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Entry 2017/01/10
Update

映画『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

  • Writer :
  • yukimura

映画『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』作品情報

【公開】
2016年(イギリス)

【原題】
Florence Foster Jenkins

【監督】
スティーヴン・フリアーズ

【キャスト】
メリル・ストリープ(フローレンス・フォスター・ジェンキンス)、ヒュー・グラント(シンクレア・ベイフィールド)、サイモン・ヘルバーグ(コズメ・マクムーン)、レベッカ・ファーガソン(キャサリン)

映画『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』あらすじとネタバレ

妻への献身

ニューヨークの社交界トップの資産家、マダム・フローレンスは、音楽を心から愛する女性。自ら設立したクラブで舞台を上演し、自分も出演することが大好きでした。

夫のシンクレアは、妻の音楽への愛情を理解し、献身的に支えています。しかし、フローレンスの就寝後は、そのまま愛人キャサリンの家に向かうのが日課でした。

ある晩、フローレンスとシンクレアはオペラ鑑賞へ。女性歌手の美声にすっかり魅了された彼女は、「私も歌のレッスンを受けるわ」とシンクレアに言います。

しぶしぶ同意したシンクレアは、フローレンスと共にレッスン用のピアニストのオーディションを行います。フローレンスの心を摑んだのは、物静かなコズメでした。

一流の指揮者を先生に迎え、レッスンが始まりますが、フローレンスが恐ろしい音痴であることが発覚。一同は青ざめますが、フローレンスは「絶好調よ」とご満悦。

レッスンで自信がついたフローレンスは、リサイタル開催を決意。慌てたシンクレアは、クラブの常連客だけにチケットを配り、新聞記者を買収して記事を書かせます。

ついに幕が上がり、フローレンスの壮絶な歌声が響き渡ります。客席には微妙な空気が漂いますが、大金持ちのスターク氏の若い妻だけは、大声で笑い出してしまいます。

スターク氏が慌てて妻を外へ出し、なんとか舞台は終了。疲れ切って家に戻ったフローレンスを医者が訪ねます。フローレンスは最初の結婚から50年間も、梅毒を患っているのでした。

フローレンスを寝かしつけたシンクレアがキャサリンの家に行くと、盛大な打ち上げパーティの最中でした。強引に招待されたコズメも、お酒を飲まされて泥酔します。

翌朝、そこへフローレンスが訪問します。シンクレアは急いでキャサリンを隠して平静を装います。傷つき泣き出すキャサリンに、シンクレアは週末旅行を約束します。

フローレンスは、自分のレコードを作ってクラブ会員に配ろうと思い立ちます。コズメも伴奏を任され、録音技術者もおののく歌声がスタジオ内にこだましました。

シンクレアがキャサリンと週末旅行中、フローレンスがコズメのアパートにやって来ました。「夫がいないと寂しい」と言うフローレンスを見て、コズメは初めて彼女の哀しさを察します。

旅行を終え、シンクレアとキャサリンが訪れた店で、フローレンスのレコードがかかります。若者達が大笑いしているのを見たシンクレアは彼らに殴りかかり、その姿を見たキャサリンは店をとび出し、二人の関係は終わりました。

真実の声

フローレンスは、退役軍人を招いたリサイタルをカーネギーホールで開くと決めます。コズメは、これ以上恥をかいたら自分のキャリアは終わると伴奏を断りますが、「妻を守りたい」と言うシンクレアに説得され、舞台に上がることを承知します。

当日、大騒ぎする軍人集団と富裕層の観客達でホールは埋まりました。歌い出したフローレンスに、若い軍人から笑いとブーイングが。観客に初めて野次をとばされたフローレンスは困惑の表情を浮かべ、シンクレアにもどうしていいかわかりません。

その時、スターク夫人が立ち上がり、「一生懸命歌ってるのよ!聴きなさい!」と叫びました。フローレンスはなんとか歌い続けます。そこに徐々に拍手が聞こえ、そしてブラボーの声が重なっていきます。

しかしただ一人、NYポストの記者だけは「これは音楽への冒涜だ」と出ていきます。シンクレアは記者に「幾らほしい」と尋ねますが、「記事に書く」ときっぱり拒否されます。

翌朝、シンクレアとコズメは、近くの売店のNYポストを買占めゴミ箱に捨てます。NYポストを買いに出たフローレンスは、ゴミ箱に捨てられたNYポストを拾いあげ、自分が酷評されている事実を知りショックを受けてその場に倒れてしまいます。

病が悪化し、ベッドの中のフローレンス。「みんなが私のことを笑っていたのね」と言う彼女に、シンクレアは「君の声は真実の声だ」と言います。命が消えようとする瞬間、フローレンスには、美しい声で歌う自分の姿が見えていました。

『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』の感想と評価

妻を心から愛していると言うシンクレアですが、お金の力で周囲を黙らせようと奔走することが果たして真実の愛なのか。

夫に愛人がいることを許し、寂しさを心に隠しながらも、最期まで夫に愛と感謝を捧げ続けたフローレンスの愛情の方が、はるかに深いのではないかと感じました。

今でもカーネギーホールのアーカイブリクエストでNo.1だというマダム・フローレンス。人々を魅了するものは、彼女の特異な歌声か、音楽に資産で貢献した功績か、はたまたそのお人柄なのか。

紙幣をばらまくシンクレアのおかげで、フローレンスの本当の魅力がぼやけてしまった気もします。

とはいえ、役者さん達は完璧でした。大御所メリル・ストリープが全部もっていきそうなところも、ヒュー・グラントが軽妙な演技でさらりと対抗していて、二人が並んでいるだけで場面に華とユーモアがあふれます。

忘れられないのは、フローレンスの大好物だというポテトサラダを切らさぬよう、バスタブ一杯に作ってあるというシーン。バスタブにポテトサラダ。衝撃でした。ちょっとやってみたい気もします。

まとめ

1944年、カーネギーホールで歌った、資産家ミセス・フローレンスの実話です。

最後に、フローレンス御本人の歌声が流れますが、これがメリル・ストリープそっくり。いやメリル・ストリープがフローレンスにそっくりなのですが。

ストリープが歌唱力抜群なのは有名ですから、音をはずすのは大変だったかもしれません。劇中、フローレンスの幻想の中でも歌声が聴けますが、こちらは実力で歌っているようで、とても美しいです。

TVドラマ『ビッグバン・セオリー』のハワードでおなじみのサイモン・ヘルバーグが、シンクレアと共にフローレンスに尽くすピアニスト・コズメを演じています。

ピアノの腕は『ビッグバン~』でも披露していますが、こちらの演奏もお見事。ハワードも強烈なキャラですが、今回も二大スターにはさまれながら、存在感がかすまないのがすごいです。

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