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Entry 2017/09/29
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映画『エンドレス・ポエトリー』感想レビュー【ホドロフスキー監督】

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

アレハンドロ・ホドロフスキー監督の『エンドレス・ポエトリー』は、11月18日(土)より、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク渋谷ほか全国順次公開。

世界に潜むマジック・リアリズムを追い求め続ける、88歳のホドロフスキー監督が観る者すべてに贈る、“真なる生”への招待状。

今回は、2013年に23年ぶりの監督作『リアリティのダンス』を発表したアレハンドロ・ホドロフスキー監督、待望の続編『エンドレス・ポエトリー』をご紹介します。

1.映画『エンドレス・ポエトリー』の作品情報

【公開】
2017年(フランス・チリ・日本映画合作)

【脚本・監督・制作総指揮】
アレハンドロ・ホドロフスキー

【キャスト】
アダン・ホドロフスキー、パメラ・フローレス、ブロンティス・ホドロフスキー、レアンドロ・ターブ、イェレミアス・ハースコビッツ

【作品概要】
『エル・トポ』『ホーリー・マウンテン』などでカルト的な人気を誇るアレハンドロ・ホドロフスキー監督による自伝的作品『リアリティのダンス』の続編。

ホドロフスキー監督の長男ブロンティス・ホドロフスキーはホドロフスキー監督の父親役、青年となったホドロフスキー監督役を末っ子の息子のアダン・ホドロフスキーが前作に引き続き演じています。

また、撮影に『恋する惑星』などのクリストファー・ドイルが、ホドロフスキー作品に初参加。

2.映画『エンドレス・ポエトリー』のあらすじ


(C)Pascale Montandon-Jodorowsky

ホドロフスキー一家は故郷トコピージャを離れ、首都サンティアゴへ移住しました。

青年となったアレハンドロは、自分に自信の無いことや、抑圧的な両親との関係に悩みを抱えています。

この環境から脱して何とか自分の道を模索したいと葛藤していました。

ある日、アレハンドロは従兄リカルドに連れられ芸術家姉妹の家を訪ねることになりました。

そこには古い規則や制約に縛られないダンサーや彫刻家、ほかにも、画家、詩人など、若いアーティストがともに暮らしていました。

彼らと接する中でアレハンドロは、ついに自分が囚われていた檻のような価値観から解放されます。

エンリケ・リンやニカノール・パラなど、後に世界的な詩人となる人物たちとの出会い。

さらには初めて恋に落ちたステジャ・ディアスとの関係で、アレハンドロの詩的運命は未知の世界へと紐解かれていく…。

3.映画『エンドレス・ポエトリー』
ホドロフスキー監督に魅了された著名人たちの感想

*敬称略・順不同

「一瞬もじっとしていない人間の内面世界を、ホドロフスキーは時に残酷に時に滑稽に映像化する。無心な幼児と無心を 拒む老人が同居する偽善と無縁の多彩な世界、そこにひそむ真実を私たちは発見する。
谷川俊太郎(詩人)」

「言葉と共に生き抜いてきた私にはこの映画における詩の、人生を変える力がよく理解できる。少年と青年だけが 持つ、みずみずしい「心の目」だけで見た「真実の世界」「世界の真実」が完璧に映像化されている。言われなき 迫害で得た心の傷を持つ全ての人は、観るだけで涙し癒されるだろう。
吉本ばなな(作家)」

「ホドロフスキーに会えた時とても大事な言葉をくれました。
「私は、今、老人だが、6歳の戸惑ってる少年、18歳の怖いもの知らずの青年、30歳の分別がつき世界や映画 や恋に生きた中年、50歳くらいの生きることに戸惑いを覚えたり死の不安を認識した初老。それらはすべて過ぎ去ったことではなく僕の身体の中で僕と共に今もいるんだ」って教えてくれました。その時その場の空気の温度 が変わるくらい呆然とし、その言葉が血と肉に染みこんだ経験をしました。
この映画はまさにホドロフスキーの少年から青年を過ごした青春時代の故郷での日々をとてもホドロフスキーらしく幻想的で詩的で示唆的で生きる価値観の不思議さ素敵さを描いてるのではないのかなと感じました。今も僕らは魔法を信じる、今も僕らの奇妙な人生は豊かであることの賛美歌ではないでしょうか。
岡村靖幸(ミュージシャン)」

「過去が色褪せていく。楽しかったことは泡のように消え、悲しみや憎しみは澱のように堆積する。そのうちに老いて朽ちて消えていく。それが私たちの生。だとしたら私たちはどうやったら前向きに生きられるの? その答えがこの映画のなかにありました。もうひとつのこの世としての、色と音が溢れる過去がありました。それは現在を飛び越えて未来に突き抜けるような過去でした。生きようと思いました。
町田康(作家)」

「僕とホドロフスキー映画との関係は『2001年宇宙の旅』に登場する猿人とモノリスに近い。だから考察や批評ではなく、真摯に体験するのみ。心の眼を開いて、映画の全てからホドロフスキーと”生きていること”を共有する。自伝的な最新作『エンドレス・ポエトリー』は、青年時代のホドロフスキーと共に、彼の創作の源泉を遡る。それは僕にとって、詩的でマジカルでリアルな『地獄の黙示録』だ。
小島秀夫(ゲームクリエイター)」

「もうなんていうかますますのマジックリアリズムで、ルーセル的(ということは寺山修司的)、ボラーニョ的世界。豊穣でシュールな映像で人生との和解を描く。90歳を前にしてこのクリエイティブ!
いとうせいこう(作家・クリエイター)」

「淋しい、痛い、嬉しい、悲しい、愛しい、命。『エンドレス・ポエトリー』は喪失の物語だが、過去ではなく、現代を生きる僕たちの世界を照らしている。ホドロフスキーも、僕たちも、まだ生きている。この映画体験は、あまたの作り手たちへ贈る極彩色のエールだ。
幾原邦彦(アニメーション監督)」

「アレハンドロ・ホドロフスキーの前では私なんか、まるでヒヨッ子じゃないか、と唖然、呆然、慄然!鳥肌立つ ほどに凄まじい。彼の繰り出す芳醇なイメージの奔流は、過激に自由で、予測不能なマジカルワールド。そのマジ
ックの手さばきは、すでに神の領域に達しているのだ。
原一男(映画監督)」

「全世界驚愕!ホドロフスキー88歳にして第2黄金期へ。ひょっとしたら 50 本ぐらい楽勝かも知れない自伝シリ
ーズ第2作は「最も元気な前衛映画」!
菊地成孔(音楽家/文筆家)」

『エル・トポ』からもうすぐ 50 年!!いまだ衰えない唯一無二の映像のポエトリー。世界にホドロフスキーがあと10人欲しい!
オダギリジョー(俳優)」

「見せ物的装飾性に彩られた、祝祭のエネルギーに圧倒される。
私の人生で出会った最も刺激的な映画。
田名網敬一(現代美術家)」

「血縁の息子をキャストに配し、自らを詩人へと育んだ思い出の地を舞台に、過去のすべてを “リテイク” してス クリーンに掛ける−−。なんと傲慢でロマンチックな手法か。あの美しい前作『リアリティのダンス』ですら序章
にすぎず、御年88歳のホドロフスキーが今迎える最盛期、最新作。呆然としました。
志磨遼平(ミュージシャン/ドレスコーズ)」

反省してます。このコメントを書くために先に DVD で観てしまったことが本当に悔やまれます。このイメージ! 色彩!めくるめくホドロフスキーの世界!ああ、映画館で観たかった……。『エル・トポ』は僕にとって生涯最高の一本、その監督がいまも惜しみなく無限のイメージを描き出す姿勢にはただ感謝と感動しかありません。無論必 見!!
天久聖一(マンガ家)」

「あまりに衝撃を受けてしまい言葉に表すことが出来ず、イラストを描くことで精一杯でした…

ぬQ(アニメーション作家)」

4.アレハンドロ・ホドロフスキーのプロフィール

ホドロフスキーから日本のファンへのメッセージ

アレハンドロ・ホドロフスキー・プルジャンスキー(Alexandro Jodorowsky Prullansky)は、1929年2月17日生まれのチリ出身の映画監督。

チリのボリビア国境近くの町トコピージャに生まれたロシア系ユダヤ人です。

首都にあるサンティアゴ大学で心理学と哲学を学んでいたが、マルセル・カルネ監督の映画『天井桟敷の人々』を観たのをきっかけにパントマイムに没頭していき、大学を退学します。

1953年渡仏し、実験的な映画を制作したり、マルセル・マルソーとの戯曲の共著は100作に登ります。

1957年にトーマス・マン原作の短編『LA CRAVATE』を製作して映画監督デビュー。この作品はジャン・コクトーに絶賛されました。

やがて、メキシコに渡り、1967年に『ファンド・アンド・リス』(日本劇場未公開)を制作して、監督・脚本・出演・音楽を担当します。

伝説的なカルト映画『エル・トポ』(1970)

1970年に制作した映画『エル・トポ』が、“もしフェリーニが西部劇を、クロサワがキリスト映画を撮ったらこうなったであろう”と絶賛され、カルト的な人気と支持を得ました。

また、ジョン・レノンやアンディ・ウォーホル、ミック・ジャガーなどから絶賛され、その中でも作品に深い感銘を受けたジョン・レノンは同作と次回作の興行権を買い取りました。

1973年の『ホーリー・マウンテン』もアメリカでロング・ラン上映が達成され、またも大きな話題となります。

やがて、1975年にSF超大作『デューン』の製作に着手します。

メカデザインにSF画家のクリス・フォス、クリーチャーとキャラクターのデザインにバンド・デシネのカリスマ作家メビウス、特撮担当にダン・オバノン、悪役ハルコンネン男爵の城のデザインにH・R・ギーガーを起用しました。

キャストもまた一流のメンバーを構想して、ハルコンネン役にオーソン・ウェルズ、皇帝役にはサルバドール・ダリ、他にもミック・ジャガーやデビッド・キャラダインなどをキャスティング。

さらに音楽担当はピンク・フロイドやマグマが製作するなど、まさに各界から一流のメンバーが集められたのですが、1年間の作業の後、配給元が決まらずに企画は中止。ホドロフスキー監督の映画を待ち望んでいたファンは大きな落胆をしました。

1989年に商業映画を意識した作品『サンタ・サングレ 聖なる血』を制作して、これを含め3作品を監督した後、フランスのコミックの原作者に転向した傍ら、マルセイユ・タロットの研究と復刻事業などに従事。

2013年に自伝的な映画『リアリティのダンス』完成させました。

【フィルモグラフィ】
短編映画『LA CRAVATE La cravate 』(1957)
『ファンド・アンド・リス(Fando y Lis)』 (1967)
『エル・トポ(El Topo)』(1969)
『ホーリー・マウンテン(The Holy Mountain)』(1973)
『Tusk』(1980)
『サンタ・サングレ/聖なる血 (Santa Sangre)』(1989)
『ホドロフスキーの虹泥棒』The Rainbow Thief』(1990)
『リアリティのダンス(La danza de la realidad)』(2013)
『エンドレス・ポエトリー(Poesía Sin Fin)』(2016)

まとめ


(C)Pascale Montandon-Jodorowsky

アレハンドロ・ホドロフスキー監督は『エンドレス・ポエトリー』をマギッシャーレアリスムスだとし、観た者が“真の自分自身”を発見する手がかりだと述べています。

2017年11月18日(土)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク渋谷ほか全国順次公開。

ぜひ、お見逃しなく!

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