壁をよじ登っていました。もはや、人を超えた存在であることは明らかでした。

ついにケイシーはビーストにみつかってしまいました。彼女は「ケビン・ウエンデル・クラム!」と叫びました!

「ケビン・ウエンデル・クラム!」怒りに満ちた女の声がしました。「散らかしたわね!」母親はベッドの下に隠れた幼いケビンに鬼の形相を見せていました。手に先の尖った針金を持って。

すると、ケビンの人格が蘇り、「ショットガンを買った!戸棚の下に隠している。弾丸はクラムと書かれたロッカーの中だ。殺せ、僕を殺せ」と叫びました。

その後も数々の人格が現れますが、再びビーストに戻ってしまいます。ケビンの名前を呼んでも彼は眠らせたと言い、もう効き目はなくなっていました。

ケイシーは戸棚にかけより、ショットガンを取り出すと、走って、ロッカーのところまでたどり着き、弾丸のはいった箱を取り出しました。

逃げながら、弾を装着し終え、ビースト目掛けて撃ちますが、なかなか当たりません。

行き止まりで、行き場を失くした彼女は檻の中で震えながらショットガンを構えていました。

「苦しんだことのないやつは価値がない」と言いながら、ビーストはじりじりと近づいてきました。

弾はあと二発。ケイシーはビースト目掛けて撃ちます。しかし、ビーストは倒れず、檻を押し広げようと力を込めていました。もう弾はありません! 

絶体絶命かと思われた時、ビーストは手を止めました。ケイシーの肩や腹に刻まれた無数の傷跡を見たのです。

「お前の心は汚れてはいない」。そう言い残すとビーストは背中を見せて立ち去るのでした。

翌朝、ケイシーは、仕事にやってきた職員に発見され、保護されました。外に出ると、意外にもそこは動物園でした。

警察がやってきて、現場検証が行われていました。パトカーに乗ったケイシーに女性の警官が「伯父さんが迎えに来てますが、出てこられます?」と声をかけました。

厳しい顔つきをして動こうとしないケイシーを見て、警官は驚いたようでした。

その頃、ビーストは、他の23人たちと会話をしていました。

「私たちの強さを皆に知らしめるのだ」。彼は不敵な笑を浮かていました。

ニュースでは彼の人格は動物園の動物からとられたものもあると報道していました。バーでテレビを観ていた女性が「以前あった事件の犯人と似ているわね。犯人はなんて呼ばれていたかしら」と言いました。すると隣に座っていた男が応えました。「ミスター・ガラスだ」。

映画『スプリット』感想と評価


(C)2017 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

(注)本稿もネタバレしております。是非映画を観てからご高覧ください。

多重人格者が少女を拉致監禁という展開で幕をあけるこの物語。一見、よくあるサイコホラーかと思いきや、DID(解離性同一性人格障害)の研究者が、学会の報告で「予知能力」に踏み込んでいるシーンで紛れもないシャマラン映画と確信しました。

本作は、ずばり、怪物の誕生を描いた作品です。そして、「ありえなさ」と「リアリティ」が両立している稀有な作品なのです。

23の人格の中には、良心を持った真っ当な人格もあるわけですが、「悪」に傾倒した人格が次第に主導的立場になっていき、目的を実行するためのもうひとつの人格を欲し始めます。

その人格は、もはや人間ではない、獣の如きもの。生まれるまであと一歩のところまで来ているのですが、まだ何かが足りない。しかしそれがもたらされた時、願っていたものが生まれます。それとは何か?

それとは、「肯定」を受けたことです。

フレッチャー先生によってデニスという人格が初めて、「あなたは正しい」「あなたは必要」と励まされ、「肯定」されたことで、ありえなかった力が実際に生まれてしまう。

この理屈のあるようでない、しかし断固とした説得力が、シャマラン作品の最大の魅力ではないでしょうか。

主演のジェームズ・マカヴォイの熱演によるところも大きいでしょう。何人もの人格を瞬時に演じ分け、圧巻です。

中には「別の人格を装っている人格」までが含まれているのですから、お見事というしかありません。

そしてもうひとりの主役が、アニャ・テイラー=ジョイ扮するケイシーです。

彼女の幼いころの出来事が、時折、フラッシュバックされるのですが、初めは、娘に狩りを教える父の言葉が、この状況を打破するヒントになっていくのかと想像していました。しかし次第に、彼女を取り巻き、覆っている「忌まわしいもの」が、暗示されるシーンへと変化していきます。それがラストへと絶妙につながっていくのです。

また、服が汚れると、一枚、一枚脱がせていくという設定も、別のものを暗示するように仕向けておいて、ラストに大きくつながってくる。実に緻密に錬られた脚本だと、感心せずにはいられません。

そして、何より、この作品を語るのにはずせないことがあります。

助けてほしいときに、誰も助けになんて来てくれない、正義の見方なんて現れない。本作はそういう映画だということ。

外とつながるトランシーバーは、何の役にも立ちませんし、普通の少女が突如巧みに銃を操り、ヒロインとして覚醒するわけもない。ケイシーが助かったのは、怪物が彼女を「同類」として同情したからにほかなりません。

これはある意味非常に皮肉なことです。犠牲になってしまった少女たちの救われなさといい、実にリアリティを感じさせる世界ではないでしょうか。

怪物の誕生を描き、「正義のヒーローなんていやしない」と終わった本編に対して、エピローグとして現れた『アンブレイカブル』を示唆する(というかそのものですが)サプライズシーンは何を意味しているのか?

いや、そんなことはないんだという一つの答えなのか?

はたまた現実的でありすぎた、と感じたための単なる埋め合わせなのか?

つべこべ言わず、次回作を期待して待てというメッセージなのか?

果たして…?!

エンドタイトルの特報で報じられた作品が実に待ち遠しいです。

そして本作で圧倒的な存在感を見せたアニャ・テイラー=ジョイの出世作『The Witch』の日本公開の噂もあります。

楽しみに待ちたいと思います。

まとめ

M・ナイト・シャマラン監督の復活をにおわせる本作ですが、もうひとつの注目ポイントはやはり主演のジェームズ・マカヴォイですよね!

『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクター博士や『ダークナイト』のジョーカーにも匹敵すると言われるケヴィンのような悪役を、これまで割と清廉なイメージの強かったジェームズ・マカヴォイが一体どう演じているのか…非常に興味深いところ。

さらにアニャ・テイラー=ジョイをはじめとした女子高生3人の中からも新たなスターが生まれる予感もありますので、様々な面で注目すべきポイントが多い作品だといえるでしょう!

注目の劇場公開は2017年5月12日(金)より始まります!果たしてシャマラン監督の仕掛けた罠にあなたは気付けるか?!乞うご期待です!

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星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
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日本映画大学