Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2017/08/28
Update

映画『ボブという名の猫』ネタバレあらすじ感想とラスト結末の解説。実話ノンフィクションを“実際の猫ボブ”が演じる!

  • Writer :
  • 山田苺

今、日本は空前の猫ブーム。猫がテーマの映画は邦・洋問わず見られます。

そんな中、今回は実話でベストセラーにもなった、ホームレス同然のミュージシャンと野良猫の運命的出会いを描いた『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』をご紹介します。

1.映画『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』の作品情報


(C)2016 STREET CAT FILM DISTRIBUTION LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.

【公開】
2017年 (イギリス映画)

【原題】
A Street Cat Named Bob

【監督】
ロジャー・スポティスウッド

【キャスト】
ルーク・トレッダウェイ、ルタ・ゲドミンタス、ジョアンヌ・フロガット、アンソニー・ヘッド、キャロライン・グッドオール、ダレン・エバンス

【作品概要】
世界的ベストセラーになったホームレスのミュージシャンと、野良猫の出会いを描いた『ボブという名のストリート・キャット』の映画化。

キャサリン妃ともハイタッチした、ボブがほとんどのシーンで出演しているのもポイント。

ただ猫がかわいい映画ではなく、イギリスの貧困やドラッグ問題も浮き彫りにしてる意欲作でもあります。

2.映画『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』のあらすじとネタバレ


(C)2016 STREET CAT FILM DISTRIBUTION LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.

ロンドンの路上で一人弾き語りをする青年・ジェームズ。

道行く人は誰も彼の歌に立ち止まるどころか、耳を傾ける人もいません。

チップの変わりに、残したサンドイッチを置いていく人まで・・・

しかし、ジェームズは礼を行ってそれを受け取ります。

彼は音楽で収入を得ることを夢見ていますが、その収入はほぼゼロ。

住み家も買える食べ物も無く、ゴミ箱から残飯を漁り、路上でダンボールを毛布代わりに眠ります。

ある雨の日に、ジェームズはホームレス仲間のバズとばったり会います。

彼はドラッグをしようとジェームズを誘い、彼はドラッグに手を出してしまいます。

ジェームズは若い頃から、両親の不仲などから精神手金不安定にあり、薬物に手を出していました。

気がつくとジェームズは病院のベッドにいました。

カウンセラーのヴァルは、薬物依存更生中だったジェームズを責めますが見捨てることが出来ません。

ヴァルはジェームズに、古いけどちゃんと風呂もあるアパートをとります。

ジェームズは感謝の気持ちと、更正をヴァルに誓います。

部屋に住むと、夜中に茶トラの猫がジェームズの部屋に迷い込みます。

ジョージは迷い込んできた猫を自分と同じ境遇を感じ、飼い主探しをしますが見つからず。あきらめて外へ離します。

再び路上ライブをしていると、子供の頃母と離婚し、別居した父・ジャックとばったり会います。

しかしジャックは再婚しており、その妻はホームレス同然のジェームズを毛嫌いしています。

そんな妻に嫌われたくないばかりに、ジェームズに金だけ渡して、ジャックはいそいそと去っていきます。

ジェームズが帰宅すると、昨夜の猫がいました。しかし怪我をしています…

隣人で犬を連れていた女性、ベティに助けを求めると、彼女は直ぐ病院に連れて行くようジェームズに言います。

さらに彼女は猫をボブと名づけ「そう呼ばれたがっている」と言います。ジェームズは父に貰ったお金をはたいてボブを治療してもらいます。

翌日、ジェームズは町へライブをするためでかけるのですが、ボブがバスの中までついてきてしまいました!

最初は追い払っていたジェームズも、ボブを肩に乗せてライブをするほどに。

するとボブ見たさもあってか、立ち止まってジェームズの演奏を聴いてくれる人が沢山います。

今までにない稼ぎに、ジェームズはボブのおかげだと言い、ハイタッチ。

調子の出てきたジェームズは、ベティと親しくなろうとアプローチをかけます。

2人は親しくなりますが、ベティは薬物依存者をひどく嫌っていました。

更生中とはいえ、過去に常用者だったジェームズは、そのことを隠します。

ジェームズの活躍を知ったバズはお金をせびります。

放っておけないジェームズは、「薬には絶対使うな」といい、バズにお金を渡します。

しかしその夜、バズは薬を使って亡くなります。

その場に居合わせたベティは、兄が過去にオーバードーズで死んでしまったことをジェームズに話します。

それゆえ彼女は、薬物依存者を嫌っていました。

クリスマス。ジェームズは父の家に、ボブを連れて訪れます。

父は相変わらず、息子を避けようとしますがジェームズは半ば強引に中へ入ります。

再婚した妻は、娘にまでジェームズはろくでもない人だと吹き込んでいました。

そんな時、ボブが部屋へ飛び出してしまいます。

娘たちは大騒ぎし、ボブのせいでクリスマスツリーや花瓶はめちゃめちゃに倒れます…

ジェームズはボブを連れて家を飛び出します。

家族との団欒は果たせませんでした…

さらに路上ライブ中に男が絡んできて揉め合いになり、ジェームズは拘留され、ライブ禁止まで言い渡されえしまいます。

拘留の間途絶えていたドラッグ更正に使用する代薬を求め、慌てて薬局に駆け込むと、そこにはベティがいました。

依存症だったと知った彼女はジェームズを避けるようになってしまいました。

以下、『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』ネタバレ・結末の記載がございます。『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
ライブ収入が無くなったジョージが取った方法は、ビッグ・イシュー(ホームレスの社会復帰に貢献することを目指すとする新聞社のようなもの)で新聞の路上販売員として雇ってもらうものでした。

しかし、今度は別の販売員に、客を取られるとクレームを言われ一ヶ月の営業禁止を受けます。

なんとか一ヶ月我慢しましたが、今度はボブを引き取りたいという女性ともめてしまい、その弾みでボブが逃げてしまいます。

ジェームズはずっと部屋でボブの帰りを待ちますが、精神が不安定になりドラッグに手を出してしまいそうになります。
しかしジェームズは何とかこらえます。

そして数日後、ボブは再びジェームズの部屋に戻ってきます。

ジェームズはこの機会に、「断薬」を決意します。代用の薬も使用しないでの断薬は想像を絶する苦しさですが、ボブとなら乗り切れるとジェームズは言い、ベティにそのことを伝えます。

断薬中、ずっと部屋に閉じこもり、激しい幻覚や悪寒に襲われるジェームズ。

でもボブに見守られながらの断薬生活の結果、ついに薬を断つ事に成功しました。

ジェームズはヴァルに感謝をつげ、次に父の元を訪れます。

彼はずっと父に恥を欠かせていたと思っていましたが、父は今もずっと息子の心配をしていました。

断薬を知った父は、胸を張って息子が来ていると妻に伝えます。

ベティは兄の死を乗り越えるために引っ越すことになりました。ベティはこれでお別れではないと言い、ジェームズに連絡先を渡します。

そしてジェームズ宛に出版社から手紙が来ていると伝えます。

出版社はぜひボブとの出会いのことなどを本にして欲しいと頼んできました。

ジェームズは予想もしていなかった運命に驚きながらも、何とか本を完成させます。

完成した際の会見ではヴァルや、ベティ、父ジャックも見に来てくれました。

サイン会ではある男性に「僕の人生そのものだ」と言われます。

本はベストセラーとなり、ジェームズとボブは無事家を買うことが出来ました。

彼らは現在、ホームレスを支援する活動を行っているとか。

3.映画『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』の感想と評価


(C)2016 STREET CAT FILM DISTRIBUTION LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.

本作に登場するボブはタレント猫ではなく、実際のボブが出演しています!

もはやあざとい境地に達しかねない、ボブの愛嬌溢れる姿…

ねずみを追ったり、ジェームズの肩に乗ったり、弾いてるギターの上に乗ったり…特にギターに乗っているとき、尻尾がストロークする腕にぺしぺし当たっているのに、まったく意に介さない姿はたまりません…!

一見猫好きだけの映画と思われがちですが、今作では貧困やドラッグもテーマになっています。

最近ではパルム・ドールを受賞した『わたしは、ダニエル・ブレイク』も同様のテーマを取り上げています。

ユーモアと貧困を描いたのが『ダニエル・ブレイク』なら、キュートさと貧困を描いたのが『ボブという名の猫』といった感じでしょう。

まとめ


(C)2016 STREET CAT FILM DISTRIBUTION LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.

コレが実話だと思うと猫好きにはたまらないストーリーですが、きちんと明暗を分けた展開もあり、映画としての完成度も非常に高いです。

ちなみに最後にジェームズにサインを求めた男性は、ジェームズ・ボーエン本人

それを知ると、監督の演出に思わずほっこりしてしまいます。

猫好きはもちろん、実話モノやヒューマン映画が好きな人は必見です!

関連記事

ヒューマンドラマ映画

『長江哀歌』ネタバレあらすじ感想と結末ラストの評価解説。ロケット・ビルなど“シュルレアリスム的表現”を混在させた理由は?

時代のうねりに翻弄されながらも、 精一杯に生きた「三峡」の善人たち……。 今回ご紹介する映画『長江哀歌』は、2006年のベネチア国際映画祭にコンペティション作品として招待されながらも、タイトルすらも一 …

ヒューマンドラマ映画

映画『くれなずめ』ネタバレ結末のあらすじと感想。死んでいる友への哀悼歌とアンサーソングが響き渡る

日が暮れそうで暮れない「暮れなずむ」時間。もうそろそろ「くれなずめ!」。 劇団「ゴジゲン」主宰でもあり、『アフロ田中』『バイプレイヤーズ』『アズミ・ハルコは行方不明』の松居大悟監督が、自身の体験を基に …

ヒューマンドラマ映画

映画『コンカッション』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

近年増えてきている実話を基にした映画。 ある一人の人物にフォーカスすることによって、観客もその人物の心境に近付けると思います。 ウィル・スミス主演の『コンカッション』も、実在したナイジェリア医師の苦悩 …

ヒューマンドラマ映画

映画『デトロイト』あらすじとキャスト。キャスリン・ビグロー紹介も

映画『デトロイト』は、2018年1月26日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開! 本作の演出を務めたのは、第82回アカデミー監督賞を受賞した『ハート・ロッカー』や、ボストン、シカゴ、ニュー …

ヒューマンドラマ映画

映画『ヴィクトリア女王 最期の秘密』あらすじネタバレと感想。大女優ジュディ・デンチの演技力に注目

『あなたを抱きしめる日まで』(2013)の大女優ジュディ・デンチと、スティーブン・フリアーズ監督が率いるイギリス最高峰のスタッフが再びタッグ! 晩年を輝かせた英国女王ヴィクトリアとインド人使者の強い絆 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学