少年を描いた映画には名作が多いと言われています。
例えば、フランソワ・トリフォー監督の名作『大人は判ってくれない』や、
日本映画では、是枝裕和監督作品の『誰も知らない』では、主演を務めた柳楽優弥の眼差しは見事な演技でした。
今回ご紹介する、『ぼくらの家路』もドイツ少年の成長を描いた秀作です。
映画『ぼくらの家路』の作品情報
【公開】
2015年(ドイツ)
【脚本・監督】
エドワード・ベルガー
【キャスト】
イボ・ピッツカー、ゲオルグ・アームズ、ルイーズ・ヘイヤー、ネル・ミュラー=ストフェン、ビンセント・レデツキ、ヤコブ・マッチェンツ
【作品概要】
施設を飛び出した10歳の少年と、その弟6歳の兄弟が、母親を捜す姿を描き、2014年の第64回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品された作品。
主役ジャックは、撮影当時わずか11歳で、俳優デビューとなるイボ・ピッツカーが務めています。
映画『ぼくらの家路』のあらすじとネタバレ
10歳のジャックは、6歳の弟マヌエルの面倒をみるのが毎日の日課。
シングルマザーの母親は優しいが、その若さから、恋人との時間や夜遊びを何より優先してしまいます。
ある日、弟マヌエルが、バスルームで誤って熱湯を浴びてしまい火傷をおってしまいます。
これきっかけに、ジャックは施設に預けられることになります。
寂しさゆえに心を開けないジャックは、友達もできず、施設に馴染めません。
ジャックは、待ちに待った、家に帰宅を許される夏休みがようやく訪れます。
しかし、母親から施設に電話があり、「迎えは3日後になる」と、ジャックは告げられます。
ショックを受けたジャックは、施設のいじめっ子とのいざこざもあって、施設を飛び出してしまいます…。
映画『ぼくらの家路』の感想と評価
原題『JACK』と示さすように、1人の少年に焦点をあて、その成長を見つめた作品です。
ジャックが毎日おこなう手慣れた食事の準備や、弟への献身的な世話が、けな気だが痛々しくもあります。
原題『JACK』は、始めと終わりに2度映し出されます。
それを見た時、観客は心境の変化に気が付かれることでしょう。
それこそが、少年の成長を目撃した心の動きに他なりません。
また、ジャックが施設で初めて心を交わした少年から借りた双眼鏡のエピソードは秀逸。
友人が双眼鏡を大切にする姿の隠喩は、憧れの父親の視線との同一化。父親と同じものを見ている感覚を示しています。
しかし、ジャックは、友人の双眼鏡を不注意から無くしてしまいます。
気にかけていたジャックは、代わりの双眼鏡を盗んで返そうとする。
つまりは、今度はジャック自身が、苦難の末に大人へ成長した視野を持った意味を示しています。
双眼鏡を返すシーンは描かれてはいませんが、友人は許してくれると信じたいですね。
まとめ
10歳のジャックは、6歳の弟のマヌエルとシングルマザーの母親と3人で暮らし。
しかし、若い母は、息子たちよりも恋人との時間や夜遊びを優先してしまう。
そんな母親を当てにせず、 成長への一歩を決意をしたショットが、終盤に再会した母親に安堵しつつ、ジャックが就寝前に歯磨する姿。
ベルガー監督は、ジャックの繰り返される日常的な動作で“気付き決意”を表現した手腕は流石と言えるでしょう。
歯磨きをする姿は、虫歯予防であり、育児放棄予防なのだと思います。
母親の愛情を求めていたジャック、弟の面倒をみるジャック、友人思いのジャック、これらを通してジャックの導いた成長の決断を静かに見つめてほしい作品。
きっと、女性の心を揺さぶる映画、ぜひ、観てほしい1本です!