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Entry 2018/03/03
Update

映画『空海 美しき王妃の謎』あらすじネタバレ感想。ラスト結末も

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

東宝とKADOKAWA初の共同配給作品にして、日中共同製作映画史上最大の本格ビッグプロジェクト。

企画の立ち上げから完成まで、10年の歳月をかけたチェン・カイコー監督。

染谷将太主演の『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』をご紹介します。

1.映画『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』の作品情報


(C)2017 New Classic Media, Kadokawa Corporation, Emperor Motion Pictures, Shengkai Film

【公開】
2018年(中国・日本映画合作)

【原題】
妖猫伝 Legend of the Demon Cat

【監督】
チェン・カイコー

【製作総指揮】
角川歴彦

【キャスト】
染谷将太、ホアン・シュアン、阿部寛、チャン・ロンロン、松坂慶子、火野正平、チャン・ルーイー、シン・バイチン、ティアン・ユー、チン・ハオ、キティ・チャン、チャン・ティエンアイ、リウ・ハオラン、オウ・ハオ、シャー・ナン、リウ・ペイチー、チェン・タイシェン、ワン・デイ

【作品概要】
8世紀、遣唐使として日本から唐へやってきた若き僧侶の空海が、詩人・白楽天とともに首都・長安を揺るがす巨大な謎に挑む。

『さらば、わが愛 覇王別姫』『始皇帝暗殺』の名匠チェン・カイコーが監督を務め、主人公の空海を海外作品初挑戦となる染谷将太が演じる。

中国では演技派俳優として注目されているホアン・シュアンなど、中国の実力派俳優に加え、阿部寛や松坂慶子など日本の俳優も参加している日中合作映画。

2.『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』あらすじ


(C)2017 New Classic Media, Kadokawa Corporation, Emperor Motion Pictures, Shengkai Film
1200年以上前の唐の都、長安。

屋敷で池を眺めながら瓜を食べていた春琴の前に、突然黒い猫が現れ「美味そうだな、俺にも分けてくれ」と話しかけてきます。

驚いた春琴は逃げ出しますが、猫は「自宅の庭を掘ってみろ、大金が埋まっている」と春琴に伝えて姿を消します。

猫が消えた後、春琴が池に戻ると目玉を失った魚が打ち上げられていました。

一方、日本から遣唐使として中国へ渡っていた空海は、病に苦しむ皇帝を救う事を依頼され、宮殿を訪れます。

衰弱していた皇帝は、皮膚の色が変色し空海の目の前で息絶えます。

側近たちは「風邪で皇帝は亡くなった」としますが、皇帝は10日間苦しんで亡くなった事から、皇帝の記録係を担当していた白楽天は疑問を感じ、空海に問いかけます。

空海は宮殿内で猫の毛と足跡を発見し、足跡の先に落ちていた札に「次は次期皇帝のリショウ」と書かれていた事から、呪いの可能性を示唆するのでした。

次の日、空海は白楽天から宮殿内に猫がいた事と、春琴の夫である陳雲樵の屋敷に言葉を喋る猫が現れたという噂を聞きます。

空海は入門を希望している唐の仏教寺院「青龍寺」の門をくぐる事も許されない現実にショックを受けており、日本へ帰る事を考えていました。

ですが、詩を書く為に記録係を辞めた白楽天に興味を持ち、彼の詩の構想などを探るうちに仲良くなります。

白楽天も街でスイカを売っていた男の幻術を簡単に見破った、空海の洞察力に興味を示し、二人は意気投合します。

そして、言葉を喋る猫の真相追及の為、陳雲樵を追って、遊び場である姑玉桜へ向かいます。

遊郭のような場所、胡玉桜で陳雲樵は取り巻き達と派手にお金を使い、遊んでいました。

そこへ、妖猫が現れ「もっと金が欲しいか?」と陳雲樵に問いかけます。

陳雲樵は、妖猫を追い払おうとしますが、襲ってきた妖猫に取り巻き達が目玉を奪われ、次々と倒れて行きます。

その様子を目の当たりにし、成す術なく立ちすくむ空海と白楽天。

妖猫は陳雲樵に「明日の夜、お前の屋敷に行く」と告げて、姿を消すのでした。

次の日、胡玉桜での事件を捜査する役人に、白楽天は祈祷師である空海が協力すると伝えます。

それは、事件を解決させれば、空海が入門を希望している青龍寺へ入りやすくなるという、白楽天の考えからでした。

その夜、陳雲樵の屋敷に、予告通り妖猫が現れ、屋敷の警備をしていた男達に次々と襲いかかります。

妖猫は春琴に憑依し、その姿に恐怖を感じた陳雲樵は、屋敷から逃げ出したのでした。

その頃、空海と白楽天は、胡玉桜の遊女である玉蓮に発生した毒虫を退治していました。

空海は、同じ胡玉桜の遊女、麗香が玉蓮に嫉妬し呪いをかけたと推理し、その背後に妖猫がいると考えます。

そこへ屋敷から逃げ出してきた陳雲樵が現れ、空海達に助けを求めます。

陳雲樵の屋敷に到着した空海と白楽天は、月光に照らされながら屋根の上で詩を詠んでいる春琴を目撃します。

空海は春琴が妖猫に憑依された事を見破り、白楽天は春琴が読んでいる詩が、李白の詩である事に気付きます。

空海と白楽天は、李白の詩を書庫で調べ、春琴が詠んでいた詩は「極楽の宴」で、李白が楊貴妃の為に作った詩である事が分かります。

次の日、幻術を操るスイカ売りの男の元を訪ねた空海は、幻術の破り方を聞きますが「幻術にも種がある」とだけ伝えらえます。

空海と白楽天は、再び春琴に憑依した妖猫の元を訪れます。

妖猫は「自分は陛下の飼っていた猫で、生き埋めにされた」と語り、「陳雲樵を襲うのは、彼の父親が自分を生き埋めにしたからで、化け猫になった今、復讐をしている」と明かします。

そして、真相を語った妖猫は姿を消し、春琴は倒れるのでした。

陳雲樵は妖猫から春琴を救った空海と白楽天に感謝し宴を開き、踊りを披露します。

ですが突如、陳雲樵が春琴の首を絞めます。

「埋めないで、地下は寒い」と春琴は言い残し、息絶えるのでした。

春琴の言葉から、楊貴妃も猫と同じように生き埋めにされたと考える空海。

ですが、歴史上は反乱を起こした安禄山を鎮める為に、皇帝が涙を流しながら楊貴妃を手にかけた事になっており、それを信じている白楽天は空海に反発し、その場を去ります。

白楽天の元を訪れた空海は、白楽天が楊貴妃と皇帝の愛を、詩に記そうとしている事を知ります。

宝物庫から楊貴妃の髪の毛を盗み出すほど入れ込んでいた白楽天に、妖猫は目を付けたのだと確信した空海。

空海は白楽天に「自分は大師の意思を継いで唐に来た」と語り、密教を持って帰りたいという自身の目的を伝えます。

空海の語りかけにより、自身の詩を完成させる為に、真実を追求する事を誓った白楽天。

2人は楊貴妃の死の真相に挑むのでした。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』ネタバレ・結末の記載がございます。『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
楊貴妃の死の真相を探っていた空海と白楽天は、「極楽の宴」に、50年前に唐へ渡った遣唐使、阿倍仲麻呂が関わっていた事を知ります。

空海と白楽天は、阿倍仲麻呂の側室だった女性、白玲を訪れ仲麻呂の日記を入手します。

日記には幻術使いの黄鶴と、その弟子の白竜と丹龍の幻術により、華やかに彩れた「極楽の宴」の様子が記されていました。

そして、楊貴妃を溺愛する皇帝により、仲麻呂の想いが楊貴妃に届かなった事も。

更に日記には、安禄山が皇帝に反乱を起こし、全ての元凶とされた楊貴妃の死を望んだ為、黄鶴は皇帝に楊貴妃を仮死状態にする特別な術を提案。

皇帝は苦悩しますが、楊貴妃は自ら望み、仮死状態になり棺に入れられるのでした。

日記に記された、楊貴妃が眠る棺の場所を訪れた空海と白楽天は棺を開けますが、そこに楊貴妃の姿は無く、棺の裏には大量の血の跡が残っていました。

空海は、楊貴妃が生きていたと推測、そこへ妖猫が姿を見せます。

空海により、正体が白竜だと見破られた妖猫は真相を語ります。

「極楽の宴」で楊貴妃に惚れた白竜は、丹龍と共に楊貴妃を救い出す為に、棺が納められた洞窟を訪れますが、すでに楊貴妃は息絶えていました。

楊貴妃に施した仮死状態は2日しか持たず、その事を知っていた丹龍と白竜は対立、怒り狂う白竜を置いて、丹龍は姿を消します。

楊貴妃の蘇生を信じた白竜は、楊貴妃の抜け殻を見守り続けますが、楊貴妃に毒虫が沸きます。

白竜は毒虫を自分の体に移した事で力尽き、皇帝の猫に自らの魂を移したのでした。

妖猫と化した白竜は、皇帝を呪い、楊貴妃の死に関わった人間を呪い殺していたのです。

真相を知った空海と白楽天は街へ戻りますが、空海の元へ「極楽の宴」の招待状が届きます。

宴の場所である、廃墟と化した宮殿を訪れた空海と白楽天、そこには妖猫が待っていました。

そして、廃墟を訪れた人物はもう1人、幻術でスイカを売っていた男、丹龍でした。

丹龍は白竜の行動を全て見抜いており、廃墟にある台に、楊貴妃と白竜の抜け殻を置いていました。

怒り狂う妖猫に「自分を殺せ」と告げる丹龍、妖猫は襲いかかりますが、やがて全てを悟り息絶えるのでした。

後日、改めて青龍寺を訪れた空海、何故か中に入る事を許され、そこで待っていたのは僧の姿をした丹龍でした。

白楽天は皇帝と楊貴妃の愛を詠んだ「長恨歌」を完成させます。

そこに描かれた絵は黒猫を抱いた楊貴妃でした。

3.映画『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』の感想と評価


(C)2017 New Classic Media, Kadokawa Corporation, Emperor Motion Pictures, Shengkai Film
『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』は、大きく分けて3つの構成になっています。

序盤は唐の都を脅かす妖猫の恐怖、中盤は歴史に翻弄される楊貴妃の悲しい運命、そして2つの話は楊貴妃への叶わぬ愛を貫いた、白竜のドラマへと収束されます。

序盤はホラーテイストが強いのですが、映画を最後まで観賞すると、白竜の怒りが表現された見事な構成だと思います。

また、美しい映像で全編構成されており、幻術で彩られた華やかな宴「極楽の宴」の映像表現は、1つの芸術作品を思わせるような仕上がりになっています。

他にも、空海が唐へ渡る為に乗り込んだ船が、大波を渡る映像表現は、数秒の映像ながら、動く絵画を思わせるような美しさとなっており、細部にこだわった作品作りが、独自の世界を作り出しています。

空海役の染谷将太は、天才的な洞察力を見せながらも、楊貴妃の真実に戸惑い動揺するなど、空海の人間的な部分も見事に演じています。

楊貴妃を巡る歴史的なドラマを軸に、空海と白楽天が自身の目的にあらためて気づき、成長していく人間ドラマとしても楽しめますよ。

まとめ


(C)2017 New Classic Media, Kadokawa Corporation, Emperor Motion Pictures, Shengkai Film
本作は、6年かけて東京ドーム約8個分にも及ぶ、長安の街のセットを作り撮影されています。

他にも数秒しか映らない空海が乗り込んだ遣唐使船を、昔の製造法に従い原寸大で作るという、徹底してこだわりを見せています。

妖猫の表現には、日本のVFX技術が使用されており、これまでVFXアドバイザーとして、数々の邦画に携わった石井教雄が参加しています。

徹底して本物にこだわったチェン・カイコーの映像に、日本のVFX技術が加わり作り出された世界観で、日中の実力派俳優により生み出される物語は非常に見応えがあります。

映画館の大画面と音響設備で観賞し、壮大なスケールの本作を楽しんでみてはいかがでしょうか?

企画立ち上げから約10年、撮影期間5カ月、約1年かけて仕上げられた豪華な作品『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』は、2018年2月24日より全国公開中です。

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