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Entry 2017/09/06
Update

『2つ目の窓』動画無料視聴はHulu!感想レビューと考察も 

  • Writer :
  • 山田苺

2017年度のカンヌ国際映画祭に登場して、メディアに多く取り上げられた女性監督・河瀬直美。

『光』のほかに『あん』では異例のヒットを記録したことで、日本中にその名を知らしめた監督の一人です。

監督の祖先が住んでいた奄美大島を舞台にした映画『2つ目の窓』は、彼女自身の自伝的部分も見ることが出来ます。

主演を務めた2人はオーディションで初主演が決まり、今では著名な俳優たちに仲間入りをした村上虹郎や吉永淳(現:阿部純子)の魅力を存分に引き出した作品です。

今回は河瀬直美監督・キャストの自然な魅力が詰まった『2つ目の窓』をご紹介します。

1.映画『二つ目の窓』の作品情報


(C)2014“FUTATSUME NO MADO”JFP, CDC, ARTE FC, LM.

【公開】
2014(日本)

【監督】
河瀬直美

【キャスト】
村上虹郎、吉永淳、杉本哲太、松田美由紀、渡辺真起子、村上淳、榊英雄、常田富士男

【作品概要】
17年度カンヌ国際映画祭にてコンペティション出品を果たした『光』の河瀬直美よる作品で、少年少女を主人公にしたドラマで。男と女、生と死といった2分された物事を描いています。

舞台は監督の祖先の故郷・奄美大島で撮影され、現地の文化や宗教観・そのそれぞれと自然に共存している人々を丁寧に切り取ったカメラワークが特徴的。

『二つ目の窓』は、Huluで視聴できますよ。
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2.映画『二つ目の窓』のあらすじとネタバレ


(C)2014“FUTATSUME NO MADO”JFP, CDC, ARTE FC, LM.

夏の奄美大島。島の伝統のひとつ・八月踊りが行われる中、誰もいない静かな海にたたずむ界人は、海の向こうで刺青が背中に入った死体を発見します。

翌日、その事件は島中で話題になりますが、界人が死体を見つけて動揺しているところを同級生の杏子は見ていました。

そのことを問い詰めても、界人は何も言いません。

学校でも、今回の事件の件で当分海には近づかないよう先生が指導しますが、杏子は平気な顔をして、制服のまま海を悠々自適に泳ぎます。

界人は母と東京から越してきた少年で、海で泳ごうとしません。杏子に「怖くないの?」と聞く界人ですが、杏子は笑顔のまま。

2人は杏子の家までやってくると、杏子の父・徹が2人に食事を作ってくれます。

そこで杏子は、自分の母・イサが病気のため余命わずかだと界人に話し、父もそのことを既に受け入れているような落ち着き振りでした。

杏子は母の入院する病院へ行き、母と面会しますが、母は寝たきりのような状態。

病院を出ると、界人が杏子の戻りを待っており、ふたりは自転車で奄美を駆け抜けます。

誰もいない海辺に着くと、杏子は母のことについてぽつぽつと語り、界人はそれを静かに聞きます。

会話が終わると、杏子は突然界人に口づけをします。

突然の出来事にまごまごする界人ですが、2人は何事も無かったかのように杏子の自宅に向かいます。

日も暮れて、杏子を無事家まで送り届けると、界人は杏子に告白され、界人も杏子が好きだと返事をします。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『二つ目の窓』ネタバレ・結末の記載がございます。『二つ目の窓』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
ある日、界人はいつも仕事で家を空けてばかりの母・岬に、父に会いに行きたいと頼みます。

杏子の自宅には、入院しいた母が自宅療養に切り替え帰ってきました。久々の家族3人で過ごす時間を、母・イサはかみ締めます。

界人は父の自宅を訪れるために東京に向かいます。彼の両親は離婚しており、父・篤は東京に住んでいました。

父の自宅には刺青に使うデザイン画が沢山飾られており、篤は東京で刺青のデザイナーをしています。

居酒屋で親子水入らずの時間を過ごす2人ですが、篤はなぜ離婚をしたのか界人に聞かれ、きれいごとを言うわけではないが、これがお互いにとっても最良の選択だったと言います。

しかし界人はどこか理解できていないような、浮かない表情をします。

その後2人は一緒に銭湯へ行き、背中を流し合いますが、篤の背中には海に浮かんでいた死体と同じ龍の刺青が入っていました。

界人が再び奄美大島に戻ると、空港で岬が待っており、どこかぎこちない態度をしてしまう界人。

日は変わり、界人は杏子を乗せて自転車をこいでいますが、杏子はずっと界人にちょっかいをかけます。

やめるように何度も言われるも無視を続け、仕舞いには杏子は自転車から転落。心配した界人はどこか痛くないかと聞くと、心が痛いと杏子はつぶやきます。

2人が海辺に行くと顔なじみである老人がおり、彼は迫りくる杏子の母の死を受け入れることが出来るよう、彼なりの生死観を語ります。

界人が家に戻ると、おそらく知らない男と電話をしているであろう、岬の声が聞こえてきます。

耐えられなくなった界人は家を飛び出して翌日まで帰りらず、家に戻れば母は既に仕事に行っていて、メモ書きが残っているだけでした。

苛立つ界人の携帯がなり、電話に出ると、いよいよイサの最期が近づいていることを伝えられます。

ユタ神様として島中の人々に慕われていた彼女の元に多くの人が駆けつけ、イサの最後の願いとして、島の人々に歌や踊りをしてもらいます。

多くの人に見送られ、杏子の手を取るイサは静かに息を引き取ります。

数日後、夜中に界人と杏子は会い、彼女は界人と寝たいと言いますが、界人はできないと答えます。

逃げるように家に入ると、そこには出かけていたはずの母が帰ってきていました。

そんな母に突然、どうして他の男と寝れるのか、どうしてそんなに不順なことが出来るのか罵倒し続ける界人。

すると外にいた杏子が飛び込んできて界人を止め、岬には覚悟があって、界人がそんなにわめくのは覚悟をしたことがないからだと言い放ちます。

しかし界人は女にしか分からないことなんだなと、投げやりな返事をして出て行きます。

界人が家に戻ると岬の姿はどこにも無く、島には台風が近づいてました。

嵐の中、岬を探し続ける界人を杏子が見つけ、危険なので自宅へ連れて行き、杏子の父・徹は嵐が落ち着くまでじっとしているよう、界人を説得します。

翌日、台風が過ぎ去り、界人は自転車で母の勤め先であるレストランへ向かいます。

そこにはいつもと変わらない母がおり、安堵した界人は岬と抱き合います。

後日、界人と杏子は誰もいない浜辺で裸のまま結ばれます。

ふたりはそのままの姿で、奄美の海で自由に泳いでいくのでした。

3.映画『二つ目の窓』の感想と評価


(C)2014“FUTATSUME NO MADO”JFP, CDC, ARTE FC, LM.

あらすじを読んでいただくと分かるとおり、今作は非常に淡々(最初の水死他の正体も謎のまま)と生死観と男女観を描いており、島の人々のやりとりもまるでドキュメンタリー映画を見ているかのように自然です。

その中で時折見せる奄美の文化が良く映え、島の実景は台風の荒波でさえ、どこか圧倒される美しさを持っています。

若手2人の演技もどこか慣れていない感じが、かえってこの島の中では自然に見えるのも、奄美大島がもつパワーなのでしょうか・・・

劇伴もとても良くて、埼玉出身で現在奄美大島在中のハマケンが手がけたサントラは、上映中一部の劇場で販売されたそうですが、現在はamazonはもちろんitunes storeでも取り扱いが無いので、どなたか入手経路をご存知の方がいたら教えて欲しいくらい良い曲ぞろいです。

ラストの木がクレーンでへし折られるシーンと、直ぐ次に写る裸の界人と杏子のシーンでは、イサの「命は子供につながっている」という台詞を彷彿され見事な演出となっています。

台詞に関しては、ちょっとクサすぎるのでは?と批判的な声も聞こえてきますが、見ていても奄美の大自然に圧倒されっぱなしであまり鑑賞中は気になりませんでした・・・

奄美大島に行きたくなること必須でもある作品なので、映画ファンじゃなくても一見の価値アリです。

まとめ


(C)2014“FUTATSUME NO MADO”JFP, CDC, ARTE FC, LM.

今作『2つ目の窓』というタイトルは「自分と違うものが2つ一緒になって扉を開いてくれたら、いい世界にいけるかも知れない」という、監督独自のメッセージがこめられています。

カンヌ映画祭にノミネートはされたものの、受賞はとり逃しましたが、監督自身は賞のプレッシャーから解放されたとも言っています。

そういった意味でも『2つ目の窓』には監督のさまざまな思いや体験が刻み込まれた作品となっており、監督自身が考える生死観などにじかに触れることが出来る作品にもなっていると思います。

さて、『二つ目の窓』が観られるHuluでは現在2週間無料トライアルを実施中

無料トライアル期間に解約をすれば料金は一切かかりませんし、記事でご紹介した作品以外にも映画・海外ドラマ・国内ドラマ・アニメなど、大量の作品が見放題となっています。

作品によって追加料金がかかるVOD(定額制動画配信サービス)もありますが、Huluは全作品見放題というのも安心して使えるポイントですね!

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